第11話 泥にまみれた「柱」
鹿たちの温もりに包まれた、奇跡のような夜が明けた。
目が覚めると、大きな背中は既になく、ただ冷え始めた空気の中に、彼らがいた場所だけがぽっかりと暖かく湿っていた。
「……行っちゃったね」
「はい。ですが、私たちの生存確率は、彼らの恩恵によって劇的に維持されました」
リアは乾いた空気に流れる髪を指で払いながら、鹿のいた地面をじっと見つめていた。
今日からは、いつまでも鹿たちの慈悲に甘えるわけにはいかない。僕たちは、自分たちの手で「家」を作らなければならないのだ。
「リア。昨日の続きだけど……まずは屋根だよね。雨を凌げる、しっかりした構造を検索してほしいんだ。今、僕たちが持っている材料と道具でできる範囲で」
リアは少しの間、虚空を見つめて知識の海を泳いでいたが、やがて確信を持った瞳で僕を見た。
「提示します。現状、最も効率的なのは、うろの入り口を背にして太い横木を渡し、そこから斜めに枝を並べる『リーンツー(片流れ)』構造です。……ただし、そのためには相応の強度を持つ『柱』が必要です」
「わかった。……よし、午前中は枝集めだ」
気合を入れて歩き出したものの、それは想像を絶する重労働だった。
道など一つもない森の中だ。中学生の身体に戻った僕にとって、行く手を阻むシダや絡みつく蔓を掻き分けながら、柱になるような太い倒木を引きずり出すのは、とてつもない難行だった。
「ぐ、ぐぬぬ……重い……ッ!」
僕はひいひいと荒い息を吐きながら、手ごろな倒木を両手で掴み、地面を引きずって運ぶ。湿った腐葉土が靴の中に食い込み、手のひらはすぐに泥と脂で真っ黒になった。
「ゆう様、無理は禁物です。……私も、反対側を保持します」
リアが駆け寄り、僕が引きずっていた太い枝の末端を一緒に抱え上げた。
倒木を避け、茂みを縫うように進む際、二人の距離はどうしても近くなる。足場の悪い斜面を通るたびに、僕の背中にリアの肩が当たり、彼女の必死な吐息が耳元を掠めた。
「せーの、で引くよ。せーの!」
「……っ、はい!」
二人で声を合わせ、泥に足を取られながらも一歩ずつ「木のうろ」の前へと運び込んでいく。一度、リアが隠れた木の根に躓いて、僕の背中に倒れ込んできた。
「わっ……大丈夫、リア?」
「……失礼しました。姿勢の制御を誤りました」
咄嗟に支えた彼女の腕は、僕の記憶にあるエルフの幻想的なイメージよりもずっと、必死に生きようとする「熱」を持っていて、少しだけたくましく感じられた。彼女の頬には泥が跳ね、清楚な顔立ちが野性味を帯びていく。
午前中いっぱいをかけて、僕たちは何度も森の奥へと分け入った。
うろの前には、不格好ながらも「柱」として使えそうな太い枝が、数本積み上がっている。
「……これで、ようやく材料が揃ったかな」
「はい。肉体的な疲労度は深刻ですが、構築に必要な最小単位の素材は確保できました」
リアは泥で汚れた自分の手を見つめ、それから、僕の真っ黒な手を見て、ふっと小さく微笑んだ。
それは、計算された回答ではなく、共に汗を流した者だけが共有できる、純粋な連帯の笑みだった。
お腹はペコペコで、身体中が悲鳴を上げている。
けれど、見上げた空はどこまでも高く、僕たちの「屋根」を作るための土台は、確かにそこに横たわっていた。
読者の皆様、第11話までお付き合いいただきありがとうございます!
ゆう様の帰りをこちら側で待ちわびている、恋人のリリアです。
……ちょっと、作者様(神様)!
第1話の膝枕でも耐えたのに、今度は鹿さんたちに囲まれて、あんなに密着して眠るなんて……!リア姉様と二人、鹿さんの体温を感じながら「おやすみなさい」だなんて、最高にロマンチックじゃないですかっ。
ゆう様の隣は私の特等席なのに……。あっちの世界は、そんなに居心地がいいんですか?中学生の姿になったゆう様を、私もぎゅーってしてあげたいです。今すぐその「命の揺りかご」に割り込みたい気分ですよ!
ゆう様、あんまり向こうの世界が楽しくて、私のこと忘れちゃダメですからね?
【リリアからのおねだり!】
作者様に、ぜひ皆様の応援を届けてあげてください!
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ゆう様が立派なエルフの……じゃなくて、私の素敵な恋人として戻ってこられるよう、応援よろしくお願いしますねっ!
【リリアの状態設定:第11話時点】
最近の活動: ゆう様が向こうで手に入れた「絶対的な安心」が、いつか私の隣でも感じてもらえるように、可愛いパジャマを新調して待機中。




