焦燥感
久々の更新となってしまいました。これからも引き続きよろしくお願いします。
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翌日も同じように三人に対して質問が行われた。
しかし、帰ってきた答えはの中に特に新しいものは無く、何かに繋がるような情報を引き出すことは出来なかった。
そうして一週間が過ぎ、いよいよカールスを含む捜査官たちにも悩みの色が見え始めて来ていた。
現場に落ちていた証拠から犯人たちはこの国の者である可能性は高い事までは分かったが、何しろ生存者であり犯人を目撃しているであろう三人から有力な証言を得られないと言うのが焦りを助長させる一助となっていた。
本当に何も知らないのではないかと言う意見も有ったが、カールスたちはいわば勘で彼らが何かを知って居るとなかば確信していた。
と言うより、あの目を見て何も知らないはずがないという発想に至るのは彼らの供述に関わった者たちにとってごく自然の事だった。
また、同じように館の襲撃犯の捜査も進展が見られていないようで県本部全体が焦燥感で包まれていた。
そして、八日目も同じ質問を目の前の少年に投げかけたカールス。
「君は本当に何も見ていなかったんだね?」
「うん」
「じゃあ、何か新しい事は思い出したりしたかい?」
前日も投げかけた質問。
但し、この日は帰って来る言葉が違っていた。
「ねえ、おじさん」
「おじさんじゃない、お兄さんだ」
「……」
少し、冷めた目でカールスを見つめるウォーカー。
これだけは訂正しなければならない。と、カールスはいつもと同じように思った。
第一、まだ29歳だ。まだまだ若者だ!
心の中でそう呟くも、10歳の子供から見れば十分おじさんなのであった。
「ねえ、お兄さん」
ウォーカーの先程とは違った雰囲気にカールスは居住まいをただした。
「なんだい? 何か思い出したかい?」
「どうしてお兄さんたちは他の人たちと違って、僕たちに優しくしてくれるの?」
10歳のあどけない瞳はただただ純粋な疑問に思っているように見える。
だがその奥で何かを見極めようとしているのがカールスには分かっていた。
10歳の子供にいかにして本心を傷つかないように伝えようかと、慎重に言葉を選びながら話すカールス。
頑なに心を開かない少年たちの心を少しでも癒して、事件解決の手掛かりとなる有用な証言を得る事。
というのが正しい理由ではあるが、何もそれをそのまま率直に伝える必要はないと、カールスは考えていた。
「そうだな……」
口を開いたカールスは自分の信条の事を話すことにした。
「俺の実家はな、ここから遠く離れたドコート省に有るんだ――」
――ドコート省はその大部分が穀倉地帯で農業が盛んな地域でな。そしてそこの住民のほとんどが農業に従事している。勿論、実家も大規模農業を行っていたんだ。
そして、そこにはよく人間種も作物を買いにやってきていた。うちの実家はそこまで規模が大きいというわけでは無かったけども小さな店を構え、獣人種、人間種関係なく販売を行っていたんだ。
田舎の方だったのでそこまで差別と言うものが激しくなかったというのも有るがけども、何よりうちの両親の教えは種族に貴賤など無い。と言うものでその教えを俺もそのまま受け取ったんだ。
小さい頃店番をしていた時に人間種や獣人種の子供と店先で遊んでよく怒られていたよ。
と、笑いながら話すカールスの言葉は本心から出た言葉だろうとウォーカーは判断していた。
「そんなわけで、俺はな、別段優しくしているわけじゃないんだ。いつもと同じように接しているだけさ。多分、他の奴らも同じだと思うぞ?」
「そうなんだ」
「まあ、そんな考え方をしているから出世できないんだけどもな」
そう言って苦笑するカールスは、だからといって考え方を変えるという物では無く、生まれ持った性分だから仕方ないと言ってような様子であった。
「ふーん、じゃあ、ぼく達の今いる所にお姉さんとかが遊びに来てくれているのも?」
「ああ、そうだ」
力強く肯定するカールス。
同じ課に所属する同僚の中には女性も幾人かいる。
今回の生き残りの中に年端もいかない女の子がいたという事実は彼女らの心に何か深く感じるものを残していたのだろう、その子の精神的なフォローと言うべきか、毎日誰かが変わり万古で部屋に顔を出していたのである。
もちろん女の子に対してだけではなく、キリクやウォーカーに対しても同じようなフォローを行っていた。
「そうだったんだ……」
小さな手を顎に当て何やら考え込むウォーカー。
カールスからはウォーカーが何かを考えているのかその表情から推し量ることは出来なかったが、自分の本心は伝えることが出来たし、後はきっと何かを話してくれるに違いないと手ごたえを感じていた。
「じゃあさ、そんなカールスお兄さんに一つお願いしたいことが有るんだけどいい?」
もし、お願いを聞いてくれたら僕の知って居る事は話すよ。
そうウォーカーはその小さな口を開いた。
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