14 約束通り胸を揉む
都合、一時間強の船旅を終え、コル・カロリへ到着。
「長旅ご苦労様。レベル上げは明日にしよう。あっちに宿がある」
町を適当に案内しながら宿へ。
チェックインののち、明日のログイン時間を決めそれぞれの部屋へ。
◆
ウミの部屋の扉をノックする。
「ハーイ」
中から答える声。
やや合ってドアが開き中からウミが顔を出す。
「どうしたの?」
軽く首をかしげるウミ。
「契約を履行しに来た」
複雑な顔を浮かべ、そして小さくため息をつくウミ。
「入って」
◆
「本当に来るとは……」
ベッドに腰掛け、そうつぶやくウミ。
ひとまず、部屋にある椅子に腰掛け彼女を改めて観察。
彼女はネグリジェの様な白いワンピースを身に着けている。
そして、その胸元に見える谷間。
推定C、いやDか?
「言っておくけど、先に条件提示したのはそっちだから」
「わかってる。約束は守るよ」
良し。
いい心がけだ。
「言っておくけど、手で触るだけだからね。それもおっぱいだけ。そこ以外を触ったり、それ以上の事しようとしたらすぐ運営呼ぶから!」
「了解」
「服は脱がないよ」
「え!?」
そんな!
「脱ぐとは言ってないから!」
確かに。
いや、それでもまぁ、良いか。
「……分かった。そこは譲ろう」
自分以外の胸。
それも、手応えにない薄い胸でなく、弾力のありそうな双丘がそこにある。
「じゃ、五分ね」
「ああ」
俺は椅子から立ち上がり、彼女に近づく。
蔑む様な目をしているのは気のせいではないだろう。
ま、気にしないけど!
「じゃ……よーい、スタート」
ウミが、そう掛け声を上げると同時に、糸が切れたように彼女の上半身が後ろ、ベッドへ背中から倒れ込んだ。
「ウミ?」
その異様な様子に、近寄って声を掛ける。
そして、その顔を覗き込み、理由が判明する。
表情の無い顔。
一点を見つめる目。
弛緩しきった体。
離席モード。
ログアウトせずに、VRへの接続を遮断する方法……。
あいつ、自分の体だけを置いて逃げやがった!
俺の目に前に有るのは、只のマネキンと化した、ウミの抜け殻なのだ!
「ふっざけんな!!」
◆
「堪能した?」
「ふざけんな!」
五分後、再び戻ってきたウミの一言。
「人形の胸を揉んで楽しいわけ無いだろ!」
「て、言う割に随分楽しんでなかった? あー、ブラ、ズレてる!」
楽しんだよ!
悪いか!
無反応の人形の胸をたっぷり五分間揉み続けたよ!
カチカチだったよ!!
中の人が居ないと、本当にマネキンみたいな触感になるのな!!!
チクショウめ!!!!
いっそ、それ以上のいたずらをしてやろうかと思ったが、どこに目があるかわからず、最悪LPロストの可能性もある。
それは泣く泣く断念した。
まぁ、ネクリジェの隙間から手を突っ込んだのは、禁止されてないからセーフだよな。
「どうだった?」
「硬かった」
「え?」
「離席モードだと、材質設定変わるんだろ……」
「それを、揉んでて楽しいの?」
「楽しいわけ無いだろ!!」
それでも、それでも揉んでたんだよ!!
「ま、これで約束は果たしたから」
「クソ、騙された」
「騙してないじゃん!」
「いいや、詐欺だね! これは立派な詐欺だ!!」
「じゃ、お願い。お姉ちゃんって可愛く言ってご覧よ」
え。
そんな事、俺のプライドが許すわけ無いだろう。
「お願い。お姉ちゃん」
逡巡する間も無く上目遣いで、思いっきり媚びた声で言った訳で。
プライド?
そんなの欲望に比べれば軽い軽い。
「ん。ダ・メ!」
しかし、ウミはゆっくりと、そう拒否をした。
また、騙された!!
◆
「ま、座ってよ」
失意のまま立ち去ろうとした俺に、ウミが椅子を勧める。
そうか。
続きがあるのか。
そうだよな!
「ありがとうね」
ん?
胸を揉んだことか?
お望みならもっと揉めるぞ!
「無理なお願い聞いてくれて」
そっちか……。
「……騙された俺が悪い」
「それについては、何か、すごく申し訳ない事をしたような気分になってるよ。今」
「じゃ、改めて!」
「バカじゃないのー」
バカでも良いよ!
「でさ、君、本当に何者なの?」
「何者って?」
「強盗? 人売り? 運び屋?」
「何だよそれ」
「だっておかしいじゃん。明らかに色々と」
「だから、レアアイテム拾ったんだって」
「まさかチート? なわけ無いか」
ふむ。
信じてないな。ま、嘘なんだけど。
「お前さ、最初に何のスキル取って今LPいくつ残ってるの?」
「教えるわけ無いじゃん」
「それと一緒。教えないプレイ情報もある。そしてそれが生命線の場合もあるんだよ」
「ふーん。じゃ、もう聞かない」
「まぁ、後ろ暗い事はしてないから安心していいよ。共犯で追われるような事態にはならない」
「うん。信じるよ」
「ちなみにリーザの方は?」
「もちろん聞いてない」
「そうか」
三人が三人、それぞれ秘密を抱えている。
そういう事か。
一体何者なんだろう。二人共。
まさか、魔王様って事は無いだろうけど。
無いよね?
◆
ログアウト前に、風呂に入る。
この後の行動を考えながら。
両手が包み込む小さな胸は、しかし、確かな弾力がある。
うん。
さっきのはやっぱり違う!




