48 花を食う
~【スピカ】 エリア:ヴィルゴ~
ヴィルゴは代々、女王が治める国であり、
スピカには白亜の美しい王宮が置かれている。
「!?」
「すごーい」
「綺麗!」
「かわいー」
「食えるの? これ」
テーブルの上に並んだ料理。
その感想である。
少女に至っては、驚きで声すら出ていない。
赤、ピンク、紫、オレンジと華やかな色が皿の上を賑やかす。
エディブルフラワーと言うらしい。
見た目は非常に愛らしいそのスイーツ達だが、食べると実は……。
なんて事は無かった。
少し、独特の風味はあるが、まあ食える。
見た目は非常に愛らしい五人組だがその中身は……な、周りを囲む人物たちとは対象的である。
かしましい声で感想を述べ合う四人。
昨日、ウミと約束したみんなで食事。
その為に、わざわざ乙女座までやってきた訳で。
船を乗り継ぐのは馬鹿らしいと、わざわざ俺が二往復もして、ウミとジルヴァラと少女を運んで。
ま、俺が撒いた種なので仕方ないが。
それにしても、「面白い人いた?」「あんまり」「良い人は?」「もっといなーい」そんなガールズトークが耳に入る。アウェイ感半端無い。
半端無い!
◆
コーヒーを飲みながら、女子達の声を右から左へ受け流しながら、さて、この先どうしようかと考える。
まず、金。
ギルドで働き口が無い以上、その他の金策を考えねばならない。
定番なのは宝探しかとか、アイテム生産販売とかか。転売は釘を刺されたなぁ。
他にアテが無い事も無いのだが、手を闇に染めるのは……まだ早いだろう。
お宝求めて航路の無い島でも巡るか……?
「ハルシュさんは、どうするんですか?」
ん?
「何が?」
聞いていなかった会話の矛先をリーザが向けて来た。
急にボールが来ても反応出来ませんよ。
「えっと、あれ、アンドレマリウス」
イベントか。
「検討中」
正直にそう返す。
横で少女が小さく「アンドレマリウス……?」と呟いた。
「え? そうなんですか? 真っ先に行くと思ってました」
「突撃はリスクが高いよなぁ」
「あら、随分弱気ね」
魔王が悪戯っぽい笑みで挑発する。
「あの……アンドレマリウスって?」
そこへ少女がおずおずと疑問を口にする。
「近々現れるそうだ。知ってる?」
そんな訳無いだろうと思いながら、少女に問う。
「はい……おそらく……」
しかし、少女からは意外な返答。
「え? 知ってるの?」
「はい。以前、父の書物で見た名前だと思います。…………不死者です」
「何!?」
下を向きながら答えた少女に、俺が思わず立ち上がる。
「いえ、見間違いかもしれません」
怒ったと思ったのか、少女は俺の顔を見上げ、必死に首を振って否定する。
「いや、怒って無いよ。ありがとう」
少女の頭に軽く手を乗せる。
「どうしたの?」
事情のわからないであろう三人を代表してのウミの問い。
「このイベント、危険だ」
椅子に座りながら三人に言う。
「どういう事?」
「相手は、不死者、らしい。不死者には通常攻撃が効かない」
「は?」
「魔法は?」
「ジルヴァラ、その霧、魔法も防ぐよな?」
「ええ。ある程度は。限界はあるでしょうけど、試した事もそんな相手に会った事も無いわ。
え? この力が関係あるの?」
「近しい存在だそうだ」
「ちょっと待ってよ。そんな敵、どうやって倒すのよ?」
「さあ? 俺の槍みたいな魔法の武器か、リーザの切り札。それと、ジルヴァラの力もかな」
「いやいや、そんな、だって開始まだ一カ月ちょいよ?」
「そう思うなら行けば良い。俺は罠だと思う。大体そんな、『序盤だから弱い敵』、見たいな常識的なゲームデザインか?
