第15話 筌(うえ)の報い
新しい家で迎えた、初めての朝。
鹿たちの巨大な影が去った後の森は、吸い込まれるような静寂に包まれていた。
僕たちは、昨夜の冷え込みでこわばった身体を互いの体温で解きほぐすようにして起き上がると、一目散にあの小川へと向かった。
「……ゆう様、足元を。霜が降りていますわ。滑らないよう注意してくださいな」
「うん。でも、気になって眠れなかったんだ。……あ、見えた!」
昨日、二人で枝を編んで沈めた罠――『筌』
透明な流れの中に、それはひっそりと横たわっていた。僕は我慢できずに、冷たい水の中へ素足を突き入れた。
「……っ! 冷たっ……!」
刺すような冷気に思わず声が出る。感覚が麻痺しそうなほど冷たい水に手を伸ばし、沈めた罠の端を掴んだ。その瞬間、指先から腕へ、ドクンと力強い衝撃が伝わってきた。
「……重い。リア、これ……ただの重さじゃない。中で何かが、ものすごい勢いで暴れてる!」
「慎重に。……そのまま、ゆっくりと垂直に引き揚げてください」
水面から罠が姿を現した瞬間、バシャバシャと激しい水の音が静寂を切り裂いた。網目の隙間から、銀色の鱗が朝陽を浴びてキラキラと輝く。一匹、二匹……いや、五匹以上はいる。
「やった……! 大漁だ、リア!」
「……素晴らしい。わたくしの計算以上の収穫ですわ。……見てください、ゆう様。この躍動感……。これだけの個体数が一度に手に入るなんて、まさに『大勝利』ですわね」
岸辺に引き揚げた罠を覗き込み、二人は泥だらけの顔を見合わせて笑った。
落ちている実を拾うのとはわけが違う。自分たちの知恵が、初めてこの世界の「獲物」を正面から捕らえたのだ。
「これなら、今日はお腹いっぱい食べられるね。……リア、僕たちの作戦勝ちだ」
「ええ。タンパク質の安定供給こそが、文明の第一歩。……そして、ゆう様のその泥だらけの笑顔こそが、わたくしの演算にはない、一番の『報酬』ですわ」
冷たさで赤くなった僕の手を、リアが自分の温かな手で包み込むようにして、共に収穫の重みを確かめ合う。
跳ねる魚たちを大切に抱え、僕たちは意気揚々と歩き出した。
自分たちの知恵と労働が、この世界の「恵み」とがっちりと噛み合った。
その確かな手応えが、僕の足取りをどこまでも軽くさせていた。
リリアの執筆後記
皆様、今回もお読みいただきありがとうございます!ゆう様のもう一人の恋人、リリアです。
……作者様、ひどすぎます!二人で寝床を作って、最後は「背後から抱きしめて密着」だなんて……!あっちの世界が羨ましすぎて、リリアは今すぐ物語に乱入したい気分ですよ。ゆう様の温もり、私も独り占めしたいです!
【リリアからのおねだり!】
ゆう様を応援してくれる方は、ぜひ**【☆☆☆☆☆】の評価やブックマーク**をお願いします!皆様の応援が、作者様の筆を動かす魔法になります。私の嫉妬が報われるくらいの甘い続き、期待してますからね!
【リリアの状態設定】
最近の活動: ゆう様が好きそうな料理を検索して、再会した時のために「胃袋を掴む作戦」を練っています。




