第20-2話 添え物の意地!前菜王降臨!
現在42ターン目、菜蔵と肉宮のコマはフィールドに1体ずつ残されているが、その戦力差は圧倒的であった。
肉宮のコマは、バトルよるダメージ無効とスキルの対象に取られないパワー52の肉さ倍増!肉厚ステーキング!
対して菜蔵のコマは、スキル無し、かろうじて菜王_バンプキングのスキル効果でパワー3となった芽キャベツ見習い兵士という、あまりにも絶望的な状況に置かれていた。
肉宮は菜蔵を挑発する。
「やっぱり野菜モチーフのコマなんか使っているヤツなんて弱いな」
「何ぃ?」
菜蔵は肉宮の発言にカチンと来る。
「所詮野菜なんて料理の添え物、主菜を楽しむためのお膳立てをするまさしく前菜、子供だって野菜が大嫌いなのは明白な事実、この勝負も肉大好きな俺っちの勝ちは最初から決まってたようなモンだったな!」
肉至上主義と野菜軽視を唱える肉宮の挑発に対して菜蔵は頑として反論する。
「俺だって最初自分は肉料理だと思ってたよ、だがアイツ(駒場)はそれ以上に戦術も度胸も肉料理だったんだよ、アイツこそが肉料理だ、だから俺は考え直した、アイツをもっと輝かせて全国大会で活躍させたい、そのためなら俺は野菜でいい、野菜が無い肉料理なんて脂濃過ぎて誰も食わねぇんだよ!」
「くっ、急に張り切りだしやがって…」
菜蔵の謎の熱量に、思わず肉宮も怯んでしまう。
菜蔵は肉宮を力強く指さし宣言する。
「今から見せてやる!お前に卑下された添え物達の強さってやつをよ!」
「俺は芽キャベツ見習い兵士を昇格させる!」
「プ、昇格だと!?そんな無くても同じようなザコゴマから、なんになるっていうんだ!」
最弱モンスターと侮っていたコマの昇格示唆に、肉宮も戸惑いをあらわにする。
菜蔵の脳裏に、1回戦目の鉄鉱中の深海爽奈との激闘の記憶が蘇っていた。
(深海、お前とのバトルの経験が役に立ったぜ!)
1回戦、菜蔵と戦った深海は、潜水艦モンスターの移動範囲を両脇に絞ることで逆転のコマを守りきった。
菜蔵は今回、そのコマの動かし方を芽キャベツ見習い兵士を死守するために再現したのである。
「昇格条件は野菜モンスターが墓地に7体以上存在すること、行くぜ俺の新フェイバリット!」
「才を極めた最強の王、色彩豊かに、ここに降臨せよ!前菜王_サラダ・シーザー、登場だぜ!」
芽キャベツ見習い兵士が花のように葉が展開しだしたその中から、EXモンスター、前菜王_サラダ・シーザーが姿を現した。
その姿は彫刻のあしらわれたガラス細工に盛り付けされた野菜サラダのようであり、ステンドグラスのようになっている装飾からは、元となった野菜モンスター達の面影が感じられる。
「美しい、はっ」
その雄大かつ色彩豊かで風格を感じさせる姿に、肉宮は思わずつぶやいてしまう。
肉宮の反応を無視して、菜蔵は効果処理を続ける。
「前菜王_サラダ・シーザーのスキル発動!このモンスター登場時、墓地にある全ての野菜モンスターをゲームから除外し、1体につきパワーを+5する!」
墓地にある野菜モンスターは全部で9体、つまり前菜王_サラダ・シーザーのパワーは45となる。
「さらに、前菜王_サラダ・シーザーのもう一つのスキルを発動!」
「このコマのスキルで除外した野菜モンスターのスキルを一度だけ全て使用することが出来る!俺はニンニク兵士と菜王_バンプキングのスキルを使用して、さらにパワー+5,合計パワーは50だ!」
(控え席)
控え席の雰囲気は一気に祝勝ムードと化していた。
青島が狂気乱舞している。
「ウォー!スゴイので!菜蔵先輩!あんなビックリモンスターを隠し持っていたなので!」
段田の顔は、サラダ・シーザーの登場に、喜びというより戦慄している様子だった。
「素材に使用した野菜モンスターのスキルを全部使えるとか、アイツこれからどんだけ強くなるんだ?」
天塚は駒場に問い掛ける。
「駒場くん、もしかしなくても、この後って…」
「あぁ、菜蔵にはまだアレがある!」
菜蔵が肉宮に告げる。
「これで前菜王_サラダ・シーザーのスキル効果処理は終わったぜ」
脂汗まみれになりながら、肉宮は安堵の声を漏らす。
「へっ、御託をツラツラ並び立てたところで、結局パワー不足じゃねぇか!やっぱりテメェの…」
菜蔵の雰囲気を察知し、肉宮は話すのを中断する。
肉宮の脳裏に恐怖がよぎる。
(あの上等に焼けた肉を見定めたような視線、まさかっ!)
ここで菜蔵が声を張り上げる!
「まだ俺ルールカードが残っているぜ!!」
「俺ルールカード発動!精力増大!自分の野菜モンスター全てのパワーを+3する!!」
「な、な、ななななな何だってー!!?」
肉宮は顎が外れんばかりに絶叫する。
これで前菜王_サラダ・シーザーのパワーは53。肉さ倍増!肉厚ステーキング!のパワーを1上回ることが出来た。
「やれ!前菜王_サラダ・シーザー!これが俺の、俺の野菜モンスター達の、六角中全員の魂の一撃だ!!」
「俺っちの肉と野望が、こんな試合で食いちぎられちまうなんてー!!」
前菜王_サラダ・シーザーが肉さ倍増!肉厚ステーキング!をサイコロカットすることでバトルに勝利し、菜蔵が大逆転勝利を収めた。
「「「「ヨッシャー!!」」」」
六角中の歓喜の雄叫びが、控え席から試合場まで聞こえてくるようである。
試合が終わり、肉宮が菜蔵に握手を求める。
「さっきは野菜をバカにしてすまなかったな」
「熱いバトル立ったぜ、まるで取り出したてのペレットみたいにな!」
「もっと分かりやすいものに例えてくれよ!」
「まぁ、確かに熱いバトルだったぜ!今度は肉の大食いでバトルしようぜ!」
菜蔵は大手を振って控え席に帰還する。
メンバー全員から祝福される菜蔵。
段田以外のメンバー全員が段田に向き直る。
「最後は段田先輩、お願いします!」
段田は神妙な面持ちで皆に告げる。
「相手は、俺が小学生時代一度も公式戦で勝てなかった竜ヶ峰だ」
「勝てる、なんて軽々しく言える相手じゃない、でも、俺の全力の試合、最後まで後ろから応援してくれよな!」
段田は控え席からテーブルへ向かう。その顔には戦士の覚悟が滲んでいた。
男段田、ここが人生の正念場である!
(第20-2話_終)
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