LPと引き換えに桁違いの火力を手に入れたり、偶然伝説のアイテム与えられたり。スキルは金次第。考えたらまともじゃ無いだろ?」
俺の問いに、三人から返事は無い。
「危険なら、離脱で帰れば良いじゃ無い」
間をおいて、ジルヴァラが言う。
「離脱が出来ればな。それが出来ないフィールドもあるんだよ」
「え?」
「……不死者の城とか」
小さな声で、そう続ける。
再びの沈黙。
「私、約束しちゃった……」
と、リーザ。
攻略組の誰か、か?
「事情を伝えれば良い。ついでに相手も止めてやれ」
「そうですよね……」
歯切れの悪いリーザ。
「死にたい奴だけ行けば良い」
俺は行かないから。
◆
すっかり暗くなってしまった食事会は、そのままお開きとなり、船で戻ると言うウミ、そして、途中まで一緒に行くと言うリーザと別れ、魔王を背負い、少女を抱き抱え再び来た空を戻る。
別に思い過ごしならそれで良い。
後々笑い話にすれば良いだけなのだから。
◆
翌、昼の日。
ジルヴァラはジジイを雇い、レベル上げに出かけた。
俺は少女と歩き、そして、少女が飛ぶのを見守る。
「あのジジイ、最低ね」
戻って来たジルヴァラが、そう吐き捨てた。
◆
翌、夜の日。
ジルヴァラは調合。
その様子を少女が真剣な眼差しで見守る。
俺は夜の狩りへ。
◆
翌、昼の日。
ウミが戻る。
ジルヴァラに無理矢理狩りに同行させらせる。
「願う・冷気は矢の如く」
得意げに放った彼女の魔法は、迫り来る狼の頭部に突き刺さり、その標的を消滅させた。
「どう?」
勝ち誇った様なジルヴァラ。
最上級のドヤ顔。
「ふーん。コントロールはついたのか」
「威力もよ!」
俺は、軽く跳躍し、彼女から25メートル程離れる。
「撃ってみ?」
右手に槍を持ち、左手の指をクイクイと、曲げる。
「正気?」
「威力が上がってるか試してやる」
「知らないわよ?」
「舐めんなよ?」
「良いわ。覚悟なさい」
ジルヴァラも割とノリノリである。
扱いやすい。
「願う・冷気は矢の如く」
彼女の声と共に振るわれた杖が、氷の矢を空間に作り出す。
微かに黒い霧を纏うそれは、一瞬で加速し、俺に向け迫り来る。
一直線に。
以前より、ずっと早い!
「魔を払い消す!」
槍の一閃。
その穂先に弾かれ、砕けた氷の矢は、しかし、以前と違い、砕かれても消滅しない。
礫となった氷が、軌道を逸らされつつも俺の体に突き刺さる。
急所は外したが、脚部の僅かな痛みがその攻撃を食らった事を知らせる。
「お見事……」
そう言って、膝から崩れ落ち、そして地面にうつ伏せに。
「ハルシュ!!!」
慌ててジルヴァラが駆け寄ってくるのがわかる。
「なんてな」
笑いながら上半身を起こす。
極めて古典的な悪戯。
が、その向こうのジルヴァラの顔を見て、今度は俺が慌てる。
一瞬、大きく目を見開いた後、その場にしゃがみ込み何も言わずに泣き出してしまった。
……ミスったなー。
ハルシュ Lv.19
筋力値:21
魔力値:21
敏捷値:21
装備:
【英雄の槍】
【魔導銃・喇式】
【ミスリルスケイル】
【大魔導士のローブ】
セットスキル:
├[1]【飛行】Lv.1
│└─【指南】Lv.1
├[2]【英雄】Lv.1
│└─【銃】Lv.1
├[3]【槍】Lv.2
│├─【防御】Lv.1
│└─【魔法防御】Lv.1
├[4]【観察眼】Lv.2
│└─【暗視】Lv.1
├[5]【超反応】Lv.2
│├─【気配察知】Lv.1
│└─【魔力察知】Lv.1
├[6]【神聖魔法】Lv.1
└[7]【離脱】
所有スキル:
【回復】Lv.1
【夜目】Lv.1
【看破】Lv.1
【恫喝】Lv.1
【拷問】Lv.1




