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11、白い小鳥

家の家事を急いで済ませ、私は今日、森に来ていた。 最近、森に行ってまだチイの葉とか残っているのにどうして森に行くのと母が不思議そうに聞いてきたが、知り合いに会いに行くと言って家を出てきた。



ロイドさんが病気だと知った時、私は魔術でどうにかなるんじゃないかと思った。だから、帰り際にロイドさんに病気について尋ねてみた。


しかし、ロイドさんの病気は私が知っているような病気ではなかった。聞いたこともないような病名で、私はすぐに魔術ではどうにもできないと思った。


私は治癒系統の魔術を確かに使うことはできるが、治せるのは私が知っているような病気だけ。私は医者を目指して魔術を勉強していたわけではないから、魔術で治せる病気をそれほど知らない。それに、魔術でも治せない病気はいくらでもあった。



だから、私にはもうどうすることもできなかった。でも、ロイドさんを見捨てることなんでできない。


そして、もう誰かに聞くしかないと思った。そこで、思いついのが、リリアーナさんだった。リリアーナさんなら何か知っているかもしれない。なんとなくで理由なんてものはないけれど。




大声で叫びながら森の中を歩き続ける。本当は前にリリアーナさんと一緒に来たあの一本木が立ち、一面真っ白な花の咲く花畑やチイの葉があった場所にも行きたかったが、残念ながら行き方を覚えていない。


そいえば、あの後、お母さんに採ってきたものを渡したけどおかしなことを言っていた。「こんな桃色の実なんて見たことない……リア、これどこで採ってきたの?」と聞かれた。私はちゃんと食べれる実でとても甘くておいしいことを話すと疑心暗鬼になりながらも試しに食べてくれた。母もラレルがおいしいと言ってくれたしまた採ってきてほしいとも言っていた。


そして、もう一つ気になることがあった。森からの帰りにクリフとアリルにラレルがなっていた木のある綺麗な白い花の咲く花畑を知っているか聞いたところ、二人ともこの森にはそんな場所があるなんて知らなかったと言っていた。私はチイの葉が採れた場所からそう遠い場所にはないはずなのにと思って聞いていた。やはり、リリアーナさんは普通の人ではないと思う。怪物……とは思いたくないが、これだけいろいろと不自然な点が多いとそう確信してしまいそうになる。


でも、もし、リリアーナさんがこの森の怪物と言われているものだったら、すごく合わないと思う。だって、あんなに明るくて元気で綺麗などう見ても普通の女の子なリリアーナさんには怪物なんて言葉は似合わない。少し、笑ってしまう。



私は絶対に森で迷わないように帰り道を把握しながら、リリアーナさんを探す。あれから、だいぶ歩いたが一向に見つかる気配がない。もしかしたら、リリアーナさんは今日、ここには来ていないのかもしれない。



と、足に何かが当たった。

木の根のように固くなく、かと言って何かの木の実とかではない。肌触りが良くてふわふわしていた。ただ、ところどころに液体のようなものが付いていて、気持ち悪い。


私は何かと思って足元を見た。下にあるものを見て私は思わずそのから飛びのいた。


私の足元にいたのは小鳥だった。雀よりは一回り大きいくらいの真っ白な鳥。ただし、その小鳥は血で赤く染まっていた。元々小鳥の色が白色だから綺麗な鮮血が赤いのがよく分かる。


私の足には同じ色の液体が付いていた。私は驚きの余りしばらくその場を動けなかったが、気が落ち着くと慌てて小鳥に駆け寄った。


小鳥は羽に怪我を負っていて、時折体を動かしていることからまだ生きているようだった。よかった、まだ生きてて。そう安心している場合ではないが、ひとまずよかった。


でも、どうしよう……私、血を一時的に止められるような包帯とか持ってないし、この子を連れて帰っても家に包帯とかないと思う。かと言ってこのまま放っておくのも可哀想です。


私は辺りを見回す。こんな森の中で人と会うなんてことも普段ないため、周りには当然誰もいなかった。


これぐらいなら、魔術で治してもいいかな?誰もいないみたいだし、こういう時こそ使うべきだと思うし。傷も切り傷だけだから、そんな大仰な術は使う必要もないだろうから。



私は小鳥に手を当てて、集中する。


すると、小鳥の怪我がどんどん塞がっていき、血も止まる。小鳥はまだぐったりと横たわっていたがしばらく休んでいれば後は元気になるだろう。


「……あーあ、そいえば、治癒系統の魔術って簡単なものでも結構体力使うんでしたっけ…………」


学校の先生なら「そんな基礎的なこと忘れるんじゃない!」とか言われそうな発言である。体が怠い。おそらく、歩き回った分の疲れもあると思う。


ああ、でも、この小鳥と私の足についた血ぐらいは洗い流しておきたいな。このまま帰ったら、また怪我したのかとお母さんに心配されるだろうから。


私は重い体を起こして、小鳥を手に乗せ川のある方へと向かう。




川までの道のりはそれほどないはずなのに、いつも以上に時間がかかってしまった。川はの深さはそれほど深くないので、近くにあった石に座った後、川に足を入れる。そうして自分の足を洗いながら、手に小鳥を乗せたままもう一方の手ですくった水を優しく小鳥にかける。


