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魔法人形

 

 ひとしきり笑い終えた一同。

 ヴェルカンは目に浮かべた涙をふきながら、とても満足そうに憲兵に命じた。


「いや、楽しいものを見せてもらった。目立たない所で処分しておきなさい」

「はっ」


 今も枯れた声で叫び続け、椅子の上で突っ立っているウォーカーを引きずり降ろす憲兵。

 ウォーカーはそのままの態勢で椅子ごと床へ叩き付けられた。


 そして突然ボーン、ボーンと鳴りだす壁の柱時計。

 時は深夜12時を告げていた。


「おや、もうこんな時間か」


 いや、楽しい流星祭になったものだと一人ごちるヴェルカン。

 周りの家族も満足そうで頑張って準備した甲斐が有ったと喜んでいた。



 一方、12時を告げる鐘の音はウォーカーの耳にも届いていた。

 ――10年ぶりの開放と共に。


「ッ! 急速な魔力反応! 危険です!」


 憲兵の焦った声の警告。

 突然放出された魔力に席を立った一同が振り返る。


 其処には虚ろな目をして立ち上がっているウォーカーの姿が有った。


「こいつ! 人間の子ではなかったのかっ!?」


 その危険性を十分に認識しているヴェルカンはすぐさま憲兵へと指示を出した。


「今すぐ殺せっ!」


「了解っ!」


 躊躇なく、抜剣した憲兵はウォーカーの胸を後ろから突き刺した。

 10歳の体を貫通した長剣は勢いあまってテーブルへと突き刺さる。


 そして、強引に引き抜かれる剣。

 ウォーカーの身体から勢いよくあふれ出す紅い液体。


 ガクッと糸が切れたように、テーブルへ激しい音を立てて崩れるウォーカー。

 その血まみれでテーブルの上に倒れ伏してもなお、両眼はヴェルカン達を凝視していた。


「なんなんだ、こいつは……」


 毒気を抜かれたかのように呆然とするヴェルカン達。


「人間種のはずですが……」


 口から血を流してこと切れたウォーカーを汗をぬぐい観察する憲兵。

 すると崩れた衝撃で眼帯がずれたウォーカーの瞳の色が異なって居る事に気が付いた。


「こ、こいつもしかして混血児では!」

「なに?!」


 カッと見開いているウォーカーの目を見つめる二人。


「……なるほど、そう云う事だったのか」

「危なかったですな」


 するとウォーカーの瞳が再びギョロリと動いた。

 ホッとする二人の前で。


「ナッ?!」

「こいつ! まだ生きているのか!」


 再び抜剣するのは時間が惜しいと、手元にあったナイフを渾身の力を込めて憲兵はウォーカーのこめかみに突き刺す。


 しかし、ウォーカーは何ら変化を見せず、ゆっくりと立ち上がる。

 見れば、確実に開けたはずの胸の大穴も塞がっていた。


「……なんだとっ」


 右手で見せつけるかのように時間をかけて柄まで突き刺さっているナイフをこめかみから抜き取る。

 余りの異常な状況に誰もが後ずさりしてウォーカーを見つめていた。


 そして、先程までとは打って変わった。

 まるで人が変わったかのような声でウォーカーは話し始めた。


「そんな程度じゃ、自分は殺せませんよ?」


 目をスッと細めにして嗤う表情。

 明らかに先程とは別物だとヴェルカンは冷や汗と共に感じていた。


「貴様、魔法人形か!」

「いかにも、魔法人形のフロマージュ・ウォーカーと申します。 以後、お見知りおきを」


 ヴェルカンの問いに悠々と答え、さらにお辞儀までするウォーカー。

 異様な恐怖をヴェルカン以下一同は本能的に感じていた。


「って言っても今から死んでもらうわけですけどね?」


 ウォーカーはいっそ、にこやかに言い放った。





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