祭りの前
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「行ってきまーす」
「ほら、待ちなさーい! お金忘れているわよー!」
町にお使いに行くというのにこの子は。
と、財布を玄関先から戻ってきたウォーカーに渡すカレン。
「メモは忘れてないでしょうね?」
「うん。眼帯もちゃんと着けてるから~」
行ってきますと手を振り出て行くウォーカー。
お祭りまでにはちゃんと帰って来いよーと表の方からキリクの声が聞こえてくる。
「本当に大丈夫かしら、あの子」
あっはっはと笑うのは部屋の中で飾り付けをしているクナメだ。
「大丈夫よ。きっと」
そう言いつつ、くふふと笑いがこらえきれていない様子。
今度は一体どんなドジを踏むのかと待ちきれない顔だ。
「そうだといいのだけれど」
ふぅと再びキッチンで料理を作るカレン。
隣では家政婦ロボットがコトコトと煮込んでいる鍋の火加減をじっと見つめている。
そう、今日は10年に一度の流星祭。
天気は快晴、きっと綺麗な流れ星を観られるに違いない。
村は、というより国全体がお祭りの様な雰囲気になっていることだろう。
今日ばかりは日頃の辛いことを忘れて皆楽しく過ごす日だ。
村もいつもよりも騒がしく、祭りの準備をする喧騒が家の中まで届いている。
そして、我が家にとってはウォーカーが来て10年目。
つまりウォーカーの10歳の誕生日でもある。
引っ込み思案で、人見知りが強かったウォーカーも今では挨拶もしっかりできるようになったし、村の他の子と一緒に遊ぶようになった。
カレンとしてはホッとするところだが。
ただ、少々、おっちょこちょいな所が心配事だ。
キリクは今では立派に馬の世話をやっている。
記憶にある父の後を継ぐのかしら、最近は村の馬主の所で勉強をしている。
クナメも親バカを抜きにしても可愛く育っている。
器量良し、愛想良し、と村ではずいぶんと可愛がられている。ただ、家の中では色々とすっごく雑だ。
ふと、顔を上げたカレンは棚に飾ってあるチミツの笑顔を見つめた。
貴方、今年でキリクは15歳、クナメは13歳、ウォーカーは10歳になりました。
みんな元気に育ってくれているわ。これからも見守ってくださいね。
そう、心の中で語り掛けると写真の中のチミツの笑顔がいつもより明るくこちらを見つめているように感じた。
「さ、ウォーカーが返ってくる前に準備を終わらせるわよ~」
はーい、とキリクとクナメの声。
今日、ウォーカーに彼の生い立ちを話すことは前もって二人には話している。
特に驚くことも何か心配することも無く素直に受け入れていた二人を見て、成長したなぁと内心ほろりと来たのは内緒だ。
夕方まではまだ時間がある。それまでに祭りと心の準備を済ませておかないと。
そう呟くと次の一品にカレンは取り掛かる。
今日はウォーカーの大好きなハンバーグだ。
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