血はここに来るまでの間に固まってしまい、水をかけただけではとれなかった。傷口は完全に塞がっているので、できるだけ優しく小鳥についた血を擦って落とす。透明な水に赤色が混じって流れていく。


もうそろそろ、だいたいの血がとれたかなと思っていた時だった。小鳥が目を覚ましたらしく、水のついた羽を広げて上下させていた。どうやら、動けるほどには回復しているようでホッとする。


小鳥は私の方にその赤色のまん丸とした目を二つ向ける。そして、首を傾げていた。


ああ、可愛い……癒される。どこの世界でもやっぱり動物を見ると癒されますね。


私は小鳥の動作にうっとりと見惚れていた。自分の手の上でちょこちょこと歩いたり、羽を掃除しているところがなんとも言えず可愛い。



「あ!待って‼︎」


小鳥が空へと飛んで行ってしまう。内心、もう飛べるようになったことを喜びながらも、少しの間安静にしておいた方がいいのではという思いもある。私は飛んでいく小鳥を追いかけた。


森の中を走る。魔術を使った後で体力は殆ど残されていなかったが、小鳥のことが心配でそんなことさえも忘れる。




小鳥だけを見て森を走っていたためか、帰り道なんて全然分からない。そんなことを追いかける最中、やっと気づいた。しかし、時すでに遅しでも引き返えそうにもそれができない。


これだとお母さんに怒られた後、クリフあたりに「森で鳥を追いかけて迷子になるとかアホだなお前」と言われそうなものである。


そんなことを思うと余計に疲れが溜まる。それでも、小鳥を追いかける足が止まらないのはすでにどうとでもなれと思っているからだろう。




しかし、予想外なことに小鳥は森を抜けたのだ。一瞬まさか森の反対側に来てしまったのでないかと思ったが、そこには見覚えのある建物があった。


あの崩れたわがままお嬢様が建てたという屋敷である。森を抜け、安堵して森の出口で立ち止まる。もう、歩く気力すらない。今日はもう帰ろう。小鳥も元気になって一件落着ですから。


そう思い、小鳥が飛んでいった方である前を向いた。しかし、そこにいたのは小鳥だけではなかった。








手入れがされ、太陽の光を反射するぐらいに綺麗な金色の髪をまとめ上げ、身長は私と同じぐらいの女の子がそこには佇んでいた。服は薄いピンクで白いフリフリのついたいかにもドレスといった感じのもの。


明らかに私達が住む世界とは違う人だとすぐ分かる。服装からも分かるけど、第一こんな森にあんな動きにくそうな服装でくる人間いない。それに、雰囲気も私の周りにいるような人間の雰囲気じゃない。


私の元のいた世界の言葉で言えば、きっとお姫様かお嬢様と呼ばれる人達だろう。


しかし、そんな人達が私達みたいな身分の人達が住む場所に何の用だろう。まあ、どちらにしろあんまり関わりたくないけど。変な屁理屈をつけられて、面倒ごとを起こしたくないですし。


見つからないうちに家へ帰ろうとするが、小鳥がその子の横を通ろうとしていた。


そのドレス姿の女の子は小鳥が横を通ったのに気がついた。



そして、その女の子は小鳥を叩き落とした。



一瞬、何が起こったのか理解できなかった。さっきまで、飛べるぐらい元気になってよかったと喜んでいたのに。また、地面で苦しそうに横たわっている。


私は横たわっている小鳥をただ見つめることしかできなかった。


どうして?ただ、あの小鳥は横を通ろうとしただけなのに。それだけで病み上がりの小鳥を叩き落とすなんて……ひどい、と思う。そして、ドレス姿の女の子は小鳥を汚物でも見るような目で見下していう。


「なんですの……この汚い物は………あなたのような物が私の横を通ろうとするなんて、恥を知りなさい」


私はその言葉に自分が今すべきことを思い出し、すぐに小鳥に駆け寄った。


急な私の登場にドレス姿の女の子は訝しげに見ていた。


「大丈夫!小鳥ちゃん‼︎」

「なんですのあなたは……」


ドレス姿の女の子が何か言っているのにも関わらず、私の耳にはそんな言葉は一切入ってこない。


小鳥はただ叩き落とされただけのようで気絶しているだけだった。よかったと胸をなでおろしていると、誰かに頭を叩かれた。


「この汚い下民共が‼︎私の話も聞かずにいるとは…礼儀がなってませんわ」


叩かれときに抱えていた小鳥を地面に落としてまう。ドレス姿の女の子は私の近くまでくるとよっぽど無視されたことに腹がたったのか、今度は足で私を蹴り始めた。革靴の角を使って蹴ってくるため素足で蹴られるよりかは何倍も痛い。


