第一章 運命の邂逅(3)
「事情は分かったわ……その、ありがとう」
「分かってくれたならいいんだよ……」
黒神は未だにベッドの上で身を守るようにしてこちらを睨んでいる少女に対し、諦めの混じった声色で言う。
「それにしても、どうしてあんなところで倒れていたんだ?」
「…………それは、貴方には関係の無いことよ」
突如として、少女の声色が一変した。
「関係無いって、一応恩人だぞ?」
「それとこれは別よ。とにかく、私はもう行かなきゃならないわ。助けてくれたことは感謝してる、でも、ここから先は関わらない方がいいわ」
「…………」
少女の言葉は、確実に黒神を突き放していた。
「よっと、それじゃ、また何処かで」
「あ、おい待て外は今――」
ベッドから降り、少女は一方的に部屋から出て行こうとした。だが、玄関のドアを開けた彼女を襲ったのは、
「寒っ!! ちょっ、吹雪とか聞いてないんだけど!?」
猛吹雪が部屋の中に突入してくる。聞いてないも何も、聞く間もなく出ていこうとしたのだから仕方がない。ホワイトクリスマスというには、多少荒れ模様すぎるか。
「あの、もう少しいさせてくれない?」
高速でドアを閉め、はにかみながら振り返る彼女に、黒神は心を奪われたような感覚に陥った。
ひとまず部屋の真ん中にあるテーブルを挟んで向かい合うように座ると、2人の間に静寂が生まれる。それを嫌ったのか、少女が話しかけてきた。
「そういえば、貴方の名前は? ゴー・カンマ?」
「誤解が解けてない!? 黒神! 黒神終夜だ!!」
「変な名前ね」
「酷すぎるだろ!」
ちなみに、今は夜中である。そう、これだけの大声の応酬を続けていれば――
ドンドンッ!!
「ほら壁ドンされたじゃねぇか!」
「何よ私のせいにする気!? 大体、女の子を独り暮らしの自分の部屋に連れ込むこと自体が問題なんじゃないの?」
「だーかーらー! それは仕方ないことだって言ってんだろ! そのおかげでお前も今こうやってピンピンしてんだろうが!!」
「む、恩着せがましい言い方するわね。分かったわよ、それ相応の対価を支払えばいいんでしょ!」
そう言うと、少女はベッドの上に座り、スカートの中身が見えるか見えないかギリギリの姿勢になり、
「さあ、いくらでも撮りなさい!!」
「痴女かよ!?」
「誰が痴女よ!!」
ドンドンッ!!
「さっきより大きくなってる!!」
「大体、隣に住んでるのは誰なの!?」
「……俺の親友」
「だったらもっと友好的にするべきでしょ! 少しは遠慮しなさいよ!!」
「わがままにもほどがあるだろ!?」
ドドンドンッ! ドンドンドドドン!!
「なんかリズム刻んでない?」
「そ、そんなはずないだろ……」
ドンドンカッ!!
「カッってどうやって鳴らしたんだ!?」
「はあ、とにかく一旦落ち着きましょう」
「お前が言うか……」
ところで、と黒神は付け足す。
「お前の名前は?」
「そういえば名乗ってなかったわね。私は朝影光。まあ、明日になったらもう忘れてもいい名前になるわ。とりあえず、今日はよろしく」
その後、隣部屋の親友からデバイスに連絡がきた。その内容は以下の通りである。
『お前、女とヤるならもっと静かにヤれよ(爆笑)』




