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沈んだ船の後継者  作者: ライブイ
1章 目覚めの島
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8話 これまでと

初めての日常回的なもの、地の分多め。会話増やしたい。

 殺し合いの様な模擬戦が終わりダンジョン探索どころか話し合いをする体力もなくなってしまったので、その場で解散となり次の日の朝に再集合、そして昼にはダンジョンに潜ることになった。

 結構適当で予定も狂いっぱなしだが、とくに予定が変更しても不都合はないため、話がこじれることもなかった。


そして翌日、改めて二人と一人が対面した。


「というわけで、私たちは何とかこの島まで逃げてきたのよ。ひどいと思わない?」

「大変だった」


 話し合いは通して和やかであり、話を聞く限りそう簡単に話さないほうがいいと思われる元は裏の組織にいたという話までしてくれた。

 なんでも彼女たちはある大国の暗部で育てられたらしく、五歳のころにその組織が壊滅し、それからは二人で助け合いながら生きていたらしい。しかし獣人種への差別が厳しい国らしく、差別から逃げ延びているうちにこの島にたどり着いたらしい。


「なるほど、それは大変だったんですね」

 

 アレットはその話を聞いて二人に同情すると同時に感嘆した。アレットは船で育ったため人種差別に実感は持てないが、前世の記憶からある程度は想像がつく。そしてそれはとても年齢が一桁の子供が乗り越えられるものでは無いはずだ。

 しかし目の前の二人は、見える限りは大きなけがもなく、心が荒んだわけでもなく、至極真っ当に育っているように見える。エルフのソフィアは活発で明るい少女。猫系獣人種のモアナは無表情に無口と差別を受けた結果で心を閉ざしたのだと思ったが、話を聞く限りソフィアが出会った時かららしいので、それは別の話で、差別自体は乗り越えたと言っていいだろう。


「あれ。ところで二人は、どうやってその差別をひどいと思ったんですか?」


 アレットはふと疑問に思った。差別が当たり前の国で育ったのに、どうして差別がひどいことだと考えるようになったのだろうかと。種族という生まれ持ったもので石を投げられる日々が続けばそれに反する考えを持ってもおかしくないが、まだ五歳程度の子供と考えると、いわゆる世論の様なものに反する考えを持つことは難しいだろう。


「ああ、それはね、私たちがスラム街で死にかけた時に助けてくれた人がいたのよ」

「右手の封印が解けかけていて危険らしく、すぐにお別れになったけどね」


「なるほど。種族差別がある国にも、それに反する思想を持つ人がいないわけでは無いですよね。旅人かもしれませんが、いい人に出会えたものですね。

………え?右手に封印?」


アレットは二人が差別はひどいものだと気が付いたのは、二人がスラム街に隠れ住んでいたことがあり、その時に助けてくれた人が種族差別とは反する思想を持ち、それに影響されたのだと考えた。その人もどんな人かは分からないが、聞いてみる限り善良な人格者なのだろうと。

 そして直ぐにその考えに待ったをかけた。それは大丈夫な人なのか、と。


「うん。右手に魔物を封印して、その魔物の力を利用して戦うらしいわよ。」

「特殊な格闘術や魔術を使ってて、すごく強かった。私たちにも手ほどきしてくれた。一週間くらいで、封印を掛けなおす時期だからとか言っていなくなっちゃたけど」


 てっきり前世の記憶で言うところの妄想と現実の区別をつけられないイタイ人かと思ったが、そうでは無いようだ。おそらくだが何かの用事でその国にいて、別の場所に移動する直前に二人をみつけて面倒を見たとか、そういうことだろう。


「二人ともまだ八歳なのに、すごい人生を送っているんですね」


 生まれてすぐに裏の組織に拾われ、崩壊後も生き延び、謎の実力者に助けられる。なかなか波乱万丈な人生の様だ。普通の人間の一生分の試練に見舞われたんじゃないだろうか。


「私たちの話ばかりだけど、あなたも大概よ?ていうか同い年らしいじゃない」

「幻の錬金術の船。おとぎ話だと思ってた」


 二人からすると、アレットは特別な人間に見えるらしい。地球で言う仙人や地底人のような、存在を否定しきることはできないが会うこともない存在、といったところか。

 アレットの故郷であるルプス号は、千年前に大多数の船員が人間社会に移り住み神代の時代から培ってきた知識と技術を伝えたと記録にある。船を降りた者以外はすぐに海に戻ったため、その降りた者たちがどのようなこともしたのかは不明だったが、聞いてみる限るでは大層なことをしでかし、悲惨な末路を辿ったようだ。


 五歳になるまでは一般的な家庭環境だったソフィアが言うには、千年前に世界中を巻き込んだ戦争があったという、おとぎ話や建国神話があるらしい。そしてその中心にいたのが、ルプス号から人間社会に渡った者たちだ。


 寝物語に聞くようなおとぎ話の一つであるためソフィアも正確には覚えていないようだが、なんでも千年前に神話級のマジックアイテムを大量に所有する国が突如として生まれたらしい。その国は世界で最も裕福で強大な力をもつ国へと成長し、他国に対しても惜しみなく援助を行い、神話級のマジックアイテムが世界中に散らばり世界全体が、最も幸福な時代に突入したらしい。

 しかしある国が世界を平和にしたはずの技術を、今度は戦争に利用したらしい。その国は神話級のマジックアイテムを創り出した技術者たちを言葉巧みに騙し、戦争に使えるものを作らせたとか。


 そうして世界大戦が起こり、世界中の国々は滅びた。新しい国が復興してからその技術者たちはこの世で最も罪深い戦犯として処刑されたのだそうだ。


 それを聞いたアレットは、特に何も思わなかった。話自体は悲惨なものだが、遠いご先祖様がひどい目にあったという怒りや悲しみは感じなかった。他人事のようだが、自分が生まれるはるか前のことなのだから、今の自分が何かを感じることは無いようだと自己分析した。


 彼らは千年たった今でも謎に包まれているが、錬金術がはるかに発達した船で生まれ育ったということは伝わっていて、今ではその故郷は幻の錬金術の船と呼ばれているらしい。


アレットとしては、あくまで故郷が優れているのであって、自分が優れているわけではないと考えているが、二人にとっては幻の船の一員だというだけで特別なことらしい。


「しかし、よくこんな家を作りましたね。」


 話が途切れたタイミングで、ずっと気になっていたことをきりだした

「そう?そういえばそうね。1年くらい住んでいるから実感がもう薄いのよね」


アレット達が集まっている場所は、二人が寝床にしている岩山をくり抜いて作った洞窟だ。モアナが岩盤に拳で穴を開け、ソフィアが土属性魔術で岩を整え居住スペースを作ったらしい。土の壁や床には木の葉を編んで作った布を敷き詰め、外には原始的で家庭菜園程度の規模だが畑もある。

まさに山岳地帯に暮らす少数民族といった様子だ。


最初はもう少し文明的な家を作れやしないかと思ったが、アレットのように生産系スキルを有していないのに住居を作り出したのだから、十分だろう。実際生産系のスキルを持っているとはいえ、自分では家を創れる自信は無い。


「それで、今回挑戦するダンジョンはどんな所なんですか?」


二人との会話は新しい友達ができたようで楽しいが、いよいよ今回の目的であるダンジョンの話に移った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こいつらそだった環境がアレなので 常識のさがありそうね
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