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第七話 Last Terminal


Prologue Expressは、静かに朝浜線を走り続けていた。


朝凪駅を出発してから、いくつかの駅を通過する。


車窓の外を流れていく景色は、これまでの舞洲鉄道とはどこか違って見えた。


新しく整備された道路。


完成したばかりの建物。


そして、まだ人々の日常が始まっていない街並み。


朝浜線。


舞洲本線の朝凪駅から分岐し、遠浜駅までを結ぶ新しい路線。


これまで「フロンティア」という名前で発表されていたこの路線だが、それは愛称であり、正式な路線名は朝浜線という。


起点である朝凪駅の「朝」。


そして、終着駅である遠浜駅の「浜」。


二つの駅の名前から一文字ずつ取った、シンプルな路線名だった。


しかし、「フロンティア」という愛称には、この路線に込められたもう一つの意味がある。


まだ開かれていない場所。


新しい時代。


そして、その先に広がる未来。


Prologue Expressは今、その新しい道を走っていた。



舞洲鉄道運転司令室。


大型モニターには、朝浜線の路線図が表示されていた。


その上を、一つの列車表示がゆっくりと移動している。


PE-01 Prologue Express


司令長は、その表示をじっと見つめていた。


『現在地は?』


『第二駅を通過しました。』


『遅れは?』


『ありません。定刻通りです。』


『設備の状況は?』


『現在まで、すべて正常です。』


司令長は小さく頷いた。


Prologue Expressは、単なる記念列車ではない。


朝浜線開業前の最終確認という役割も担っている。


走行中、線路や信号設備、各駅の状態を確認する。


もし問題が見つかれば、開業までに対応しなければならない。


しかし今のところ、大きな問題は起きていなかった。


『順調ですね。』


隣の司令員が言う。


『ええ。』


司令長は答えた。


『でも、まだ終点に着いていません。』


『遠浜駅ですね。』


『はい。』


司令長はモニターの路線図を見る。


朝浜線の最後。


その先に表示されている駅。


遠浜。


『どんな駅なんでしょうね。』


司令員が呟いた。


『完成したばかりですからね。』


『実際に行ったことは?』


『私はまだありません。』


『じゃあ、今日が初めて見ることになるんですね。』


司令長は少し笑った。


『モニター越しですけどね。』



車内。


Prologue Expressには、今回の初走行に関わる関係者が乗車していた。


運転士。


車掌。


設備担当者。


駅担当者。


そして、朝浜線の開業に関わった人々。


誰もが車窓の外を眺めていた。


『もうすぐですね。』


車掌が時計を見る。


『次が終点です。』


『遠浜駅……。』


一人の関係者が小さく呟いた。


車内の案内表示が切り替わる。


Next Stop TOHAMA


その文字を見た瞬間、車内の空気が少し変わった。


Prologue Expressは、これまで順調に走ってきた。


そして、いよいよ朝浜線の終点へ向かう。


列車は少しずつ速度を落とし始めた。


車窓の外には、広い海が見えている。


遠くには港のような施設。


新しく整備された道路。


そして、その先に、一つの大きな建物が姿を現した。


『あれは……?』


『遠浜アリーナです。』


誰かが答える。


遠浜駅の周辺では、大規模な再開発が進められていた。


その中心となる施設の一つが、遠浜アリーナだった。


スポーツ大会。


展示会。


そして、大型ライブ。


さまざまなイベントを開催できる、多目的施設として建設された。


朝浜線が整備された理由の一つにも、この遠浜地区の再開発が関係していた。


これまで交通アクセスが限られていたこの地域に、新しい鉄道路線を建設する。


そして、街と駅を中心に新たな人の流れを作る。


遠浜駅は、その中心となる場所だった。


『まもなく、終点、遠浜です。』


車内放送が流れる。


『お出口は、右側です。』


Prologue Expressはさらに速度を落とした。


ホームには関係者たちが並んでいる。


列車の到着を待っていた。


そして――。


ゆっくりと。


本当にゆっくりと。


Prologue Expressは、遠浜駅のホームへ滑り込んだ。


ブレーキの音。


わずかな揺れ。


そして列車は停止した。


『到着しました。』


司令室に報告が入る。


司令長は時計を見る。


定刻通り。


『Prologue Express、遠浜駅到着。』


『確認しました。』


司令室にいた全員がモニターを見る。


朝凪駅から始まった初走行。


ついに、その終点へ到着した。


『終点、遠浜。』


司令長が小さく呟く。


『朝浜線の最後の駅ですね。』


『ええ。』


『なんだか、感慨深いですね。』


司令長は頷いた。


『でも……。』


司令員が振り返る。


『でも?』


『ここは終わりじゃありません。』


司令長はモニターを見る。


