↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いもうと×どらごん  作者: は
20/22

第十九話 どらごんとろりこんと地雷女




 ある時、バイト代の入った鈴木ドラゴン京一郎のもとに一通の手紙が届いた。


【あーちゃんの実家が可愛い下着の店を関東にも開いたので、マブダチ六割引クーポン送ります】


 大魔王の息子による直筆署名の入ったランジェリーショップの割引券が三枚、同封されていた。



「行きましょう、お兄様」


 最近ようやくAカップを卒業した妹の鈴木花子がクーポンの一枚目を握りしめて力説した。


「北欧発の、ちっぱいからでっぱいまで可愛いデザインと手頃な価格と品質で評判の下着店。ぷりちーからせくしーまで万事おっけーですわ!」

『お年玉も貯めてるし大丈夫だよね。気を付けて行ってらっしゃい』

「何を言ってますの、このクーポンは使用者がお兄様御指名なのに私ひとりで行っても使える訳ないでしょう」

『あ』


 釈然としないものを感じながらクーポンを確認するドラゴン京一郎。確かに使用者として指名されているのは鈴木ドラゴン京一郎その人であり、クーポンは一名につき一枚の使用と言明されている。

 融通がきかない。

 

 では残る二枚をどうするか。

 後日改めて花子と行くべきかと悩んでいると、お隣さんの幼馴染である渡辺夏子と後輩の北緒小路ふたばが当たり前のようにやってきてテーブルの上のクーポン券を手にとった。


「G以上でも可愛いのが置いてるメーカーって貴重なのよ、京ちゃん」

「超地味か超セクシーかの二択しかないって女子高生には厳しいっすよ鈴木センパイ」


 大丈夫、代金はばっちり用意してきたからと準備万端の女子高生二名と妹の花子に引っ張られ、ドラゴンではあるが同時に多感な男子高校生でもある鈴木ドラゴン京一郎は都内にあるというランジェリーショップまで連行された。




▽▽▽




 デパートやスーパーの下着売り場でさえ早足で通り抜けるのが雄という生き物である。


 それはドラゴンである京一郎も例外ではない。同伴の殿方用にと店が用意した喫茶スペースは一種の隔離空間となっており、空気清浄機が常時フル稼働している。そのような心遣いを尽くしたとしても世の中の多くの男性にとって下着専門店なる場所は迂闊に踏み込むことのできない一種の聖域として機能する。

 

 つまり休日の昼下がりで売り場は満員御礼にも関わらず喫茶スペースにいる男性は、鈴木ドラゴン京一郎の他はサラリーマンと思しき二十代半ばの青年が一人いるだけ。


 顔見知りではない。

 京一郎はドラゴンなのである種の知名度を誇っているが、それは相手が一方的に彼を知っているというだけの事。

 故にドラゴン京一郎は青年に近い席に座りつつ会釈した。


『こんにちは、鈴木ドラゴン京一郎です』


 ドラゴンから丁寧に挨拶されると思わなかったのだろう、青年は少しだけ面喰ったような顔をしていたが、穏やかでそして寂しそうな笑顔で深く頭を下げた。


「御丁寧にありがとうございます。横浜から来た真田と申します――その、芹沢エリカさんというドラゴンは御存じでしょうか」

『ええと、はい。バイト先の方です』

「何度かお世話になってまして。非常に情けない理由で、ですが」

『それは――』


 一体、と言いかけて。

 ドラゴン京一郎は、最寄の試着室から駆けて来る一人の少女の姿に気付いた。

 やや幼い面立ちの、髪をツインテールに縛った中学生くらいの少女だ。もっとも京一郎が彼女を中学生と判断できたのは、ドラゴンの特性として生命の力を読みとった結果である。