でも、蹴られたのは確かに痛かったが、それよりも小鳥の容態の方が気になって仕方がない。


やっと、その女の子は蹴るのをやめる。私はのそのそと這いずりながら、飛ばされた小鳥の方に向かう。


遠くからでも息をしているのが分かる。まだ、生きている。早くあの子を抱いて逃げよう。


魔術を使ったこととその後鳥を追いかけて走りまわったこと、それに加えて今女の子に蹴られたことでろくに体力も残っているはずがない。そのためもう一歩も動けないはずなのにあの子が生きていると分かるとどこからか力が湧いてくる。あの小鳥がまた羽ばたいたり水浴びをしているところを見られると思うと、自然と口元が緩む。


しかし、もうすぐで手が届きそうというところでその小鳥を私の前から消えた。


上を見上げると、ドレス姿の女の子がその小鳥を汚いものを持つように羽を指で挟んで持っていた。


「ふんっ、こんな汚らしい鳥が私より見る価値があるなんて許せませんわ」


そう言って、どこからかそのドレス姿には似合わない短剣のようなものを取り出す。どうしてそんなもの持っているんだと思う間もなく、その女の子はその短剣を振りかざす。




そのまま、その短剣を自分の持っていた小鳥に突き刺した。


再び、小鳥が真っ赤に染まる。鮮血が飛び散り、辺りを赤い斑点で染める。真下にいた私には、小鳥から流れ出た血が水滴となって頰を伝った。


女の子は胴体が二つに割かれそうになっている小鳥を投げ捨てる。


「ああ!私の大切なドレスが汚い血で汚れてしまったわ……本当に今日はついていないですわね」


私は投げ捨てられた小鳥にただ本能的に近づいた。白いはずだった体は真っ赤に染まり、すでに冷たくなっていた。


もう、何も考えることができなかった。脳が動こうとしていなかった。きっと、動いたら、発狂もいいところだと思う。


小鳥の死体を見つめる、自分をやはり見ようとしない私にまたイラついたのか、赤い斑点のあるドレスを着た女の子が私の前に立った。赤い血がべっとりついた短剣を持って。


「ああ‼︎気に入らない……気に入らないわ。どうしてそんな小鳥にまだ縋るの?私よりもその子の方が価値があるっていうの?………やっぱり、下民は下民のままね。私の価値が分からないなんて。汚らしい下民は死になさい」


そう言ってその短剣を振りかざす。


もう、逃げようとすら思わなかった。ただ、この小鳥と同じ所に行くだけなのだと思った。


振り下ろされる、日光を反射し輝く短剣を見つめて、次に来るであろう痛みに冷たくなった小鳥を抱えたまま目を閉じる。




しかし、いつまで経っても痛みは来ず、不思議に思った私は恐る恐る目を開ける。途端にさっきの自信たっぷりの声とは違う震えた女の子の声が聞こえた。


「きゃっ………な、なんですの………この私に逆らうなんてクロフォード家がただでは済まさない…………」


女の子は急に言葉を止める。私も女の子が言葉が出なくなった理由が肌で分かった。


「リリアーナさん…………?」


目の前には綺麗な銀色の髪をした、私が本来の目的で会うはずだったリリアーナさんだった。どうやら、リリアーナさんが私を助けてくれたらしい。近くに女の子が持っていた短剣が転がっているのが見える。


しかし、後ろ姿からでも分かるが、雰囲気がいつもの優しい、柔やかなものじゃない。明らかに怒っている。いや、それだけで表せるほどのものじゃない。怒りと少なからず殺気というものが含まれている気がする。殺気なんて今まで感じたことはないがはっきりと分かる、これは殺気っていうものなのだと。


ドレス姿の女の子は地面にお尻をつけて支えている手を震わせていた。


「立ち去りなさい」


リリアーナさんが強い感情のこもった声で言う。女の子は何か言いたそうだったけれど、それが声に出ず、怯えて逃げるように立ち上がって、私達の見えない所まで走りさってしまった。






女の子が立ち去ったことで私とリリアーナさん、そして小鳥ちゃんだけがその場にいた。私は殺されかけていたという危機から脱し、一気に気が抜ける。無意識に力が入っていた肩が下へと落ちる。


ふと、抱えている小鳥を見た。もう、私の魔術では治せない。魔術は万能じゃない。いくら、魔術師でも命を与えることはできない。それができるのは神様だけだ。



急に頭痛がした。痛いと思って思わず頭を手で押さえる。どうしたのだろう。今日はいろいろとあり過ぎて疲れてしまったのだろうか。


しばらくその頭痛は続いたがすぐに収まってくれた。それが落ち着いて、下を向くと目の前には真っ赤な物体が見えた。


「ごめんね……本当にごめんね…………」


赤く染まった小鳥に水滴が落ちる。目の前が歪んでよく見えなかった。でも、その方がよかったと思う。このまま、この小鳥を直視していたらきっと後悔で押しつぶされそうだったから。


すると、上から声が聞こえた。


「リア、その子を置いて今すぐ街に帰って」

「え?……」

「その子は後で私がやっておくから」


嗚咽の混じった声しかでない。でも、逆らってはいけないような気がした。何がと言わなくても分かる。それに、リリアーナさんにそれは任せた方がいいと思った。もうすぐ日が暮れる。早く帰らないとみんな心配するはずだ。


私は小鳥をその場に置いて、おもむろに立ち上がる。そして、何も言わず颯爽と街へと戻った。

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