Section41
Lucerna
(――お父様が、アルフォンスの企みで殺された……?)
信じられない。
そして、お父様がラインブルク一家の暗殺を企んだ……
そんなこと信じられるはずがない。
でも、マリエルは一度も嘘を言ったことがなかった。
きっとこれも嘘なんかじゃないはず。
「二人共、でもねこれは本題じゃない。本題はアルフォンスがアルジェントを攻撃させたこと」
……アルフォンスがアルジェントを攻撃させた。
目の前のアルフォンスのサインには確かにシュヴァルツとの誓約でそう書いてあった。
未だに実感ができないところもあるけど、きっとそういう事なんだと思う。
「ティアナ、これはシュヴァルツとの誓約書なの、内容とサインをよく見て」
クレアはそう言いながらティアナにサインの書いてある紙を渡した。
そして、説明を続ける。
「これは、要約すればアルジェントを攻撃してもいいっていう事を承諾してる文書なの」
「……どういうことなの」
ティアナはなんだかよくわかってないみたい。
たぶん、クレアが言っているのは最後通牒を突きつけられて戦争することが不可避になった状況で交わされたものってことなんだと思う。
それでお互いの最後の打ち合わせの中で確認したことが書いてある書類。
だからきっとその条約みたいなものなのかもしれない。
「つまり、アルフォンスがシュヴァルツにアルジェントを攻撃するように頼んだのも一緒なのよ、そして結果的にアルジェントは何も知らないまま奇襲された」
クレアは話を続けた。
「……そんな、アルフォンスがそんなこと……」
ティアナは信じられない様子だった。
でも、ここで私もちゃんと言わないと。
「ティアナ、これは事実だよ。この書類は確かに当時のものだし、ここに書いてあるアルフォンスのサインも本物だってティアナが一番よくわかってるでしょ?」
「でも、なんでアルフォンスはこんなことをしたの……」
確かに、どうしてアルフォンスはここまでしたんだろう。
アルフォンスなら、確かにお父様をラインブルク一家を暗殺した仇として暗殺し返したのはわかる気がする。
だけど、アルジェントという国そのものまで恨む必要はあったのかな……
私が考えている中、クレアはティアナに答えた。
「たぶん、アルジェントにラインブルクが来たときからいろんな嫌な事が起きて、アルジェントという国そのものが嫌いだったんだと思う」
「……だってアルフォンス伯だって、好きでラインブルクを担おうと思ったわけじゃなかったでしょきっと。でも、不幸なことが起きちゃったから……」
そうだよね。
アルフォンスがアルジェントそのものを恨むには最もな理由だと思う。
ラインブルク家がアルジェントに来てからアルフォンスにとっては嫌なことばっかりだったと思うし、何よりアルジェントに来たせいでエルナのことを支えたりと大変だったはず。
それなら災いのもとだったアルジェントを恨んでもおかしくはない。
……そして、そんな中クレアは続けた。
「シエラお嬢様とエルナお嬢様が喧嘩してしまったのも、勘違いとまでは言わないけれど家柄だとか思い込みだとか、そういった複雑な事情が絡み合って起きてしまったことなんだと思う」
「でも、シエラちゃんが本来中立になるべきだったアルジェントをシュヴァルツに着かせたんだよ?」
――そのことに関しては、私が浅はかだった。
私がエルスリール家の当主として不十分だったことの証明だった。
そしてなにより、それがエルナと喧嘩するすべての原因になった。
……私は正直にそれをティアナに話すべきだ。
「ティアナ、それは確かに私の間違いだったしそれがすべての原因だと思う。そして私がシュヴァルツ出身であることも事実だよ、でも決して悪意があったわけじゃないの!」
私は必死にティアナに説明する。
「……シエラちゃんは知らないだろうけど、私は一度殺されそうになってるんだよ?あれだって、ブロンシェル出身の私たちを排除するために起きたことなのに……」
「そんなことが、あったんだ……」
それは初耳だった。
シュヴァルツ側につくということが、エルナを殺そうとする輩まで現れるなんて想像もしていなかったことだ。
……だから私はそれくらい、未熟だったんだ――




