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35 魔王を連れ出す

 かくして俺は、英雄を手に入れ、そして、魔王を引き連れアルデバランの町を歩いている。

 目指すは、町の外。

 戦闘フィールド。


 あちこちから、赤い視線が突き刺さる。

 うん。

 クズ共も付いてきてるな。


 町からフィールドに出る。

 その瞬間、魔王を抱きかかえ、全力で飛ぶ。

 取り囲む、気配の外へ。


 500メートル程、移動し、そして、後ろに人の気配が無いことを確認して街道に下りる。


「今の……何?」


 しがみついていた魔王を、ゆっくりと街道に下ろす。


「英雄の力だろ」


「何処だ」「こっちだ」「ふざけんな」

 街の方から粗野な声と共に、敵意の気配が近づいてくる。


 魔王絶殺隊。

 一度、魔王にPKを仕掛け、そして返り討ちに合い、そのことを逆恨みする救いの無いクズども。


 俺は魔王の前に立つ。

 クズ共から魔王を守るように。


 やがて、扇状にクズ共が取り囲む。

 その数、百程度か?


「どけ!」「何だ、てめぇは」「すっこんでろ」「殺されてーのか」

 口汚い言葉が飛んでくる。


「我が名はハルシュ。闘技大会の覇者!」


 槍を突き立て、大声で、宣言する。


「聞け! クズ共。お前らが魔王を付け狙っているのは知っている」


 突然幕を開けた劇場にざわつくクズ共。


「だから、ここに魔王を連れてきた!」


 街道から一歩ずれる。

 そこに、魔王が進み出る。

 フードは被っていない。


 魔王と呼ばれた華麗な少女に、別のざわつきが起きる。


「皆さん!」


 魔王が声を張り上げる。


「私が最初に殺してしまった方々には本当に申し訳ないことをしたと思っています!」


 へー。

 中々の演技力。


「とても、許されるとは、思っていません」


 当たり前だーなどとヤジが飛ぶが、続く者は少ない。


「それでもまずは謝らせて下さい」


 そう言って、彼女は街道に膝を付き、両手を地に付き、深々と頭を垂れる。

 下げが甘いようなら上から踏んづけてやろうかと思ったが、その必要は無さそうだ。


「すいませんでした」


 頭を下げながら少女が大声で謝罪。

 もう良いだろう。


 俺は彼女の横に跪き、彼女を立たせる。

 そして、芝居がかった仕草で彼女の膝の汚れを払う。


「私にも、普通にゲームを楽しむチャンスを下さい!」


 俺のプランに無いその台詞、後半は涙声になっていた。

 既に場は静まり返り、こちらに対する敵意はほぼ無い。


 立ち上がり、クズ共の方を向く。


「我は、魔王に忠誠を誓った!

 これが、その証!」


 そう言って俺はローブの前をはだけ、首の奴隷紋を露わにする。


「何だあれ」「奴隷だよ」そんなやり取りが耳に入る。

 一拍置いて続ける。


「忠誠の証として、LP回復薬は魔王に献上した。そして、代わりとして英雄の力を賜った!」


「何?」「やばくね?」そんな反応。

 予想通り。


「これが、英雄の力!」


 軽く、浮かび上がってみせる。


「飛んだ」「すげー」そんな反応。


「今ここで誠心誠意頭を下げた、この健気な少女に、この先も尚、仇なす様な輩が居れば、この槍が世界の果てまで追いかけそれを潰す!!」


 沈静化する、敵意。

「まぁ、先にやったのこっちだしな……」

「謝ってもらったからな……」

 そんな反応がちらほら。


「ふざけんな! 俺は認めねーぞ! 英雄にそんな力なんか無い! ハッタリだ!!」


 しかし、たった一人。

 集団の一番奥。

 初めから変わらず敵意を向け続けるのが一人。


 俺は、集団の頭を飛び越え、そいつの元へ。


「これが、ハッタリだと?」


 見下しながら、問い掛ける。

 周りのクズ共がさっと引いて、そいつ一人、俺の下に取り残される。


「てめえ……ナメやがって!」


 男の手が、剣に伸びる。

 そして、【反撃可】の表示。


 良し。来た!!


 槍の石突で剣を払う。

 そして、そのまま素早く、足を払い、男を転がす。

 剣を持っている右腕、その肩に槍を突き刺し、地面に繋ぎ止める。


 銃を手に持つ。

 それを顔に向け問い掛ける。


「彼女の謝罪は気に入らなかったか?」

「ざけんな!」


 銃で右手を撃つ。

 手首から先が弾け飛ぶ。


「気に入らなかった?」

「うるせぇ」


 明らかに、動揺が見て取れる。

 今度は左手を吹き飛ばす。


「気に入らなかった?」

「……てめぇ、何してやがるんだ?」


 男が顔に脂汗を浮かべながら言う。

 右膝と、左膝から先を吹き飛ばす。


「心に染み入る真摯な謝罪だったよな?」

「……止めてくれ。なんだ……これ」


 仕方ないな。


 俺は地面に寝転ぶクズの、股間に銃を押し付ける。

 あーあ。

 折角の銃がけがれてしまう。


「うわぁぁぁ。やめ、やめて。やめてくれ。もう何もしない。すいません、ごめんなさい。もう二度と現れません」


 涙を流しながら懇願を始めるクズ。

 俺は肩に突き刺した槍を引き抜く。


「そのつら、二度と見せるな」


 そう言って、そいつの眉間に槍を突き刺した。

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