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鋼の剣を買いたい戦士と毒針を極めたい魔法使い  作者: 大石次郎


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16/17

南瓜 前編

鋼の剣の『鋼』を感じながら、俺は大きく構えた。


「『ワイドスラッシュ』っ!」


剣を大きく薙ぎ払い、カボチャのランタンみたいな頭の外套を纏った下級魔族『パンプキントーチ』20数体を一掃した!!

俺達は建物を迷路空間に変える『ラビリンス』の魔法を掛けられた廃墟の館で交戦しているっ。

パンプキントーチ達はまだまだいた。結構な持久戦になっていて買ったばかりの『鉄の鎧』と、この間買った鉄の兜、鉄の盾もだいぶキてるっ。ヤバい!


「ミュルルっ、なんだアイツっ? レベル14で『鋼程度の武器』しか装備してないのにっ??」


パンプキントーチの召喚主である細長い身体に管楽器のような口を持つ魔族が困惑していた。だが、

言った台詞が聞き捨てならない!


「鋼程度? お前は『鋼の真理』を知らないようだな」


「ミュル? 鋼の真理?」


「鋼とは、『(こころ)』」


「鋼が心??」


「あるいは『(まこと)』と書いて鋼」


「鋼を真と書く???」


「・・あの、その話長くなる上にどこにも着地しませんよ?」


「ミュルルっ?!」


クイックの魔法による加速状態でファストビーを使わずに素の『突き』で次々と倒していたマミが遮ってきた。

武器は愛用の毒針がいまいち効かないので先日買った光属性の刺突(しとつ)短剣『エルフィンピン』を渋々使っている。

マミは、走っている状態のみ下半身の負荷を大幅に軽減する特性を持つ『快速ブーツ』も買っていたから渋々でも立ち回りは絶好調だった。


「マミ、思考することが思考その物なんだ、言うだろ?『鋼、思う故に鋼なり』って」


「言わなねーミュルっ!!!」


なぜか細長い魔族が激怒して、厄介な上位魔法道具『ロッドオブカーニバルファイア』を振り上げっ、また70体近いパンプキントーチを召喚しやがった!

パンプキントーチ群は大量召喚し過ぎて意識薄弱気味の様子だが、デタラメな狙い付けでファイアボールの魔法を連発してくるっ! 生き残りのパンプキントーチ達20体あまりも呼応して撃ってきて火球の雨だっ!!

あまり燃えない上に修復までするラビリンス化した館じゃなかったら、大火事になってるとこだっ。


「アイアンシェルっ! 話の合わないヤツだっ。マミ! 一旦下がってアッチ達と合流だっ!! ガス出てるぞこりゃっ」


俺は盾の防御技で身を守りつつ、『光り玉』数個のスイッチを素早く押して、パンプキントーチを操ってる細長い道化魔族の方に投げ付けて閃光を炸裂させ、交戦していたフロアから撤収に掛かった。

マミもマナボムの魔法を適当にバラ撒いて素早く続く!


「屁理屈捏ねるクソ冒険者どもを始末するミュルっ!!」


引き続き激怒している細長魔族が喚いていた。


「私は何も理屈捏ねてないんよっ」


マミは迷惑顔だった。



遡ること数日前、俺、マミ、アッチ、リィアーンはヨイヨイさんの紹介してくれた仕事の内『推奨レベル12程度で俺達のパーティー構成で問題無くやれそうで赤字にもならないヤツ』という条件で選んだ1つの仕事を引き受け、兎溜まりの個室でアイス乗せフラッペを食べながら資料を手に打ち合わせをしていた。


「『呪われた廃墟の館でロッドオブカーニバルファイアを回収する』、か」


「もしくは『状況の確認』だよ」


俺とマミは楽な布の服だったが、アッチはこれまで貯めた活動資金を使って『弓小人(ゆみこびと)の装束セット』を買って着ているから童話に出てくる森の小人みたいになっている。


「1回、整理しよ? あの館は生前の持ち主の呪いで簡単に手が出せなかったんだけど、3ヶ月程前から定期的に『インプ(使い魔)』の大群が館の結界にぶつけられてる。悪魔使い、もしくは魔族が杖を狙ってるのはほぼ確定。辺鄙(へんぴ)な場所だったからちょっと発覚が遅れたみたいだけど」


「ロッドオブカーニバルファイア、パンプキントーチを大量に召喚できるギルドから封印指定されてる上位魔法道具です!」


装備は変わらないが研修してた魔法医院で「髪、邪魔」と怒られて長いピンク髪を短髪にしたリィアーン。


「インプは雑魚にしても封印指定魔法道具のクエストで推奨レベル12はザルいですねぇ。テツオ、ヤバそうなら途中でバックレましょう」


「そんなことしょっちゅう言ってる気がするが、途中で上手いこと逃げられた試しがないよな?」


「うっ・・取り敢えず、持ち道具は多めに用意しとくんよ」


ゲンナリ気味にフラッペの上のアイスをスプーンで掬うマミ。


「もう少し情報を集めてみるよ。まずクエスト資料は資料化する際に簡潔に纏められちゃってたりするし、リィアーンも手伝いな。調査系サポーターはむしろこの辺の作業が本番だよ?」


「はい、アッチさん!」


「まぁ事前作業はやれるだけやっとこう」


ギルドから貸与された呪いや闇属性、精神耐性が強力な『破魔のアンク』以外にも色々買い込んで、アッチ達に追加調査もしてもらい、準備を整えた俺達は件の館のあるグランオニオンの東南部の何も無いような荒野に向かっていた。



結果としては現地に行くと館を覆っていた結界は破られていた。

俺達が意を決してラビリンスの魔法が発動した内部に潜入すると・・


「ミュルルっ!! 人間どもっ・・ん? あ~、フェザーフット族とハーフエルフ合わせてっ、雑魚どもぉっ! ミュルルーっっ!!!」


探索を始めて約40分後くらいか、どこからともなくパンプキントーチの群れを引き連れた細長魔族が現れ、強襲された!