『これから始まるんです。』



遠浜駅。


Prologue Expressのドアが開いた。


関係者たちがゆっくりとホームへ降りる。


まだ営業開始前のホームには、一般の利用者はいない。


静かだった。


聞こえるのは、海から吹く風の音と、遠くで作業をしている人々の声だけ。


『ここが遠浜駅……。』


一人の関係者がホームを見渡した。


新しい案内表示。


まだ使われていないベンチ。


開業を待つ自動販売機。


すべてが新品だった。


ホームの先には、数本の線路がさらに伸びている。


その先にあるのは、


舞洲総合車両センター遠浜車両支所。


朝浜線で使用される車両の一部を管理するため、新しく設置された車両基地だった。


数本の留置線には、営業開始の日を待つ車両が静かに並んでいる。


『あそこが遠浜車両支所ですか。』


『そうです。』


『開業後は、あそこからも車両が出てくるんですね。』


『はい。朝浜線の運行を支える重要な場所になります。』


関係者たちはホームを歩きながら、設備の確認を始めた。


案内表示。


非常設備。


ホームドア。


駅構内。


一つずつ確認していく。


『案内表示、正常です。』


『ホーム設備、異常ありません。』


『信号設備も問題なし。』


次々と報告が入る。


司令室にも、その情報が共有されていく。


『今のところ、すべて正常です。』


『順調ですね。』


司令員が言った。


司令長は少し安心したように頷いた。


Prologue Expressの初走行は、ここまで大きな問題なく進んでいる。


しかし。


遠浜駅には、朝浜線開業後の別の役割もあった。


駅前に建設された遠浜アリーナ。


そのイベント開催日には、大量の利用者が駅へ集中することになる。


司令長は、以前提出された資料を思い出していた。


遠浜アリーナの最初の大型イベント。


朝浜線開業から間もない時期に開催される、大規模なライブ。


その日、遠浜駅には通常とは比較にならないほどの利用者が訪れると予測されていた。


『……そういえば。』


司令員が声をかける。


『遠浜アリーナのイベント、もう詳細が決まったらしいですよ。』


『イベント?』


『はい。開業日に開催される予定です。』


司令長の表情が変わった。


『開業日?』


『人気アイドルグループの大型ライブです。』


一瞬、司令室が静かになる。


『それは……。』


司令長は言葉を止めた。


新線の開業日。


多くの鉄道ファンや地域の人々が集まる。


そこへさらに、大型ライブの来場者が加わる。


『利用者数の予測、やり直しですね。』


『そうなります。』


司令員が苦笑した。


『朝浜線の開業初日から、大変なことになりそうです。』


司令長はモニターを見る。


遠浜駅。


その先には、舞洲駅方面へ向かう上り線が伸びている。


イベントが終われば、多くの利用者が一斉に帰宅する。


遠浜駅から舞洲駅方面へ。


上り列車を、どのように運行するのか。


増発は必要になる。


車両は足りるのか。


遠浜車両支所から、どれだけの車両を送り込めるのか。


考えなければならないことは、まだ多い。


Prologue Expressは無事に遠浜駅へ到着した。


初走行は成功。


設備にも問題はない。


しかし、開業までの準備はまだ終わらない。


司令長は再び、朝浜線の路線図を見つめた。


朝凪。


そして遠浜。


二つの駅を結ぶ、新しい路線。


朝浜線。


その愛称は、


フロンティア。


最初の列車は、ついに終着駅へ到着した。


しかし。


ここは終わりではない。


むしろ、ここからが本当の始まりだった。


そして開業の日。


遠浜駅には、これまで誰も予想していなかったほどの人々が集まることになる。


Last Terminal。


静かな終着駅は今、新しい時代を迎えようとしていた。



第7話「Last Terminal」を読んでいただき、ありがとうございました!


今回は、Prologue Expressがついに朝浜線の終着駅、遠浜駅へ到着しました。


これまで「フロンティア」として登場していた新路線ですが、今回、正式名称が「朝浜線」であることも明らかになりました。


起点の朝凪駅と終点の遠浜駅。


二つの駅を結ぶ新しい路線、朝浜線。


そして、その愛称が「フロンティア」です。


また、遠浜駅周辺には大型イベント施設である遠浜アリーナや、舞洲総合車両センター遠浜車両支所も登場しました。


朝浜線にとって重要な拠点となる遠浜駅ですが、開業日には早くも大きな試練が待っているようです。


新線開業と同時に開催される大型ライブ。


多くの利用者が遠浜駅へ集中する中、舞洲鉄道はどのような輸送計画を立てるのでしょうか。


Prologue Expressの初走行は無事に成功しました。


しかし、これはまだ始まりに過ぎません。


今回は3301文字となりました!


Season 2も第7話まで来ましたが、物語はまだまだこれからです。


次回もぜひお楽しみに!


それでは、第8話でお会いしましょう!

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