12 パンツを見る
そんな生活を四日程続けて、レベルが9まで上がった。
金稼ぎも順調。
明日はレベル二桁に届きそうだ。
今日は何処へ行こうか。
少し先を見に行って来ようか。
行き先を考えながらログインする。
<フレンド登録者からメッセージがあります>
ん?
フレンドは一人しか居ない。
あいつだ。
ホットパンツ。
メニューから確認。
『そろそろご飯をごちそうする気になった?
君に会いたいという人が居るんだけど、どこかで会えないかな?
私たちは今アルデバランにいるよー』
ごちそうする気にはなってないし、俺に会いたいって何でだ?
しかも、アルデバランって遠いじゃないか。
面倒くさい。
『興味ない』
そう返す。
すぐさま返信。
『可愛い女の子だよ?』
……仕方ないなぁ。
◆
「ん?」
わざわざ、アルデバランまで戻ったわけで。
しかし、明らかに鎧が目立つのでマントを羽織ることにした。何が起きるかわからないので外したくは無い。
そして、俺を見たウミの第一声が、「久しぶり」でも「呼び出してごめん」でも無く、「ん?」なのはどういう事だ。
「何、その格好。てるてる坊主?」
「良いだろ。別に」
「私がデコった鎧は?」
「もう使ってない」
「えー。言ってよー。同じ様にしてあげるのに」
「毎回頼むのも面倒だし」
「いや、その格好は許せないな」
「そんな話をしに来た訳じゃ無いだろ?」
さっきからチラチラと目が合う、ウミの横に居る女性。
誰かと思えば、一度街道で助けた片腕の女剣士だ。
腕は治ったみたいだが。
「そうだった!」
「久しぶり。腕は治ったんだね」
「運営の補填で元通りです。あの時は助かりました」
以前は無かった左手を振りながら答える彼女。
「まぁ、立ち話も何だからどこか入ろう!」
◆
「改めてはじめまして。リーザです」
ウミが決めた食事処の個室で、そう自己紹介したリーザは以前とは全く違った格好をしていた。
おそらくウミが装飾した装備であろう。
白銀と濃緑の組み合わされた鎧。
それと合わせるような色合いの盾は、表面に獅子のレリーフが付いている。
スカートの下は濃紫のニーハイソックス。
ウミと同じ様に肩は丸出し。
スカートの中はホットパンツかな。
「ハルシュです。よろしく」
リーザと挨拶を交わした後、ウミに向き直る。
「で、こんな所まで呼び出して、何の用?」
「リーザが君に会いたいって言うから引き合わせたんじゃん!
それにしても、こんなところ、か」
ん?
「あの時のお礼を言いたくて。ウミが知り合いだって言うのでお願いしました」
「ま、その話はその辺にして、食べようか!」
丁度運ばれてきたパエリアをウミが取り分け始めた。
しかし、これを食べようとするとマントの中から鎧が見える可能性がある。
ならば手を付ける訳には行かない……。
「二人はどう言う関係?」
そして、呼ばれた理由がいまいち分からない。
「最近よく一緒に行動してるんだよ」
「なかなかちゃんとパーティ組める人が居なくて」
「あれ? 前組んでた人達は?」
「あの日限りで別れました。もう一週間くらいになります。ウミさんと一緒になって」
へー。
「ハルシュ、食べ終わったら装備品貸してよ」
「え、何で?」
「前みたいにするから」
やっぱそう来るよな。
「うーん、言ったように毎回頼むのも悪いからいいよ」
誤魔化そう。
ウミに渡すと性能がバレる恐れがある。
そうなると当然追求される。
「そっか。ところでさ、リーザの鎧も私が直したんだ。どう?」
「良いと思うよ」
「でしょ? リーザ、ちょっと立ってこっち来て」
「え、うん」
ウミとリーザが立ち上がり、テーブルを回り込んで俺の横に来る。
「でさ、ハルシュに不評だった部分は直したんだよ」
俺に不評だった部分?
「ほら!」
そう言ってウミはリーザのスカートを豪快に捲る。
「え、ちょ、きゃ」
リーザが慌てて抑える。
が、確かにそのスカートの下にある白い三角形の布を俺はこの目に焼き付けた!
そんな俺以上に動きが早かったのはウミだ。
予想外のラッキースケベな展開に硬直する俺に近づき、あっさりと俺のマントをめくり上げた。
「……何、この鎧」
ジト目でウミが問い掛けてくる。
クソ、卑怯だぞ。
◆
マントを外してパエリアを堪能する。
「だから、思わぬレアアイテムが手に入ったから、売って金策したんだって」
そう言う事にしておこう。
「ふーん。それでも良いけど。じゃ武器も買い替えたんだ?」
「そりゃ、まぁ……」
「両方貸して。直すから」
「いや、良いって」
「良くない」
他にプレイヤーが居ない所で活動しているのだ。
ネカマだ何だと気にする必要は無いのである。
「何でそんなに拘るの?」
「そんなムサイ鎧と一緒に歩きたくないから」
「一緒に歩かなきゃ良いじゃん」
「あの、その事なんですけど、実は私達二人とパーティを組んで貰えませんか?」
え?
