表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/59

大物美少女VTuberとコラボ

「ああ、ちくしょう! また死んだ!」


 画面の中のプレイヤーがスプレーガンで撃たれ、消滅した。

 と、丁度その時タイムアップ。


 もうワンゲームと意気込んでみるも、窓から朝日が入ってきている。もうそろそろ登校時間だな。


 ゲームコントローラーを置き、もそもそと制服に着替え、登校した。


 教室に入ると、クラスメート達が思い思いに喋っていた。この喧噪、徹夜明けにはしんどい。頭にガンガン響いてくる。


「そこ、オレの机なんだけど」

「ああ。悪ぃ、地味男君。お前、陰薄くてさー。来てるとか、気が付かなかったわー」


 オレの机でたむろしている連中は、馬鹿にするような顔でこちらを見てから、笑いながら去って行った。


「あのさー、山田」

「なんだよ、石田」


 後ろの席に座る石田美玲が喋りかけてくる。


 彼女はその名の通り、美しい鈴のような声音の持ち主。そして、声だけではなく、そのルックスもモデルばり。

 ちょっと染めた栗色でゆるふわウェーブのかかった髪。愛らしいアーモンドアイで、鼻筋はスッキリと通り、形の良い艶めかしい唇をしている。


 絵に描いたような美少女、それが石田美鈴だ。


 しかも、彼女の父親がこの学校の理事長というではないか。

 顔がいいだけはなく、お金持ちの子女でもあり、かつ人気者。この学園を牛耳っている存在と言っても、過言ではない。


「あんな奴等、どってことないでしょ。もっと言ってやったらいいじゃない」

「いや、いいんだ。波風は立てなくない……」

「あ、そ。なら別にいいけどさ」


 そうしてから石田はそっぽを向き、クラスのギャル達との会話に戻った。


 オレは鞄から一冊の文庫本を取り出し、黙読する。


 クラスに連中で親しい友達だったのは1年時からの同級生である大矢だけだ。アイツとも疎遠になってしまったのだが、幸いあちらの方から話しかけてくることなくなったので、特に問題ない。


 というか、オレの存在などこのクラスでは希薄。ほぼ空気みたいなもの。


 イジメにまでは発展していないので、それで良しとしなくては。

 この教室では、陰キャの空気でいい。なんたって、オレの正体を知られてはマズいのだから。


 そうして存在感をなるべく消すように努め、無難に授業を受け、黙々と弁当を食い、放課後になれば部活もせず、とっとと家に帰る。


 そして、帰宅してから、PCのセッティングに抜かりがないかチェックする。


 カメラ良し、ゲーム機のキャプチャー良し、マイクもミキサーも問題なし。配信に便利なツールであるXSpなんちゃらも良好に起動した。

 これで動画配信しても大丈夫だな。


 ちらりと壁時計を見る。ライブ配信までは、まだ間がある。


 今日は大物VTuberの花園チョコラさんとの初コラボ配信日。抜かりのないようにしなくては。


 そうだな……最終的な打ち合わせをチョコラさんとしなきゃだな。


 ディスなんちゃらというチャットのソフトを立ち上げ、チョコラさんを招待して反応を待つ。ものの10秒もすると、相手が応答した。


「チョコラさん、どうもこんにちはー」

「あ、上杉信玄さん。今日はよろしくおねがしまーす。あの、あたし、あたし、アナタの大々ファンでして。チャンネル登録もしていますし、スパチャもしているんですよー」

「あ、はぁ、どうも。でも、チョコラさんの名前で投げ銭してもらった記憶はないなー」

「クスクス。いくらなんでもチョコラの名前で投げ銭なんか出来ませんよー。モモのユーザー名で、上杉さんのライブ配信をいつも見ていますから」


 モモさん……そうか彼女か。いつも高額な投げ銭をしてくれる彼女。それが、モモさんであり、大物VTuberの花園チョコラさんでもあったのか。


 突然明かされた事実に、ちょっとした衝撃を受ける。


 自分のチャンネルで、レトロゲームを初見プレー配信したり、好きなアニメとかの雑談をしているのだが、そこから結構な大枚を得ている。なので、ファンの声援は素直に有難い。


 そして、それをそのまま言葉にする。


「モモさん、いつも応援ありがとうございます」

「いえいえ、とんでもです。こちらこそ上杉信玄さんのライブ配信を毎回楽しみにしていますから」

「ありがとうございます! えっと……話は変わりますが、今日のコラボ配信についてですが」

「はい」

「あの、当初の予定通り、始めは二人で雑談をして」

「はい」

「それから、スプラXゥーンでガチ対決という流れでいいでしょうか?」

「はい、喜んで。うわー、あの上杉さんと一緒にゲーム出来るとか、幸せだなー」

「モモさん」

「はい?」

「ライブ配信の時、あくまでも貴女はあのチョコラさんなのですから、特定個人を持ち上げるのは、ちょっと……」

「あ、ですね。気を付けます」

「じゃあ、オレはこれで。本番開始10分前からまた合流ということで」

「はい。宜しくお願いします!」


 頭を下げてから一旦チャットオフにし、ゲーム機を起動させる。


 相手はあの花園チョコラさん。腕の立つゲーマーでもある。彼女もゲーム実況をしているクチで、そのゲームスタイルは華麗な神業を連発するタイプ。


 それで多くの男子共をKOしている。心身共に。


 だが、こちらとて同じゲーム配信者としての意地がある。

 負けられない、彼女には。

ブクマや評価などがあると、作者のテンションが上がります。

ブクマ、評価など、よろしくお願いいたします!


皆様の応援が何よりの励みとなります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