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78 英雄のスキルについて尋ねる

『はい。こちらコンステレーション クエスト オンライン問い合わせ窓口です』

「どうも。ちょっとスキルのことで聞きたいんだけど」

『はい。どの様なご質問でしょうか?』

「えっと、スキルの使い方、効果がわからない」

『何のスキルですか? またそれは、所持しているスキルですか?』

「うん。俺の持っている【英雄】ってスキルについて教えてほしいんだ」


 初めからこうすれば良かったんだよ。


『【英雄】ですか』

「そう」

『そのスキルは、具体的な説明するのがとても難しいのです』

「難しい……?」

『はい。ご説明を試みますので、しばらく、お付き合い頂いても宜しいでしょうか?』

「ええ」


 そう言って、何かを操作していた手を止め、俺を見据えるオペ子。


『英雄。ハルシュ様は何を想像されますか?』

「何を? ……人物で答えれば良いのかな?」

『思ったままで結構です』


 英雄……か。


 なんだろう。


「悲劇の英雄、源義経。

 日本一のつわもの、真田幸村。

 聖女ジャンヌ・ダルク……」


 なんとなく思う浮かんだ名を上げてみる。

 神話であれば神殺し、竜殺しなどもあるな。

 あとはー……。


『英雄。

 そう一言で言いましてもその対象は様々です』


 俺の答えに何故か、満足したような笑みを浮かべながらオペレータが続ける。


『しかし、それら全てに共通していることがある、と私共は考えます』

「共通?」


 なんだろう。

 後に起こる悲劇、か?


『それは、言葉です』

「言葉?」

『はい。

 英雄は、その言葉、あるいは時としてその行動で人々の心を揺り動かします。

 そして、その事を人々が語り継ぐのも、また言葉です』


 まあ、そう言う見方もあるだろう。

 てことは。


「このスキルは、人を動かす力がある、と?」


 しかし、俺の直接的な質問に答えはなく。


『英雄とは、その人物単独で成るものではありません。

 結果として、語り継がれるのは一人かもしれません。

 しかし、その活躍の裏にはその人物を支えた、あるいは導いた、また、時にはそれを遮る、そう言った者たちが居てより輝くのです。

 そして、それらを繋ぐものもまた、言葉である、そう考えております。

 また、どんなに偉業を為した所で、それを語り継ぐものが居なければその英雄は存在しないと同じです。

 更に言うならば、語り継がれている、それ自体が英雄の証とも言えます。

 そこには、実在したか、虚か実かということは、大きな意味は無いのではないでしょうか』


 今日は、随分と雄弁だな。


『さて、では、【英雄】のスキルとは何か。

 それはハルシュ様自身の行動、そして、語られる物語。

 それによりその効果が得られる物です。

 このゲーム内に於いても極めて特殊なスキルとなっております』


 それは……。


「つまり俺は、今持っている【英雄】スキルの本当の効果の恩恵を受けるに足る資格が無い、と。

 そういうことかな?」

『そういう事です』


 はっきり言ったな。オイ。


「どうすれば良い?」


 その問いにオペレーターは首を傾げ笑顔を一つ。

 いや、そこははっきり答えてくれよ。


「折角こうやって言葉を繋いでいるんだ。

 そこに、導き手としての言葉があっても良いと思うよ?」

『残念ながらプレイヤー様を導くのは私の役目ではありません』


 そっすか。


『ですが、ハルシュ様の思い描く英雄像。

 その通りに行動すればよろしいかと』


 俺の思い描く英雄像……?


 ……無いなぁ。

 うーん。

 英雄ねぇ。

 フィクションしか思い浮かばないな。

 さっき上げた歴史上の人物達はみな悲運の最後を遂げている。

 ま、別に誰かをなぞる必要は無いか。


『先ほども言いましたが、英雄は、その人それのみで成り立つものではありません。

 例えば、先ほどハルシュ様が上げていらっしゃいました源義経ですと、その家来となる武蔵坊弁慶との戦い、戦での華々しい活躍、兄である頼朝との対立。そして、最期。そう言った出来事の物語が彼を英雄たらしめて居るのです。

