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第一章 緊急回避!

その男は階段を登っていた。彼は空耳だったかも知れない物音を完全にサボりと決めつけ、(実際は本当にサボり。)歩を進める。

こんな時期に、私がいながらにこんな真似をするのはおそらく新入生だろうという確信と共に。

彼は二度とこんな真似はできないようにする覚悟と共に歩を進める。

慌てる必要はない。

声の方向から察すれば屋上前踊り場、

逃げ道などない!

彼は脅しと恐怖を与えるために口を開く。



「誰か!いるのか!」


声がした。

僕は辺りが真っ白になった。

今まで問題事は起こさないように生きてきた。

今回も昼休みで戻れば全く問題にならない、と思ってきた。

しかし甘かった。

僕は自分の好きな物のために熱中しすぎて時間を忘れ、今こんな状況だ。

しかも誰かが今こちらに迫っている。

お、終わりだ。地に着く足の感覚さえない。

真っ白な視界の断片で小畑がキョロキョロなにかしてるのが見える。

それから数秒とたたないうちに

ガクンと急に袖から横に力が加わる。

見れば小畑が僕の袖を握って走り出していた。

「うわっ何!」

「うるさい!来いっ!」

彼女も必死っぽい。

屋上前の物置兼踊り場と言った形だから走れる場所など無きにしも非ずといった感じだけど、彼女は明確にある物体の方へ近付いていった。

古びた金属の擦れる音と共にその掃除用具入れロッカーが開く。

僕は彼女の顔を見る。彼女も僕の顔を見ていた。

唾を飲み込む音がいつもより大きく聞こえるのは気のせいだろうか。

一応聞く。

「真面目?」

「まじで、ヨロシク。」

言うがはやいか彼女はロッカーの中に入り込んだ。

さすがに躊躇う。

「早くしろ!」

彼女の目は真剣で今をやり過ごすことしか考えていない様だ。

その様子をみて、自分だけが意識するのは馬鹿らしく感じ、僕は一歩だけ踏み出す。

「………」

やっぱり…ムリ…

僕がまた立ち止まると彼女は僕の服を掴んだ。

「ばれるだろうが!この…バカ!」

そう言うと思いっきり僕を引きずり込んだ。

ここ最近何度目か分からないうわっという悲鳴をあげて、僕はロッカーのなかに飛び込まされた。

あ〜てめえはもう、と言いながら彼女が僕の横の隙間から、手だけ伸ばしドアを閉めた。


無言。


………よく考えるまでもないが、僕は彼女に引っ張られ、彼女は僕を引っ張ったから、当然の結果として僕は小畑に抱き付く形になってしまっている。

しかも人を隠す為に設計されていないそれは、二人も入ったら嫌でも体が密着しないといけない。

幸いにも彼女は小柄な為、彼女を直視しなくてもすむのが唯一無二の救いだ。それでも僕は僕の顎が彼女の頭部につき、飛び込んだ態勢を立て直すためで彼女の肩の後ろに手を回している。

体も全身ぴたりと密着している。

まだ3%ほどだけ冷静さを保ってる頭が感じた。

こんな所を教師に見つかったら?


……………死ぬ。停学になるかもしれない。


そんなことを考えても、実質97%は緊張やら不純な感情で満たされていて、僕はかつてないほどに理性が崩壊していた。

息を潜めていても心臓はバカみたいに跳ね上がってるし、いい匂いがする。

ああ、何で女子はこんな匂いなんかするんだよ。


僕達は何も言葉を交わすことなく、ただ狭すぎるロッカーの中身を潜めている。

僕は真っ赤になって緊張しながら…一体、彼女はどんな気持ちでいるのだろうか?と考えた。





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