第一話 新たな日常
嵐の後の静けさが、ゆっくりと日常へ変わってから、数ヶ月。
舞洲の街には、すっかりいつもの光景が戻っていた。
駅には利用者が行き交い、ホームには列車が到着する。
舞洲本線。
舞洲東線。
空港線。
その他各路線。
今日もたくさんの路線を、多くの列車が走っている。
そして、舞洲鉄道運転司令室にも、いつもの朝がやってきていた。
『舞洲本線、定時運転です。』
『舞洲東線も問題ありません。』
『空港線、異常ありません。』
『その他各路線、異常ありません。』
司令長は大型モニターを見ながら、報告を聞いていた。
『了解。今日も安全運転でお願いします。』
『了解!』
司令室には、以前の台風接近時のような緊張感はない。
むしろ、どこか穏やかな空気が流れている。
司令長は時計を見る。
『今日も平和ですね。』
すると隣の司令員が笑う。
『それ、前にも言ってませんでした?』
『……そうでしたっけ?』
司令室に笑い声が広がった。
しかし――。
その平穏は、一本の電話によって終わりを迎える。
『司令長、会社から連絡です。』
『何でしょう?』
司令員が資料を持ってくる。
『大規模なダイヤ改正についてです。』
『ダイヤ改正?』
『はい。数ヶ月後に実施する予定だそうです。』
司令長は資料を受け取った。
そこには、新しい列車種別や増発計画、各路線の運転本数などが細かく書かれていた。
『かなり大きな改正ですね。』
『さらに、数ヶ月後に舞洲で大規模なイベントが予定されています。』
『なるほど。それで増発を……。』
司令長は資料を読み進めていく。
しかし、あるページで手が止まった。
『……ん?』
『どうしました?』
司令長は、そのページをもう一度確認する。
そこには、今まで見たことのない路線図が描かれていた。
『この路線は……?』
司令員も資料を覗き込む。
『あれ?』
『舞洲本線でも、舞洲東線でもありませんね。』
資料の一番上には、こう書かれていた。
「舞洲鉄道 新線計画」
司令長は驚いた。
『新線……?』
『はい。』
『私は聞いていませんよ。』
『私もです。』
二人は顔を見合わせる。
その時、再び電話が鳴った。
『はい、運転司令室です。』
司令員が電話を取る。
『……はい。』
少しずつ表情が変わっていく。
『分かりました。司令長に伝えます。』
電話を切る。
『何だったんですか?』
司令長が尋ねる。
『新線計画について、今日の午後に説明会があるそうです。』
『今日ですか?』
『はい。』
司令長はもう一度、資料を見る。
新線の正確なルート。
駅の位置。
接続する路線。
そして、開業予定時期。
まだ分からないことばかりだった。
午後。
司令長たちは会議室へ向かった。
そこには、舞洲鉄道の関係者が集まっていた。
前方のスクリーンに、新しい路線図が映し出される。
『それでは、舞洲鉄道新線計画について説明します。』
会議室が静かになる。
『今回計画されている新線は、既存路線の混雑緩和と、舞洲地域のさらなる発展を目的としています。』
スクリーンに、新しい路線が表示される。
『新線は舞洲本線の――』
説明が続いていく。
司令長は黙って路線図を見つめていた。
新しい駅。
新しい分岐。
新しい運行計画。
これまでとは全く違う運転整理が必要になる。
そして説明の最後。
『開業予定は、来年を予定しています。』
会議室がざわつく。
司令長も驚いた。
来年。
つまり、準備期間はそれほど長くない。
会議が終わった後、司令員が司令長に話しかける。
『大変なことになりそうですね。』
司令長は路線図を見ながら答えた。
『そうですね。』
そして、少し笑う。
『でも、新しい路線ができるっていうのは……楽しみでもありますね。』
司令員も笑った。
『確かに。』
二人は会議室を後にする。
その頃、舞洲鉄道の線路では、いつものように列車が走っていた。
しかし、その先にはまだ誰も見たことのない新しい路線が待っている。
新しい路線。
新しいダイヤ。
そして、新しい挑戦。
舞洲鉄道に、新たな時代が始まろうとしていた。




