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20 美女の湯で取り乱す

「サプライズ!」

「怖がりすぎですよー」


 笑いながら言う二人。

 改めて自分の姿を見る。

 俺も、彼女たちと同じくバスタオル一枚だけの姿だった。


「ほらーお望みの三人でお風呂」


 ……なるほど。

 そういう事か。

 今、やっと理解が追いついた。


「……びっくりした」


 本当に。


 冷静に考えたら、町の中でPKは出来ないんだっけか……。


 立ち上がり、改めて状況を確認する。

 目の前には、バスタオル一枚を身に纏った美女二人。

 これが!

 温泉イベントと言うやつか!!


 となると気になるのは当然……。


「いや、風呂にタオル巻いて入っちゃ駄目じゃないかな」


 常識である。


「あれ、そういうこと言う?」

「ほら、言ったじゃないですか」

「仕方ないなー」


 仕方ない?

 そう言いながらウミとリーザは自分のタオルに手をかける。


「「じゃん!」」


 掛け声と共にそのタオルを剥ぎ取る。

 そこには、夢のような光景!!


 ではなく、青と緑のビキニ水着姿。


 ……。


 自分の付けているバスタオルを剥ぎ取る。

 中から赤のビキニ。


 なんすか。これ。


「なんすか。これ」


 声に出ていた。


「水着!」


 ウミが答える。

 そんな事は、そんな事は見ればわかるんだよ!!


「水着で風呂に入ったら、それはもう! 風呂じゃなくてプールじゃないか!」


 真理である。


「何で、何で水着なんだよ!!」

「いや、ちょっと落ち着きなよ」

「そうですよ。一緒に湯船に入りましょう」


 そう言ってリーザが、こちらに近寄ってくる。

 普段は鎧に覆われていて分からないが、ふくよかな胸が、布一枚に包まれている。


 しかし!


「ここは、風呂なんだ! 風呂で、水着でした! そんな、そんなの邪道だ!!」

「ハルシュさん……そんな、男の願望のような事を全力で叫ばないでくださいよ……」


 俺の前で、少し困った表情を浮かべるリーザ。


 そして、その場の空気を一変させる一言が。


「だって、ハルシュ、男じゃん」


 ウーーーーミーーーーー!!!!!

 何で!

 何でっ!!

 今!!

 それをバラすんだ!!

 お前はぁ!!

 バカじゃないの!?

 バカじゃないの!?

 もう一回言う、バカじゃないの??


 いや、やっぱりもう一回言おう。

 バカじゃないのーーーーー!!!


 盛大に動揺する俺の前で、リーザはゆっくりと、ゆっくりとウミを振り返る。


「オ、ト、コ……?」


 ゆっくりと、ぎこちなく、そう問い掛ける。

 それに対し、ウミは笑顔で答える。


「うん。いわゆるネカマ」


 再び、ゆっくりとこちらに向き直るリーザ。


 そして、俺の目を見て問う。


「ネ、カ、マ……?」


 その問いに、俺は小さく首を傾げ、満面の笑みを返す。

 いつかと同じ様に。


 次の瞬間、俺の左頬に小さな衝撃が走る。

 そして、姿勢を崩し、浴室の床に崩れ落ちる。


 殴られたぁ。


 見上げたリーザは怒りの表情。


 どうしよう。


 救いをウミに求める。

 俺の視線に気付いたウミが、口だけを動かして、何かを伝えようとしている。


 何だ?


 口の動きをよく観察する。


 お、え、ん、あ、あ、い、お、え、え、あ、ん……?


 何だ?


 お……ご、え、ん、あ、さ、い……ごめんなさい!

 お、え、ね、え、あ、ん……おねえちゃん!


 それか!!


 俺は、再びリーザを見上げ、そして精一杯可愛い声で言う。


「……ごめんなさい。お姉ちゃん」

「いやぁぁ……」


 効果!

 無し!!


 リーザは崩れ落ち、そして泣き出した。


「あの、リーザ……」


 そして、そのまま消滅。

 ログアウトしてしまった。


 ……。


「どうしよう……お姉ちゃん」


 今度はウミに言ってみた。


「正直、スマンかった!」


 いや、聞きたいのはそう言う事じゃ無い!!


 ◆


「いや、どうするよ。マジで」


 湯船に浸かりながら、ウミに問う。


「思ったより動揺してたねー」


 湯気の向こうのウミが返す。

 もちろん、水着は付けたままだ。二人共。


「いや、ホント、何が悪かったのか……」

「ネカマなのが悪い」

「アクシデントなんだよなぁ」

「キャラ作り直す気は無いの? 今更だけど」

「うーん、今更だなぁ」

「だよねぇ。ま、良いんじゃない? ずっと騙せる訳じゃ無いし」

「そりゃ、そうだけど……これで、一緒に風呂に入る可能性は絶たれたなぁ。全裸で」

「バカじゃないのー」


 バカでいいよ。


「でも、実際どう見えるの?」

「うーん、知らないと、口調を悪くして虚勢を張ろうとしてるイタイ子に見えるよ」

「そんな風に見えるのか?」

「私からは」

「そうかー」

「そうね」


 イタイ子か。


「私は! ネカマじゃない!」

「きっしょ」

「何でだよ!?」

「だってネカマじゃん」

「いや、それを言っちゃうと元も子もないだろ?」

「演技してネカマじゃないって言ったら確信犯の嘘つきだよ?」

「いや、そうしなくても結果として騙してる事には変わらないんだよ」

「でもまぁ普通はちょっとは怪しむと思うけどね」

「だよな!!」

「リーザは純情だったのかな」

「ですよね……」


 はー。


「さーてと、私そろそろ出るから」

「ああ」

「大丈夫。リーザは戻ってくるよ」

「何で?」

「勘!」


 そっすか。


 ウミが去り、そして、一人取り残された露天風呂で水着を脱ぎ捨て正しい風呂を満喫する。

 外には流れ落ちる滝が見える。

 景色は最高だ。

 気分は最低だが。


 ま、成るようにしか成らないよな。

 相変わらず貧相な胸を揉みながら、そう自分を慰める。

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