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最終話「新しい世界」
光が消える。
次に訪れたのは、静寂だった。
レイは、ゆっくりと目を開ける。
そこにあったのは——
空だった。
青く、広がる空。
クロノギアには存在しなかったもの。
風が吹く。
不規則で、予測できない風。
草が揺れる。
音が鳴る。
「……」
レイはしばらく、その場に立ち尽くしていた。
何も起きない。
何も決められていない。
それが、逆に不思議だった。
「……これが」
小さく呟く。
「自由か」
背後から足音がする。
振り返ると、あの男が立っていた。
「目、覚めたか」
いつもの調子だった。
レイは少しだけ笑う。
「夢じゃなかったんだな」
男は肩をすくめる。
「残念ながらな」
短い沈黙。
レイは空を見上げる。
「……後悔は?」
男の問い。
レイは少し考える。
そして、答える。
「あるに決まってる」
失ったものは多い。
戻れないものもある。
だが。
「でも」
風が吹く。
レイは目を細める。
「こっちの方がいい」
遠くで、誰かの声がする。
笑い声。
泣き声。
生きている音。
不完全で、不安定で、予測できない世界。
それでも。
「……悪くない」
レイは一歩、歩き出す。
止まらない世界ではなく。
“自分で進む世界”へ。