その手には南瓜の装飾の杖っ!


「ロッドオブカーニバルファイア!!」


「普通に先越されましたね」


「また間が悪いっ。アッチとリィアーンは館の探索を続けてくれ! 20分後に合流しよう!!」


今は全員機甲懐中時計を持っている。


「わかった!」


「お気を付けて!」


モタモタせずにすぐ切り替えて駆け去ってゆく2人。リィアーンも動きよくなってきたな。


「毒針、効きますかね・・」


右手に毒針+1。左手にエルフィンピンを持って掌で回転させるマミ。


「ところで魔族さーんっ? 杖を手に入れたのになんで館の中をウロウロしてるんですかぁ? 不思議ですねぇ?」


「ミュっ?! それは・・」


「あれ? もしかして杖を盗んだ呪いで館から出られなくなっちゃったんですかぁ? 残念でしたね~っ!」


めっちゃ煽るマミ!


「ミュキィーーーッッ!!! お前達の魂を生け贄にしてパワーアップすればっ、こんな呪い程度! 解除してやるミュルッ!! 掛かれぇっ!!!」


こんな流れで細長悪魔はパンプキントーチ群をけし掛けてきていた・・



で、俺達はラビリンス化した陰気な館の中を駆け回ってる。


「だいぶ巻いたな・・アッチ達は安全地帯にもう戻ってる頃じゃないか」


時計を見ながら言った。ラビリンス化後の館の資料も多少あったので、それを元に魔除けと潜行の結界を張り易そうな移動の動線も悪くない小部屋に目星を付けて、俺達はそこに持ち道具を使って即席の安全地帯を作っていた。


「あの悪魔、どれくらい鼻が利くか知りませんが」


マミは消臭剤を被り、俺も習った。

それから追跡を振り切り俺達は即席安全地帯にたどり着いた!


「戻ってないか・・」


アッチ達はまだいなかった。


「『ロッドオブカーニバルファイアに対抗する魔法道具も館にある』、っていうのはガセかもしれませんよ?」


追加調査で掴んだ情報だ。マミは魔法石の欠片を使いながら古ぼけた椅子に座り、ポーションを飲んだ。俺は座る気にはならなかったが、魔法石の欠片とポーションは使った。

クエスト資料と合わせ、それらしい部屋の捜索をアッチ達に任せる形になっていた。


「・・改めて足止めするにせよアッチ達を探しにゆくにせよだ。あの杖、ヤバいが、万能って程でもなかったよな?」


「使用者の性質が合わないか、単に使いこなせてない感じでしたね。一度に相応の精度で操れるのはせいぜい10体程度じゃないですか? 1回凄い減らせたタイミングで急に動きが良くなって押し返されました」


「相手がカボチャの『おかわり』をせず、俺達がある程度動けるラインは40体弱だと思う。そのタイミングで細長野郎本体を叩けばイケそうじゃないか?」


「いいですね。作戦的に私が細長の相手をしましょう! 最悪、対抗アイテムが無くてもヤッちゃうんよっ!」


「おおっ、ヤッちゃうかぁっ?!」


俺とマミはわりと好戦的に対策を練った。



5分後。これ以上待っても待ってる間にアッチ達が襲われるリスクの方が高い。と判断し、一通り回復した俺達は入れ違いになった時の為に安全地帯にメモを残して打って出ることにした。

細長魔族はともかく意識薄弱でわかり易く火の属性を持ち、群体で動いているパンプキントーチ達の気配はわかり易かった。

多少散らばった配置もしていたが、一番大きな70体あまりの集団はすぐ見付けられた。細長悪魔もその中心辺りで宙に浮いている。かなりイラついた様子だ。

俺達は物陰から様子を伺っていた。


「アッチ達を仕止めた、って感じでもないな」


「生け贄にしてどうとか言っていましたが、脱出してませんしね」


「罠を張ってる感じも・・無いか」


「後先考えず杖を盗みに入ってそのまま閉じ込められるようなヤツですしね!」


だが最低限度、大人数で詰まって機能しなくならないよう狭い通路は避け、ラビリンス化の影響で多重に階段が重なった段差の激しい奇妙な広間を陣取って、そこから動くつもりは無さそうだった。


「段差の上を取ると警戒されそうだ。左右から行こう。冷静に考えたらそもそもまともに俺達と戦う必要ないしな」


距離を置いて延々とカボチャ達をけし掛け続ければその内勝てる。相手を冷静させちゃダメだ!


「俺は微妙に下から、パンプキントーチをけし掛け易そうな位置から行くぜ」


「大丈夫ですか?」


「鋼の剣を装備してるからな!」


「・・ま、テツオがいいならそれでいいんよ」


軽く企んだ俺とマミは、細長野郎とカボチャ軍団に挟み撃ちを仕掛けだした!

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