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41 リーザが知り合いを紹介する

 魔法のスキルを見に行くというジルヴァラとウミ。

 そんな二人と別行動で、俺とリーザと少女は街中を散歩する。


「なんか、武装した人が多いですか? 以前より」

「ちょっと物々しいな」

「プレイヤーが増えたからですか?」

「いや、NPCも多い」


 街を行き交う人々を見ながら俺とリーザがそんな感想を漏らす。


「アリア、疲れてない?」

「大丈夫です」


 時折、リーザが少女を気遣う。


「後ちょっとでお店だから」

「はい」


 リーザの言葉に、少女の顔が少し明るくなる。

 その様子に、俺は一抹の不安を覚える。

 食い過ぎ、の様な気がする。

 いや、まだまだ全然線は細いのだが。


 ◆


「ハルシュさんと、アリアシアちゃんです」

「はじめまして」

「で、こちらがロックさんとアンドレイさん」

「宜しく!」

「この前はどうも」


 リーザが、是非会わせたい人がいると言うので来てみれば。

 闘技大会で見た大剣使いの大男と俺が準決勝で下した細剣使いである。


「魔王と取引したそうじゃないか」

「ええ。悪くない取引でしょう?」

「その結果、強力なコンビが出来上がった、と言う訳ですね」


 ロックの問い掛けに、笑みを浮かべながら返す。

 それにアンドレイが涼しい顔で返す。


「それで、君はどこまで進んでるんだ?」

「何でそんな事を?」

「いや、スマン。こっちも頑張って攻略しているわけだよ。なので、目標とすべきが何処なのかが気になってな」

「なるほど。行くだけなら、いて座まで。

 とは言えソロなんで、街から出てないけど」

「そんな先まで」

「でも、行って帰ってくるだけにしては随分と遠くまで行きましたね」

「配達の依頼ついでに。結局船賃で赤字なんだけど、その分、店の品揃えは上がるから」

「その銃もそこで?」

「それは自分たちで確かめてみては?」

「だ、そうですよ」

「なるほど!」


 何がなるほどなのか。


「さて、俺達の紹介が中途半端だったな。

 実は頑張って攻略していると言ったの嘘じゃない。ひたすら前へ前へ、そう言う仲間たちと今グループを組んで進んでいるんだ。

 このゲーム、今のところは所謂ギルドやクランと言ったシステムが用意されてないので、まあ、言ってしまえば口だけの関係ではあるんだが」

「信頼、ですよ。言い方が雑すぎます」


 すかさずフォローに入るアンドレイ。


「とは言え、LPは有限。初見の敵なら情報も無い。どうしても慎重にならざるを得ない。

 必要なのは、頼れる仲間、と言う訳だ」


 そう言って、リーザの方を見るロック。


「実は彼女には何度か助けて貰ってる」


 軽く笑顔を浮かべるリーザ。


「そういう訳で、強い仲間が欲しい。

 いや、グループに入れと言っている訳じゃない。

 そもそも、君は入れることが出来ないしな」


 ん?


「ウチのグループは女人禁制で野郎ばかりだ」


 汗臭!


「野郎の馬鹿なノリで回っている」


 の割に、隣のアンドレイさんは知的なクールタイプに見えますが。


「ただ、それでもしんどい場所はいくらでもある。そういう時にたまにで良いから力を貸してくれると助かる」

「はあ……」

「そうやって、手に入れた攻略情報はなるべく後発のプレイヤーたちにも公開して行きたいと、そう思ってるんだ」

「その点は貴方とは考えが違うかもしれませんね」

「いや、別に公開したいならすればいいと思いますよ。自分に取って不利益でなければ」


 問題は、何を利益、不利益とするかだ。

 彼らは、その情報の対価として、賞賛や羨望を求めているのだろう。

 俺だって、それが欲しく無いわけではない。

 ただ、LPの残数を考えると慎重にならざるを得ないだけだ。


「でも、何で考えが違うと思っていて、そんな勧誘を?」


 信頼など微塵も無さそうだ。


「君は魔王を救った。そうだろ?」

「え?」

「集団PKの的になっていた魔王を助け出し、その場にいた千人を返り討ちにしたそうじゃないか!」

「いや、かなり尾ひれが」


 千人も居ない!


