行間3
今からおよそ14年前、少女には妹が出来た。
顔も、身長もすべてが同じ妹であったが、年齢のせいもあり少女は気にしなかった。寧ろ、妹が出来て嬉しかったようだ。
そして、その数日後から『二重能力試行実験』が始まった。
とはいえ、まだ少女は能力が発現していなかったため、その内容は遊具を使ったりして遊ぶだけである。目的は、身体能力の強化――と言えば聞こえはいいが、そのほかにも実験への抵抗を無くすことという目的がある。
この実験の主任である的場壮大は、この実験に生涯を捧げると決めていた。
彼は、当時こう言っている。
――この実験が成功すれば、エデンはもっと強くなる。
主任であるとはいえ、彼もエデンという組織の中では末端の存在である。故に、エデンが強くなった後のことは分かっていない。
彼は、この実験が成功すればその末端から昇格する予定である。
昇格すれば、エデンの内情により深く関われる――というのは建前で、実際は生涯安泰というオプションこそが彼の目的だ。
『二重能力思考実験』は最終段階にある。
約1万回も行ってきた実験が、ようやく終わる。
実験が終了した時、彼は何と言うのだろうか。そして、この実験の結末とは。
何にせよ、
もうすぐ、実験の全てが決する。




