第1話 戦力外通告と、雨の日の天使
「悪いがガルド......お前みたいなおっさんは、このパーティーから追放だ」
「は?」
突如として、パーティーのリーダーであるライズにそう告げられる。
ここは王都屈指の最高級宿屋であるスイートルーム。
豪奢なシャンデリアが飾られたその部屋に、今日は大事な話があるからと言われ、俺はここに呼ばれた。
外は激しい雨が降っており、天気はひどく暗い。
大きな窓からは、どんよりとした空模様が見える。
周囲を見渡すと、奥のソファにふんぞり返って座るライズに、壁際で腕を組む筋肉質な盾使いのユーザ。
そして、俺を蔑むような目で見下ろす回復使いの金髪をした女、レーゼ。
さらに、そこから少し離れた距離で、不安げにこちらを見つめている魔法使いの少女、エルサの姿があった。
「いきなり追放だなんて......嘘だよな?」
「嘘じゃないわよ」
俺が顔を真っ青にして問いかけると、レーゼがすぐさま容赦なく、冷たい声で断ち切る。
「皆、あんたがいらないって言っているのよ。これは、パーティーで判断したことなの。あんたの古い脳でも分かるでしょ?」
「パーティー判断......なんで俺を追放するんだ?」
俺がそう聞くと、リーダーのライズがわざとらしくため息をついて、額に手を置いた。
「俺たちパーティーランクは今やAまで行っただろ? そうして若いチームなのに、ガルドみたいなおっさんがいると、チームの士気も下がるし、イメージダウンになるんだ。だから、お前はこのパーティーから追放というわけ」
「なるほどな......だが、俺の支援魔法はお前らに必要なんじゃないか? 薬草の知識だって、俺頼りだったのに」
「ああ、それに関してはもう必要ないわ。薬草なんて地味で簡単な依頼は受けないし、支援魔法なんていらないのよ。食事だって誰でも作れるからね」
レーゼは心底見下したような、ニヤリとした顔でそう言う。
ああそうか、俺はもう本当にいらないんだな。
パーティーが成長していくにつれて、こいつらはおっさんの俺がいると今後の将来性において不要と判断したわけだ。
俺なりに、パーティーに尽くしてきたつもりだったんだがな。
いつも、パーティー内の空気が悪くなりそうになったら俺が仲介に入り、健康的な食事を作ったり、目立たない支援魔法とかも必死にしていたのに。
それらも、あいつらにとってはもういらないらしい。
「分かった、じゃあ俺やめるわ」
俺が淡々とそう言うと、皆キョトンとしている。
どうやら、俺が泣きついて「辞めたくない」と懇願すると思っていたらしい。
だが、俺としてはもう良いんだ。
まさか、ここまで仲間として認められていなかったなんて。
今まで楽しくしてきたことや、一緒に笑いあって飯を食っていたのは全部嘘だったのだ。
俺はその冷酷な事実を受け止めると、何もこいつらから感じなくなる。
未練なんて、完全に消え失せた。
そうして俺は背を向け、出口がある扉の方へ向かっていると、俺たちから距離を取って話を聞いていたエルサが、たまらず口を開いた。
「ま、待って下さい! ガルドは本当にパーティーに尽くしてくれたんですよ!? 皆酷いです!」
大きな魔法帽子を被った彼女は、紫髪の長髪を揺らし、必死な顔でリーダーのライズにそう伝える。
だが、ライズは彼女の言っていることなんて鬱陶しそうに無視し、俺に背中に向かって告げる。
「じゃーなガルド。俺たちはこれからS級パーティーを目指す。お前は、おっさんらしく一人で静かに暮らしてろ」
そう言ってライズ達は、あざ笑うかのように声を上げた。
エルサは悔しそうにギュッと唇を噛み、下を向く。
どうやら彼女だけは、俺の味方だったらしい。
だが、それももういい。
俺は出口に向かい、部屋を出るのだった。
◇ ◇ ◇
雨の中、俺は通りを歩いていた。
一体、この人生は何なのか。俺はこの世界の人間ではない。
俺は元々日本という国のサラリーマンだ。いや、サラリーマンというより、社畜だが。
会社でこき使われて、理不尽な上司に頭を下げてクライアントにも下げる。
深夜までの残業は当たり前。そしてパソコンを前に、過労で死んだ。
目が覚めたときはこの異世界に転生していたわけだ。
俺の名前はガルド、三十八歳。
この異世界では親はおらず、俺は泥水を啜って生きてきた。
ずっと辛かった。
そんな中であいつらに出会い、パーティーランクを一緒に上げていって、今はようやくA級パーティーまで行ったのに。
これからだというところで、俺は追放された。おっさんは用済みだと。
おっさんがいるだけで、パーティーのイメージが悪くなるのか。
「はあ……」
俺は深く、ため息を吐いて暗い空を見上げる。
もう、この世界でも生きる理由をなくした。
あのパーティーで、最高の地点を目指そうという目標を持っていたのに、それすらも奪われた。
冷たい雨が俺の顔を容赦なく濡らしていく。
ただひたすら、人生に絶望しているとき、何やら俺の耳に、微かな呻き声が聞こえてきた。
「た……しゅけて……」
か細い声を聞き、俺はすぐ周囲を見渡す。
何だ今の声は、子どもの声か?
さっきの声は、表通りから外れた路地裏から聞こえた気がする。
俺は水たまりを気にせず地面を蹴り、声が聞こえたであろ場所に行くと――そこには小さな体の幼女が、冷たい地面に倒れていた。
綺麗な青髪の長髪をしている。
だが、着ている服はひどく汚れ、冷たい雨に打たれてずぶ濡れになっているのだ。
「お、おい!? 大丈夫かい!?」
俺はすぐさま彼女の元に行きしゃがみ込む。
すると、彼女は俺の存在に気づいたのか、泥だらけの小さな手で、俺の足首をギュッと掴むのだった。
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