 戦いに勝つも負けるも一人では出来ぬ事です』


 ふーむ。

 取り敢えず、一日二日で何とかなるもので無い事は分かった。


「わかった。いや、分かっては無いけど。また、聞きに来ると思うよ」

『はい。ハルシュ様に星々の導きのあらん事を』


 ひとまずこれで良いか。

 閉じられたウインドウから、窓の外へ目を向ける。

 先程まで、火の様な夕焼けを見せていた空は、その炎の勢いを弱め暗い夜空に変わろうとしている。


 はあ。

 こんなよくわからないスキルだったとは。

 そりゃ、早々に退場するはずだよ。


 ……そうか。

 早々に退場する程度のスキルって事だったんだよな。

 そこまで考えが至らないままジルヴァラに交渉持ちかけたのは、失敗だったな。


 まぁいいか。

 そのお陰であいつと風呂に入ったし。


 ドアが外からノックされる。


「はい」

「ハルシュ、そろそろ着くそうです」

「わかった」


 さ、真珠のお姫様との再会だ。


 ◆


 イベントフィールドへの移動は、ヴァルゴ王国の用意した専用の飛空艇。

 リーザ達はヴァルゴ王国の女王直々の依頼によりセーレ討伐へ赴いたのだ。

 それに、ヒーラーとして俺も駆り出された訳だ。

 ついでに、少女も。


「此度の働き、ご苦労でありました」


 ヴァルゴ王宮、謁見の間。

 王座に座るのはヴァルゴ女王。

 その顔は、ベールに覆われていて、表情は見えない。

 しかし、肘掛けに置かれた腕。

 その僅かに見える手は病人を思わせる程に細く。

 あるいは、本当に病人なのかもしれない。


 その後ろに控えるのは真珠姫。

 満足そうな顔で俺達を見ている。


「リーザ、ウミ、ジルヴァラ、獅凰、度重なる活躍、見事です。

 そして、ハルシュ、アリアシア、其方等も力を尽くしてくれた事、感謝しています」


 静かに女王が続ける。


「リーザ、先の話、良い返事を期待しています」

「女王様。私達はエルア姫様の友人としてならば力を尽くします。

 そこに、身分は不要です」


 それを、やんわりと否定するリーザ。


「そうですか。

 ですが、私達は貴女方を何時でも歓迎します」

「もったい無いお言葉。身にあまる光栄です」


 頭を垂れる四人。


「そして、ハルシュ。

 其方も我が国に仕える気は無いと聞いています。

 変わりませんか?」

「はい」

「獅子王に義理立てですか?」

「いえ、そういう訳ではありません」

「よもや、獅子王に言い寄られておる訳ではありますまい?」

「滅相も無い」


 それは、隣の娘です。


「私は、すでに守るものを誓い立てておりますので」


 そう言う話になりそうだから来たく無かったんだよ。


「そうですか」


 そうですよ。


「女王様」

「何でしょうか?」

「今回の討伐、ここにいるハルシュがいなければ皆生きて戻れなかったでしょう」

「そうですか」


 やっと勧誘が終わった所でウミが女王にオレの事を売り込む。

 何で?


「聞けば、ハルシュはギルドでの身分を凍結されていて、そして、それは全天二十一の王による決定との事。

 それを取り消していただけませんか?」


 おう?

 ウミさん、そんな事打ち合わせして無いですよ?

 てか、よく知ってたな。

 俺のギルド資格が凍結されてる事。


「私よりも、お願い申し上げます」


 ジルヴァラが続く。

 あ、ジルヴァラが言ったのか。


「あいわかった。

 それについては、折を見て掛け合ってみよう」


 マジか!


「ありがとうございます」


 深々と頭を下げる。

 これで配達仕事がまた出来るようになるといいな。


 ◆


 さて、祝勝会。

 なんか、乙女乙女した、すげーファンシーな店らしい。

 そして、更に何人か加わるらしい。


 よし、ここは逃げよう。

 そろそろ米が食いたい。

 だから、他の島に米を探しに行こう。


「じゃ、俺はここで。

 アリアシア、明日迎えに来る。

 宿代、持ってるよな?」

「え、大丈夫ですけど、食べに行かないんですか?

 どこへ?」

「ちょっと探し物があるんだ」


 和食屋。

 途端に表情が曇る少女。


「大丈夫だよ。戦いに行く訳じゃ無いから」

「ほら、アリア、行くよー!

 ハルシュ、今日はありがと!」

「いや、こっちこそ」

「ハルシュさんのおかげで思ったより簡単に倒せました」

「それは、ウミの分析のお陰だろ」

「へへへへー!

 攻略情報、一般公開しても良いかい?」

「俺は構わないけど。てか、お前が発見したんだ。好きにして良い。

 あ! 動画は表に出すなよ!」

「わかってる! ありがと! 気を付けてねー!」


 五人に手を振り見送る。


 後ろ髪を引かれる様にチラチラと少女が振り返るが、やがて人波の中へと消えて行った。

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