第三話 いもうととどらごんと幼馴染
世の中には沢山の面白い作品があります。
皆さんがそれらの作品に出逢えますように。
鈴木ドラゴン京一郎の昼食は、持参の弁当である。
自宅ベランダにプランターを数台用意して栽培している小松菜と鉢植えのミニトマトとズッキーニがドラゴン京一郎の好物である。
妹の鈴木花子は根っからの肉食系なのだが、捕食相手は京一郎限定のため食生活に大豆製品とキャベツは欠かせないようだ。
「たまには肉も食べなさいよ、京ちゃん」
学園前庭の芝生で弁当を広げているドラゴン京一郎の前に座り、一学年上の女子生徒、渡辺夏子が緑一色で役満状態であるドラゴン京一郎の弁当の中身を見て小言を並べる。
曰く、
鶏肉は良質のタンパクである。
豚肉はビタミンBの補給には欠かせない。
牛肉はナイスネイチャー。
ぶるんぶるん。
ぽよんぽよん。
たゆんたゆん。
ああ姉属性というのはどうして巨乳か貧乳のふたつ極端なものに偏りやすいのだろうか。
バランス良く食べろと説諭する割に、引き締まったウェストと張り出した乳房のアンバランスさを是正したりしないものかとドラゴン京一郎は竜らしからぬ感想を抱く。生物学的にはリザードマンに欲情した方が健全なのだろうが、不思議とドラゴン京一郎の趣味嗜好は人類のそれに準じていた。
「──あ、どこ見てるのよもう。むっつり助平さん」
『触れないのなら、見るしかないでしょう』
「おねーさんとしては、京ちゃんなら別におっけーなんだけど」
『ど』
青春をもてあますドラゴン京一郎を前にまるで動じた様子もなく、そのままえっちなゲームでヒロインをやっていけそうなけしからんおっぱいの渡辺夏子は前庭の一角を見た。
「ぐぬぬぬう」
そこでは鞘から抜かれ宙を舞う一対の刀を相手に、オリハルコン製のハリセンを振るって奮戦する鈴木花子の姿があった。
「ええい、髭切だか膝丸だか知りませんが! わたくしと! お兄様の! 午後のアヴァンチュールを邪魔するとは! このこのこのこの妖刀め!愛の名のもとに成敗してくれやがりますことよ!」
「あのー花子ちゃん、それ一応重要文化財」
「花子ではありませんわ! 私の名はフローラ! フロー」
夏子の指摘にぐわーっと牙をむいて反論しそうになった花子の後頭部に髭切の峰と膝丸の柄が落ちる。程良く延髄を狙ったそれにより意識をカットされた花子は前のめりに倒れ、事前に用意されていた担架の上に転がった。
「花子ちゃんは相変わらずねえ」
ほけほけした顔で言いながらドラゴン京一郎の弁当に鶏から揚げと豆腐ハンバーグを押し付ける夏子。
これもまたいつも光景であった。
【登場人物紹介】
・渡辺夏子
鈴木兄妹の幼馴染でお隣さん。じゅうななさい(おいおい)だが高校三年生。源氏の末裔の一人であり、血筋的には異形や魑魅魍魎と戦ってきた系譜でもある。おっぱい。ドラゴン京一郎を可愛い弟分と思っており、一人の男性として意識している。
小さい頃には一緒に風呂に入っていたこともあるため、ドラゴンの生殖器が複数本備わっていることを知っている。そのためか海外の無修正サイトでイメージトレーニングをしたり練習器具の入手を試みたりしている。
膝丸と髭切という刀が押しかけてきているが自分が手に取ることは(基本的に)ない。暴走しないための方法をカレーの匂いがする少年から一通り学んでいる。