終章 日常の変化(3)
大晦日ももうすぐ終わる。
あと1時間もすれば新年を迎える。テレビはどのチャンネルも年越し特番を始め、ニュースはやっていない。
黒神と朝影はカレーを食べて満腹になったあとは、一緒にテレビを見ながらダラダラしていた。
「朝影、お前料理上手いんだな」
「そういうのは食べてる時に言ってくれないかな。ま、いいけど……」
「年越しかぁ。そんな感じしないな」
「あれだけの激闘をしたんだもの、当たり前でしょ。あれで新年だヤッホーとか言ってたら引くわよ」
そんな話をしていると、呼び鈴が鳴った。
「誰だよこんな時間に……はいはい、今開けますよっと」
嫌々ながら立ち上がり、ドアを開けると、そこには屈強な男が立っていた。そして、彼の顔を見た黒神は驚愕する。
「か……神原!?」
「え、隊長!?」
神原嵐。『楽園解放』の隊長で、数日前黒神と命を賭けた戦いをした人物だ。
狼のような髪型の、30代くらいの大男は相変わらず黒いスーツを着ていた。
「久しぶり、だね」
この男、口調が変わっている。
いや、というより最初に会ったときはこんな口調だったではないか。
「ああ……こッちの方が話しやすいかァ?」
「い、いや……さっきのやつで」
「ちッ……そうかい。分かったよ」
「今舌打ちしたよな!? その喋り方嫌いなのか!?」
聞く側からしてみれば、最初の口調のほうが断然安心できるのだが、本人はあまり気に入ってないらしい。だったら最初からそのような喋り方をしないほうがいいのではなかろうか。
黒神は恐る恐る神原を家に入れ、床に座る。
「こんな時間に済まないね。いやあ、警察ってのは忙しい」
「……『楽園解放』が治安維持部隊になったって、本当だったんだな」
「ああ、みんなを説得するのは大変だったよ。結局、賛同しなくて抜けた奴もいるし」
「つーことは、第2の『楽園解放」が生まれる可能性があるってことか?」
「そうなるな。でも、目的は同じなんだ。分かり合えるさ」
分かり合う。
そんな言葉が彼の口から出るとは思っていなかったのか、黒神と朝影は顔を合わせて微笑した。
「そういえば、その左腕は……」
神原には左腕があった。だが、その手は明らかに機械のものであった。それに気づいた黒神は低いトーンで尋ねる。
「もちろん義手だよ。しかも、これがデバイスだ」
「……そうか」
「なんだよ、こうなったのは殆ど君のせいなんだけどな」
神原は笑って言ったが、黒神と朝影は気まずくなってしまった。確かに、その腕を抉り取ったのは黒神たちだが、いざ面と向かって言われると困ってしまう。
「さて、本題に入ろうか」
口調はそのままだが、神原の声のトーンが低くなった。