 外見ならば。


 少なくともGカップどころではない乳房を可愛らしいブラのみで覆い隠した姿は、超高校生級である。ヘソから下がミニスカートとニーハイソックスというのも破壊力満点ドラゴンバスター級だ。少女は普段から力仕事をしているのか乳房以外の部分が引き締まり駄肉を排しているのも、幼い面立ちに見合わぬほどのグラマラスな肢体を強調している。


 その少女が。


 推定Hカップにして可愛らしいブラジャーとショーツのセットを試着したであろう女子中学生のツインテール少女が、息と胸を弾ませて真田青年に抱きつくように駆け寄ったのである。


「すごいです、おにいさん! この店、わたしのサイズにぴったりなのに凄い可愛いのが一杯あるんです! おにいさん、見て下さい! ほら」

「あ、あのね。圭向子ちゃん、ここ、お店。ぼくの他に男のひとが」

『僕の事は愉快な置物とでも思ってください』

「――ッ!?」


 真田青年に抱きついて頬ずりしてからようやく隣にいるドラゴン京一郎の存在に気付いたのだろう。少女は二重の意味で驚き、悲鳴を上げ。


『やはり年端もいかぬ少女にみだらけしからん行為を強いておったかこのロリコン性犯罪者こと真田圭にじゅうごさあああああいっ!』


 直後。

 実にタイミングよく別の試着室よりすけすけフリフリの勝負下着を試着していた女ドラゴンこと芹沢エリカ(脱皮済み)が、プロレスの教本に載るレベルの華麗なドロップキックを真田青年の首筋に叩きつけて昏倒させた後、最寄の派出所に連行していった。


 下着姿のままで。





【登場人物紹介】

・真田圭

 仙刻商事横浜支店第二営業課のサラリーマン。ギリ二十代。元々は生命化学分野の研究者を目指す大学院生だったが、当時気鋭の若手教授(既婚)との不倫を目論む女性スタッフが点数稼ぎのためか都合の良すぎる実験結果を次々と捏造していることを先輩と共に発見。論文完成前に証拠を集めて告発、女性スタッフが別の准教授達の研究データを盗み出して様々な国や会社に売り渡していたことも判明した。が、女性スタッフは「真田君とその先輩に性的暴行を受け、脅迫されてやむなく犯罪に手を染めた」と過激派女性団体を率いて逆襲。裁判によって真田達の名誉は守られたものの、揉め事を嫌う当時の教授会はスケープゴートとして真田とその先輩を大学から追放した。仙刻商事に拾われ、宇宙語と恐れられた第二営業課のアイデアメモを人類の言葉に変換できる稀有な人材の一人として活躍することになる。祖母の七回忌の法要で本家を訪ねた折、従妹の娘(十四歳)にどういう訳か気に入られ、押しかけられ、押し付けられ(主に胸を)、押し切られ(貞操を)てしまう。そのためロリコンの烙印と共に巡回する警察官たちに要注意人物として覚えられている。作者が何をトチ狂ったかラブコメ小説をTwitter上で妄想していた頃の主人公の一人、に似た人。


・真田圭向子

 十四歳の頃に再会した、母の従弟をロックオンして長野県の山奥から横浜まで通い妻(対外的には圭に勉強を教えてもらうため)をしている健気な少女。地元の野鍛冶が青紙鋼を鍛えて作った切れ味の良いスコップを愛用しており、自然薯から猪はてはツキノワグマに至るまで掘ったり仕留めたりしては売りさばいて交通費と授業料を稼いでいる。圭とは年齢的にダブルスコアなのは仕方ない事だが時間と共に合法化するのだから然程問題視していない。定期的に巡回してくる警察官の皆さんとは茶飲み仲間でもある。高校編、大学編と存在し、我慢してはっちゃけた分、いきなり四つ子を授かったり彼女のクラスにおける卒業式の写真はバストアップのものしか残されていないなど数々の伝説を打ち立てた。白瓜の雷干(螺旋に向いた白瓜を陰干ししたものを二杯酢で漬けた、圭の祖母の得意料理)で婿を捕まえたとして本家の評価は高い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。