「熱いじゃないか! 何で俺にも声をかけてくれなかったんだ!」


 面識ねーし。


「という訳で、すっかり貴方のファンになったみたいですよ」


 やや冷たい目を寄越すアンドレイ。


「うーん、まぁ、良いです。ただ、俺は自分の命が惜しいんで、危なくなったら何を捨てても離脱します」

「そうか! わかってくれたか!」


 この人、俺の言葉の後半、耳に入ってないな?


「では、所謂レイドボスのようなそう言う物に向かう時には是非お声がけさせて貰います。もちろん、無理にとは言いませんが」

「はい。その時はよろしくお願いします」

「貴方の腕は、信頼していますよ」


 話をまとめたアンドレイさんが、最後に爽やかに微笑む。


「おいしいか?」


 俺達の話の横で、三つほどドーナツをやっつけて、そして四個目に手を伸ばそうとしている少女にいきなりロックの矛先が向く。

 てか、食い過ぎだぞ。


「あ、はい。美味しいです」


 急に話しかけられ、戸惑いながら返事をする少女。


「そうか! いっぱい食べろ! そんな細い体じゃ見てる方が心配になるからな!」


 そう言って、ロックは剥き出し小麦色の二の腕を曲げて力こぶを作ってみせた。


「細い人はお嫌いですか?」


 そのロックに、アンドレイが問い掛ける。


「太く健康な肉体。それが美しいんだろう!」


 もう片方の腕も曲げ、力こぶを作る。

 そのロックの腕と、華奢な自分の手首を何度も見比べるアンドレイ。

 そして、少し寂しげな目つきで小さく息を吐く。


 ……え。


 いや、俺の思い過ごしだろう。

 きっと、そうだ。


 ◆


「悪い人たちじゃないんですよ。正義感もあるし」


 ロック達と別れた後、リーザがフォローを入れる。


「ま、悪い人じゃなさそうだけど」

「是非、今度一緒に行きましょうよ」

「無茶しないって約束できるなら行くよ」

「はい。もう無茶はしません」


 しそうだなー。


「さて、散歩の続きをするぞ。食べて、歩く、だ」


 そう、少女に言う。


「すいません。散歩はします。でも、ちょっとだけ休ませて下さい」

「どうした?」

「お腹が、痛いです……」

「何!?」

「大丈夫?」

「食べ過ぎで、苦しいです……」


 そりゃ、ドーナツ六個も食べれば苦しくなるだろうさ。


 ◆


 翌日、夜の日。

 三人は街の周りで狩りを。

 俺は相変わらず少女を歩かせる。


 そして、別れ。


「じゃ、ここで一回お別れですね」


 港でリーザが言う。

 彼女はここに残り、暫くロック達や、他のフレンドとこの辺りを攻略していくのだと言う。

 偉そうに一人前にとか言っていたのはどの口だろう?

 俺達四人は日が昇る前にディアデム行きの船に乗り込む。


「無理すんなよー」

「はい。命を大事に、ですよね」

「何かあったらすぐ呼んでねー。便利な乗り物でひとっ飛びだから」

「それは、俺のことか?」

「ふふ、遠慮なく呼ばせてもらいます」


 そして、リーザはジルヴァラに右手を差し出す。


「レベル上げと、魔法、頑張ってね。また、一緒に狩りに行こう」


 ジルヴァラは、その手を握り返し、そして、左手も添える。


「リーザも。無茶しては駄目よ。誰かを庇うなんて貴女がしなくても良いのだから」

「大丈夫。そんなに心配しなくても」

「いえ、心配するわ。貴女にもしもの事があったら皆悲しむのよ。私だってその一人……」

「ジル……」


 リーザの手を両手で包み込むように握り直し、そして、一歩近づき目を潤ませながら言う。


「何かあったの?」


 小さな声でウミに尋ねる。


「さっき、リーザがジルをかばって左手ふっ飛ばしたのよ」

「ああ、それでまた片腕になってたのか」


 俺が再生させたけど。


「それ以降、あんな感じ」

「あのキャラ、放っておいて良いのか?」

「いやー、リーザもリーザで満更で無さそうだし」


 二人の背景に、花が見える……。


「次は、お前だな」

「うーん……困ったな」

「それか、俺」

「それは無いんじゃない?」


 何で!?

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