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社畜おっさん、異世界で子育てはじめました~拾った娘が可愛すぎるので、世界一のパパを目指します~  作者: 空月そらら


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第22話 特効薬への希望

王都の強固な城門を、文字通り暴風のように通り抜けた。

 

門兵たちが「な、なんだ今の突風は!?」と腰を抜かしている声が背後で微かに聞こえたが、今の俺にはそれに構っている余裕など一秒たりともなかった。

 

 石畳を砕かんばかりの踏み込みで王都の大通りを駆け抜け、俺は一直線に小さな診療所へと飛び込んだ。

 

「はぁっ……! はぁっ……!!」

 

 俺は肩で激しく息をしながら、診察室の入り口に立っていた。

 

 俺の姿は、誰がどう見ても正気の沙汰ではない「ボロボロ」の有様だったはずだ。

 

 自身の肉体の限界を無視した『超・身体強化ハイパー・ブースト』の連続使用で疲労困憊。


 強靭な革のコートは凄まじい風圧と魔境の茨によってズタズタに引き裂かれ、全身には道中で強行突破の際に浴びた凶悪な魔物たちの赤黒い返り血や、土埃がべっとりと付着している。

 

 俺の体は悲鳴を上げ、酷使した両足の筋肉は痙攣一歩手前だった。

 

「ひぃっ!? な、何者だ!?」

 

 奥の調剤室から飛び出してきた年配の医師が、血塗れの巨漢である俺の姿を見て、まるで死神にでも出会ったかのように悲鳴を上げて腰を抜かした。

 

「先生……俺だ、ガルドだ……ッ!」

 

「が、ガルドさん!? 嘘だろう、まだ王都を出てから数時間しか経っていないぞ!? 一体そのひどい姿は……それに、その小脇に抱えている毛玉はなんだ!?」

 

 医師の震える指の先には、俺が左腕に大事に抱え込んでいる、もふもふの白い仔犬があった。

 

 道中で最低限の応急処置の魔法はかけたが、ブラックウルフの群れに襲われていた仔犬の小さな体には、まだ痛々しい傷跡が残り、俺の服にしがみついて小刻みに震えている。

 

 だが、俺は医師のツッコミに答えるよりも先に、右の腰に下げていたマジックポーチに手を突っ込んだ。

 

「これを、受け取ってくれ」

 

 俺がポーチから取り出し、診察台の上にそっと置いたもの。

 

 それは、診療所の薄暗い空気を一変させるほどに美しく、七色の淡く神聖な光を放つ一本の草だった。

 

「こ、これは……ッ! 本当に、『光草』なのか!? 迷いの森から、たった数時間で……!?」

 

「傷一つつけずに採ってきた。鮮度も完璧なはずだ。……頼む、先生。これで今すぐ、一秒でも早く、メリアの薬を作ってくれ!!」

 

 俺が血走った目で頭を下げるのと同時に、診療所の奥から騒ぎを聞きつけた中年の女性看護師が駆けつけてきた。

 

「あと、この仔犬の治療もしてやってほしいんだ。魔物に襲われてひどい怪我をしてる」

 

「わ、分かりました! 仔犬ちゃんは私が預かります。お父さんは、早くお嬢ちゃんのそばへ!」

 

 看護師が俺の腕からそっと仔犬を受け取ってくれる。


 仔犬は「くぅん……」と心細そうに鳴いたが、俺が頭を一度撫でてやると、大人しく看護師の腕の中に収まった。

 

 それを見た医師は、ハッと我に返ったように光草を両手で持ち上げ、凄まじい気迫で調剤室へと向き直った。

 

「すぐに取り掛かる! 私の持てる全ての技術を注ぎ込んで、この光草から特効薬の成分を最速で抽出してみせる。ガルドさん、君はメリアちゃんの元へ行ってあげなさい!」

 

 医師が調剤室のドアをバンッと閉めるのを見届けた後、俺は静かに診察室のベッドの横へと歩み寄る。

 

「はぁっ……ふぅっ……ぱぱぁ……」

 

 白いシーツの上で、メリアは俺が迷いの森へ発つ前よりもさらに苦しそうに、浅く早い呼吸を繰り返していた。

 

 燃えるように赤い頬。


 苦痛に歪んだ小さな眉。


 汗で額に張り付いた青い髪。

 

「メリア……パパが帰ってきたぞ。もう大丈夫だ。すぐにお薬ができるからな」

 

 俺はベッドの脇に丸椅子を引き寄せ、腰を下ろすと、メリアの小さな右手を、自分の大きな両手でそっと包み込んだ。

 

 ――熱い。

 

 異常なほどの高熱が、メリアの小さな手のひらから俺の肌へと容赦なく伝わってくる。


 その熱さは、彼女の体内で制御不能となった強大な魔力が、今まさにこの子の命を削り取っている証拠だった。

 

「くそっ……」

 

 俺は、無意識のうちにギリッと奥歯を噛み締めていた。

 

 凶悪な魔物を一撃で粉砕できる圧倒的な力。


 どんな過酷な環境でも生き抜けるサバイバルスキル。


 他者を限界まで強化できる支援魔法。

 

 そんな強大な力を手に入れて、俺はこの異世界で何でもできる気になっていた。


 パーティーを追放されても、俺一人なら余裕で生きていけると高を括っていた。

 

 だが、見てみろ。

 

 目の前で、こんなに小さくて愛おしい命が、高熱にうなされて命の危機に瀕しているというのに。


 俺の魔法は、メリアの苦痛を和らげることすらできず、ただ熱い手を握ってやることしかできないのだ。

 

 自分の無力さが、情けなさが、刃となって心臓を何度も何度も抉り抜く。

 

「……ごめんな、メリア。俺がもっと早く気づいてやれていれば……」

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