「何で?」
他にもいっぱいプレイヤー居るじゃん。
「何でって……他に頼れる人が居ないんです」
「うん?」
意味が分からない。
「実はね、私もリーザも、LPがヤバイんだ。だから極力減らしたくない」
ウミが極めて重要な情報をポロリと漏らした。
「ウミ!」
「良いの。言わなきゃ納得しないから」
「そっか……」
「ヤバイって、そんなに死に戻ってるの?」
「そういう訳じゃないんだ」
「じゃ、PK? そんな派手な格好してるから?」
「それも違う」
「実は、私達、キャラメイクの時にLPをスキルのランクアップに使ってるんです」
あ、そういう事か。
「なるほど。アレをやったのか」
「そう。なので極力LPを減らさずに安全に戦いたい。そして、信用できる仲間も欲しい。
そこでハルシュに声をかけたの。納得した?」
いや。
「俺が力になれる保証は無いし、信用なんか無いだろ?」
「でも来たじゃん」
え?
何その自信に満ちた表情。
「そういう訳なので暫くレベル上げの手伝いをして下さい! もちろんタダとは言いません」
「いや……」
嫌だよ。
こっちは二人を信用してないのだから。
しかしウミがこそこそと仮想ウインドウを操作し始める。
<フレンド登録者からメッセージがあります>
確認する。当然ウミから。
『報酬は私のおっぱいでどうだ!』
……は?
『意味わからん』
そう返す。
『三分間もみ放題!』
……バカにするな!
『十分間だ!』
内心の動揺を抑えながらパエリアを口に運ぶ。
『五分間!』
……。
『よし。乗った!』
「ま、困ったときはお互い様だしね。少しくらいなら協力するよ」
二人にそう爽やかに言い放つ。
ウミからは汚物を見るような視線を返されたが。
……先に下衆い交渉を持ち掛けたのはお前だからな!
◆
さて、そうと決まれば色々とやることがある。
「んじゃ、鎧と武器は直してもらおう」
もう、預けてしまえ。
その方が話が早そうだ。
例え鑑定されようとも。
「サンキュー。え、これ、店売り? ……いくらしたの?」
「聞かないほうが良いよ」
ちゃっかり鑑定をしたであろうウミの顔が引きつる。
「で、場所は、そうだな。今俺が拠点にしている島にしよう。まだ他のプレイヤーも居ないし丁度良い」
「どの辺なんですか?」
「レグルスから二つ飛んだ島」
「レグルス? 何座ですか?」
やっぱり星座で言ったほうがわかりやすいんだな。
「レグルスがあるのはしし座。拠点はその北にあるりょうけん座」
「「しし座!?」」
二人が同時に大声を上げる。
「え?」
「何でそんなとこまで進んでんの? 今一番進んでてふたご座って話なのに!」
「えーっと、ほら、レアアイテム拾ったから」
と言うことにしておこう。
「どんだけ金持ちなのよ」
すんげー金持ちだよ。
「でも、そこまでの船賃、私達持ってません」
「それくらいは出すよ。当然貸しだけど」
「どんだけ金持ちなのよ」
二人に五十万Gずつ渡し、借用書にサインをさせる。
確か、船賃はこれくらいだったはず。
「利子はまけとくよ」
「う、うん。ありがとう……」
若干引いてる気がするのは気の所為、ではないだろうな。
「あと、これ。ちょっと試用してみたいから渡しておく」
そう言って俺は二人に購入したばかりのアイテムを渡す。
「何これ?」
「『通信機』だそうだ。フレンドなら音声連絡可能。ま、ケータイだな」
大分、先まで手にはいらないのでここかアリエスでこれを売ったら商売になるんじゃないか、なんて思ってたりする。
その為に幾つか買い込んでみた。
「なんか、予想の遥か上を行く展開に、ちょっと付いて行けないわ」
とウミ。
「つーわけで、レグルスに付いたら一回連絡頂戴」
「え、一緒に行かないんですか?」
「準備とかあるから先に戻るよ。ゆっくり観光でもしながら来れば良い」
流石に自分の船賃を出すとか馬鹿らしいしな。
ハルシュ Lv.9
筋力値:11
魔力値:11
敏捷値:11
装備:
【ダマスカスランス】
【ワイバーンスケイル】
セットスキル:
├[1]【飛行】Lv.1
├[2]【槍】Lv.1
│└─【防御】Lv.1
├[3]【神聖魔法】Lv.1
├[4]【観察眼】Lv.1
│└─【夜目】Lv.1
├[5]【超反応】Lv.1
└[6]【離脱】
所有スキル:
【回復】Lv.1
【魔法防御】Lv.1




