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40 蟹座を少女と歩く

 街の周囲で魔法を披露すると言うウミとリーザとジルヴァラを送り出し、少女と散歩に出る。

 すぐ横を川が流れる街。

 その川は、やがて滝となり島の淵から下界へ落ちて行く。

 風がその滝を散らし、島の下に大きな虹を架ける。


 残念ながら今は夜なのでその様子は確認出来ないが、昨日、少女を抱えこの島に来る時に夕焼けの中にかかる虹が確かに見え、それに少女は感嘆の声を上げた。


 露店で、カニの形をしたパンが売られていた。

 少女が珍しそうに見ているので二つ買う。


「ありがとうございます」

「気にしなくて良い」


 君の父上から、相応の貴金属を頂いてるからな。

 そして、それはほぼスキルに消えたのだが。


「飛び方、もしかしたら本当に教えられるかもしれない」

「え?」


 パンを食べながら、そう、少女に告げる。


「本当ですか?」

「多分。でも、ここだと人が多いからコル・カロリに戻ってからにしよう」

「はい!」

「その前に色んな町に行っても良い。どうする?」

「早く、教えて欲しいです」

「そうか。飛べるようになれば、その後好きなだけ観光に行けるからな」

「そうですね」

「どこか行きたいところでもあるのか?」


 パンを食べ終えた少女が、その問いに、星空を眺めながら答えた。


「ハルシュ様と姉様が行った先。そこへ私も行ってみたいのです。あの方は最期に何を見たのか……」


 寂しげに笑いながら。


「英雄は、何処へ行ったのか知ってるのか?」

「ハルシュ様は姉様と、空高く、あの月へ向かって飛んで行きました」


 ……月は多分無理だ。

 その前に寒くて、死ぬ。


「月、か」

「はい」

「ウサギは居るだろうか?」

「え? 月にはウサギが居るのですか?」

「俺の故郷では、そう言う言い伝えがあった。月ではウサギが餅つきをしている、と」

「餅つき?」

「あ、餅を知らないのか」

「すいません。存じません」

「米を潰して、粘りを出して、丸めたものだ。甘くして食べたり、汁の中に入れて食べたり。

 材料があればウミが作れるかな」

「それは、とても美味しそうですね」


 確実に食欲が増してきてるな。


 ◆


 蟹。山盛りの蟹。

 そして、顔ほどもあろうかと言う海老。


 テーブルを上に置かれたそれらを、無心にやっつけていく三人。

 ウミとリーザは、殻を剥いてかぶりつく。

 ジルヴァラは、丁寧に身を皿に出している。


 性格が出るなぁ。


 その様子を、蟹は初めてという少女が、少し引き気味に見ている。


 俺は取りあえず、デカイ海老の尻尾にかぶりつく。


 誰が頼んだのか小海老の唐揚げのような物が運ばれて来る。

 そんなの頼んだら、ビールが欲しくなる!


 更に海老のアヒージョ。

 そんなの頼んだら、ワインが欲しくなる!!


 極め付けは、生牡蠣。

 そんなの頼んだら、日本酒が欲しくなる!!!


 さすがは、魚介の町!


 ……牡蠣って海産物だよね?

 海は何処に有るんだ?

 気にしない!

 美味けりゃそれで良い!


「すごい……ですね」


 呆気に取られる少女。


「早く食べないと無くなるよ」

「え、ええ……」


 そう言って、少女は海老の唐揚げをフォークで一つ口に運び、二度、三度咀嚼し、そして、片手で口を抑え部屋から飛び出して行った。


 ……。


 小海老の唐揚げを口に入れ、そして、なにが起きたのか見当をつける。

 まさか、こんな虫を食っていたとは。


「ちょっと見てくる」


 突然の事に呆然とする二人と、椅子から立ち上がりかけたウミを制して、追いかける。


 青い顔でトイレから出てきた少女に声をかける。


「出ようか」

「……はい」


 ◆


「紅茶でも飲むか」

「……はい。すいません。皆さんで楽しく食べていたのに」

「いいよ。気にしなくて。食べようと思えばまたくれば良いんだから」


 ウミに先に店を出る旨、メッセを送る。

 存分に蟹を楽しめと一言添えて。


 その後、心底嬉しそうにパフェを食べる少女を眺めながら、食事が終わったら次の島に行くことを決める。


 ◆


 翌、昼の日。


 少女が寝ている、そして、他の女性陣三人もログアウトしているウチに、少し狩りに出かける。

 新しく手に入れた、【英雄】。

 しかし、それは言葉と裏腹に、直接的に戦いに活かせるような物では無いらしく、その特性も、能力も掴みかねている。


 おそらくは、放った言葉に説得力があるとか、そんな類の様だ。

 事実、この英雄に恫喝を組み合わせ放った言葉は、俺の予想以上にクズ共を黙り込ませた。


 それが分かった所で、効果的な使い道など思いつきもしないのだが。


 他のプレイヤーを避けるように上から適当な狩場を探していると、珍しくNPCの集団が平野に出ているのが目に入った。

 一様に同じ格好で武装しているところを見るに、軍隊だろうか。

 興味を覚え、少しだけ観察。

 どうやら、訓練のような物を行っている。

 普段から定期的に行っている物なのか、それとも、何か、この先軍事力を使うような出来事が起きうるから慌てて支度を始めたのかは判断がつかなかった。

 ただ、そのバラバラの練度から後者の可能性が高そうだと、なんとなく思う。


 集団戦闘イベントなんかもこの先あるのだろうか。

 そう言えばこの国は軍事大国と言う設定だったか。


 狩りの前に偶然見かけたその光景に、なんとなく、きな臭いものを感じつつその場を後にした。


 その後、槍を振り回し、一つレベルが上った所で引き上げる。


 宿に戻り、当然のように風呂へ。

 大浴場には、巨大なライオンの像が置かれており、その口から大量のお湯を吐き出している。

 ちょっとその下で打たせ湯を楽しんでみたり。


 死んだ知り合いを追いかけたいと言った少女。

 彼女と、英雄と、その恋人。

 その間に一体どんな物語があるのだろう。


 酒場で時折見かける吟遊詩人ならば、その物語を知っていないだろうか。

 それが真実とは限らないだろうが。


 少しだけ、少女の事に興味が出てきた。

ハルシュ Lv.18

筋力値:20

魔力値:20

敏捷値:20


装備:

【英雄の槍】

【魔導銃・喇式】

【ミスリルスケイル】

【大魔導士のローブ】


セットスキル:

├[1]【飛行】Lv.1

├[2]【英雄】Lv.1

│└─【銃】Lv.1

├[3]【槍】Lv.2

│├─【防御】Lv.1

│└─【魔法防御】Lv.1

├[4]【観察眼】Lv.2

│└─【暗視】Lv.1

├[5]【超反応】Lv.2

│├─【気配察知】Lv.1

│└─【魔力察知】Lv.1

├[6]【神聖魔法】Lv.1

└[7]【離脱】


所有スキル:

【回復】Lv.1

【夜目】Lv.1

【看破】Lv.1

【恫喝】Lv.1

【拷問】Lv.1

【指南】Lv.1

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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