19 目隠しをされる
結局、俺の提案は却下された。
わかってたさ。
でも、言った事に意味がある!
そう思う事にした。
その日、俺は今までで一番遠い島、サジタリウスまで配達に出かけた。
◆
翌日。
昼の日。
今日の行動は昨日の祝勝会の時に既に打ち合わせ済み。
「それじゃ! 出発! いざ、カラへ!」
ウミが元気いっぱいに右手を振り上げる。
カラ、次の町へ。
もちろん途中で戦闘を重ねながらになる。
「おー!」
リーザがウミの呼び声に答え、右手を上げる。
「おー」
俺もそれに倣う。
◆
「この辺で休憩にしようか」
街道と呼べない様な獣道の傍、少し開けた所でウミが立ち止まる。
「了解です! 隊長!」
リーザが敬礼しながら言う。
楽しそうだな。
「リーザ隊員、テントの準備を!」
「わかりました!」
楽しそうだな。
フルダイブ型VRシステム利用の制限。
連続利用最大5時間。
遡って8時間の内、6時間以上利用禁止。
遡って24時間の内、15時間以上利用禁止。
フルダイブ型VRの黎明期、飲食を忘れ、そのまま架空世界から現実へ戻らぬ事故が続き急遽定められた法律。
カラへ行く道の途中でこのVRの連続使用時間の上限に恐れがあるためわざわざキャンプなどを挟むのである。
その際使用するのが『テント』と言うアイテム。
テントの中であれば、ログアウト可能。
しかも、登録者以外出入り禁止。
中は安全が確保されているわけだ。
因みにこの中で離脱を行うと町に戻るらしい。
リーザがテントをアイテムボックスから取り出し、設置する傍らで、ウミがキャンプセットを取り出し火を起こし始める。
なぜ俺が傍観者でいるかと言うと、今日は心ばかりのおもてなしの日、らしい。
二人で急遽、そう決めたらしい。
なんで、戦闘以外は全てお任せである。
「隊長。昼飯はなんですか?」
暇なので話しかける。
「キャンプはカレー! と言いたい所だが残念な事に米が無い」
「なんと」
「なのでバーベキュー、肉多めです!」
「肉!」
「何の肉かは知りません!」
「え!?」
ちょっと待て!
この島に居るモンスターじゃ無いよな?
「聞かなきゃ良かった!」
「言えて良かった!」
まぁ、うまかったけど。
謎肉。
◆
~【カラ】 エリア:カネスヴィナティキ~
カネスヴィナティキの開拓の最前線。
ここから北の島へ旅立ち、そして帰らぬ者も多い。
インターバルを挟み、無事にカラの町へ到着。
今までいたコル・カロリよりも小さく、そして、質素な町。
宿屋があり、武器屋、道具屋がある。しかし、スキルを扱う店は無い。
並ぶ家は、二十軒有るか無いか。そんな町だ。
「ついたー!」
隊長が両手を挙げ喜びを全身で表現する。
「お疲れさま!」
労をねぎらう。
「さ、宿屋でご飯だ!!」
うん。
相変わらずですね。
◆
町に一軒の宿屋で、この町らしい、質素な料理を食べる。
ただ、その味にはウミも太鼓判を押していた。
さて、ログアウト前に露天風呂が自慢らしい風呂に浸かって骨休めをしようかと一人向かう。
……風呂の前に、何故かウミとリーザの二人が居る。
何だ?
「来た」
「ようこそ。美女の湯へー」
……は?
事態が飲み込めず、立ち止まる俺を二人が手を引きそのまま脱衣所へ連れて行かれる。
え?
「よし、じゃ、ちょっと目を瞑ろうか」
とウミ。
え?
「なに?」
辛うじて発した言葉がこれである。
「リーザ、後ろから目隠し!」
「ハイ」
返事と共にリーザが、俺の後ろに周り両手で俺の顔、目を抑える。
当然、何も見えない訳で。
「ハルシュ、着替えるよー。音声認識ー。試着オッケー?」
「え、うん」
ウミの問い掛けに答えると、システム音と共に、身につけて居た鎧の感触が変わる。
全裸ではない。
ワンピース?
「リーザもー」
「はい!」
「で、私も。じゃ、行くよ」
そう言って、ウミが俺の両手を引く。
「え、ちょ」
目はリーザが抑えたままだ。
何も見えない。
ウミが、俺の手を前に引く。
何が起きてるんだ?
……新手のPKか?
ウミに引っ張られ、恐る恐る前に進む。
「……えっと、ごめんなさい」
取り敢えず謝ろう。
「何謝ってんの?」
「いや……、殺さないで」
「大丈夫ですよー」
笑いながらリーザが言う。
「次、段差あるからね」
ウミは俺の手を引き続ける。
どれくらい進んだのだろうか。
「ハイ。ストップー!」
歩みが止まる。
「手、離しますけど目を開けちゃ駄目ですよ? ちゃんと閉じてて下さいね」
「う、うん」
言われた通りに目を閉じたまま待つ。
何なのだ? この状況……。
ウミが手を離す。
途端に不安が押し寄せる。
「え、ちょ……」
「ハイ、良いよ。目を開けて」
「一体何を……」
文句を言おうと目を開けた俺の目に飛び込んできたのはバスタオルを巻いたウミとリーザ。
そして、ここは……風呂か!
「え……っと……」
「「ようこそ。美女の湯へー」」
ウミとリーザが両手を広げ満面の笑みで言う。
「ハ、ハ、ハ……」
俺は、その光景に感動するよりも先に、脱力しその場にへたり込んでしまった。




