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第四十五話

忘れてはいけない事があるとしたら、それは優しさだ。愛する人に優しくする事が、自分ができる精一杯の愛情表現。


アーケード街側にある電話ボックスから、建築中のランドマークタワーが見える。確か、完成は今年の夏だったけ?K美さんと一緒に行けたらどんなに幸せなんだろう?ダメだ!頑張って電話しないと。でも何て声を掛けたら良いんだろう?今迄、自殺した人と話した事ないし、正直どんな言葉が良いのか?まるっきり分からない。なるようになれ!それしか浮かばない。自分はK美さんの自宅へ電話をした。


「もしもし?」


K美さんだ!とにかく自分の名前だけを伝えるのがいっぱいいっぱいだった。自分の事を知ると、いつものK美さんの反応ではなかった。自分を相手する事は、さも面倒臭そうで上の空な感じだった。


「あの~今日は久々に天気が良かったですよね?何か不作らしくて、お米とか今年は大変らしいですよ~。」

「そう…。」


自分は何言ってるんだ!世間話したって意味がないじゃないか!


「あの~今週末の話ですけど…。」

「今週末…って?」

「横浜でデートの話です。」

「誰と?」

「あ、えっと自分とです。」

「そうだったけ…。」

「あ、はい。あの~無理だったらいいですよ。」

「…若いくせに気を遣ってるんだね。なんで?」

「えっと、ですね。その~…。」

「なに…?」

「ヤッパリ!デート行きましょう!」

「…。」

「その~気分転換っていうか、きっと楽しいです!はい!」

「意味わかんないんだけど…。」


K美さんの冷たく突き刺さる言葉が痛かった。自殺未遂した人って、こんなにも変わってしまうのだろうか?


「自分…その~。」

「…今日は疲れてるから…。悪いけど、そっとしておいてくれない?」


本当だったら、このまま電話を切るのが妥当だけども、でも切れなかった。どうしても伝えたい事があったからだ。

「待ってください!!K美さん、僕はあなたの事が好きなんです!」

「はぁ??」

「好きで好きでたまらないんです!今だってこうやって話してるだけでも、顔から火が出る位恥ずかしいんです。」

「…。」

「でも、抑える気持ちは止められません。」

「何言ってるの?!あなたはわたしの事なんてたいして知らないじゃない!それなのに好きだなんて、すっごく変!!おかしい。子供恋愛じゃないんだから、青臭い事なんて言わないでよ!」


自分は本当に心から傷ついたが、湧き上がる怒りも感じた。


「知らないから好きになっちゃいけないんですか!?青臭いって何がいけないんですか?!自分はK美さんに惚れたんです!そんな理由なんか自分でも分からないです!でも好きになってしまったんです。だから、今日は色々な事が起きてビックリしたけど、でも、だから元気になって欲しくて…。」

「…。」


もうだめだ…。終わりだ。公衆電話から好きな人へ告白だなんて最悪だ。相手は沈黙のまま何も語らなかった。次第に辺りはポツポツと雨が降り出して、寂しさと哀れみが辺りを包んでいるようだった。気が付いたら自分の頬に涙の雫が流れ落ちていた。


「ありがとう…。そこまでわたしの事を思ってくれただなんて…。」

「え…?」

「私も君の事好きだよ。」

「えええぇ!?」

「本当に、前から気になっていたの。一緒に頭下げてくれた時も、本当にビックリしたけど嬉しかった。」

「それじゃ!!」

「うん、今週末は君が言う様に、お洒落していっぱい楽しもうね。」

「やったー~~~~!!ありがとうございます!!」


自分は胸が弾けるほど嬉しかった。K美さんも自分の事を好きでいてくれたなんて!!やっとK美さんは自分の彼女になってくれたんだ。


今週末土曜日六時に、横浜のそごう入り口にある時計台したで待ち合わせする事になった。


雨はなんて優しいんだ。

自分は自分でも分かるほど有頂天で舞い上がっていた。


続く

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