閑話・またの名を幻の第六話 同級生と忍者とどらごん
SS掲示板時代の読者の方より発掘データを譲っていただきましたっ(吐血切腹)
鈴木ドラゴン京一郎の通う学校には様々な出自の生徒がいる。
正確に言えば、ドラゴンが学生として認められるのだから、これくらいなら許容されるだろうという目論見で受験もしくは編入してくる学生が後を絶たない。
「鈴木君、今日もいい鱗っぷりっすね」
セーラー服の下に鎖帷子を着こんだ女子高生が、朗らかな顔で挨拶をする。
同級生の宇佐見百合子、どこの流派かは分からないが忍者らしい。
『宇佐見さんも、今日の鎖帷子はなんだか春めいた色だね』
「これっすか。いやあ若殿の御実家より進学祝いとして桜色の鎖帷子を頂戴しまして」
チタンを樹脂で包んだ鎖だから軽量の上、音も立たない優れモノっす。
忍者はともかく女子高生としてその奇抜な改造制服はどうしたものかと鈴木京一郎は考えたが、ドラゴンの自分が改造詰襟学生服を着て授業に参加しているのだから、今更の事だと納得した。
『宇佐見さんは、その若殿って人の話をよくするよね。バイト先の店長さんなんだっけ?』
「バイト先というか御奉公先の護衛対象だったっす。仕事でヘマしてうちの一族がクビになりかかったんですが、若殿がとりなしてくださいまして」
それどころか、未成年に学校に通う許可と編入先の斡旋までしてくれたという。
百合子の話では、彼女の他にも学校へ通い始めた者が下は小学生から上は大学生まで相当数おり、
彼女の一族でも前代未聞の出来事だったらしい。
「ですから、若殿のためにも良い先生になって早く恩返しをしたいっすよ」
『あー、宇佐見さん教育学部志望だっけ。専攻は宇宙を統一するニンジャの流派?』
「中学高校の理科っすね」
『え?』
「獣医学部も魅力的っすね。あーもう、こんな風に悩めるなんて学生生活って最高っすよ」
なにしろ去年の今頃は要人毒殺とか美人局とかやってたっす。
政府転覆じゃなくて世のために頑張れるって素敵なことっすよねと百合子は笑顔で弁当を摘まむ。手作りのお弁当だ。兵糧丸の類ではない。
「あー、これで女の子同士で結婚できるように法律が変われば言うことなしなんすけどね」
『え?』
「鈴木君の妹さん、可愛いっすよね」
その話題から妹の存在が出てきたことに対して、京一郎は突っ込むべきかどうか悩んだ。百合子は
同級生の中でも良識派(外見を除く)だと思っていただけに、思考の切り替えがうまくいかない。
「やっぱり、お義兄さまと呼んだ方がいいっすかね」
「私を勝手に同性愛者にしないでくださいませっ!」
鼻息荒く京一郎の手を掴む百合子の後頭部に、ようやく生徒指導の教官からのお説教より解放された鈴木花子の容赦ないオリハルコン製ハリセンの一撃が炸裂した。
すぱん、と小気味良い音とともに一撃を受けた百合子が頸部を軸に数度回転して構内の花壇に突っ込み気絶する。
ぴくんぴくんと太ももを痙攣させているのは打撃の影響なのか、それとも愛しの花子より直々に突っ込みを受けた歓喜に由来するものなのか。
『……考えたら負け』
若殿って人も苦労したんだろうなあと考えながら、京一郎はそれが現実逃避の一種である事を強引に忘却した。
【登場人物紹介】
・宇佐見百合子
制服の下にカラフルな鎖帷子を着込み、特殊強化繊維製の網タイツを着用する現代のニンジャガール。バニー耳に見える特殊なカチューシャを愛用しており、バニーガールなのかニンジャガールなのかどっちかにしなさいよ!と同級生から突っ込みを受けることが多い。しかしクラスの中では常識人枠であるとドラゴン京一郎は一方的に考えていた。
教師志望なのは事実。
女の子が好きなのも事実。
若殿に恩義があるため地元では性癖を我慢していたのも事実。ただし若殿だったらイイヨーとか考えてて若殿の異母姉妹に睨まれたのもあって関東に引っ越したのも事実。
・若殿
こーちゃん。
魔王の息子。この話(第六話)で存在が示唆されていた。




