Section40
Claire
秘密なんてたくさんありすぎて、全部は話せない。
特に私には――いや、マリエルには。
とにかく、ティアナやルーシェには話せるだけのことを今は話したい。
「たぶん、この話からしないと伝わらないだろうから話しておくけど、マリエルはね元々スパイだったのよ」
「……え?すぱい?」
――この反応も無理ないわね。
ルーシェは私の言ったことが頭に入ってない様子だった。
「スパイと言っても、エルスリール家に入ってすぐにやめちゃったんだけどね」
「……それで、それがどう関係あるの」
ティアナはあんまり興味がないみたい。
関係があるかと言えば確かにあまり関係はないかもしれない。
でも、やっぱり聞いてもらいたい。
「ティアナ話を最後まで聞いて、私はブロンシェルからのスパイだったの、エルスリール家にはアルジェントの情報を得るために仕えるという形で来たのよ」
「じゃあ、マリエルは私の家の情報を探り出すために私のお世話係に……」
「違うのルーシェ、私は!」
「マリエルは私を裏切ってたって事……なの?」
泣きそうになっているルーシェに誤解を与えたくはない。
ここで誤解させちゃったらティアナとルーシェが喧嘩しているのと同じ事が起きてしまう。
「ルーシェ、違うの。私は本当にルーシェのことを守りたいって思ったからお世話係になったの」
私は話を続ける。
「私はあるブロンシェルの貴族の雑用として売られたの、その頃のブロンシェルは250年前の戦争が終わってからだいぶ経っていたけれど荒廃していて私の家族も貧困だった」
「そんな中で頭が少し回るのと器用さが買われてスパイになるように育てられたの」
「……そうだったんだ」
なんとかルーシェには分かってもらえたみたい。
だけど、まだこれでは説明にはならない。
「それで、私はエルスリール家に来たんだけど、そこでその職業柄だったのかあることを耳にしてしまった」
二人の表情が強ばる中、さらに私は話し続けた。
「それが、モデラスト様の計画したラインブルク暗殺の計画だったのよ」
「ラインブルク……暗殺」
ティアナにとってもこの話は辛いと思う。
もちろんルーシェにとっても、信頼する父親がラインブルク一家暗殺の首謀者だったということはきっと辛い。
「それじゃあ、シエラちゃんのお父さんが――私の家族を……」
「残念ながら、そういうことになるわね」
二人共とても辛そうだけど、これは伝えなきゃいけなかった。
どうしても、真実を知って欲しかったから。
「……」
ルーシェは下を向きながら何も言わずに俯いている。
すごく嫌な雰囲気の中、ティアナは言った。
「シエラちゃんのお父さんが家族を殺したなんて……許せない」
「ティアナ、落ち着いて聞いて。モデラスト様も暗殺されたでしょ」
私がそう言った途端にティアナははっと気づいた様子だった。
「……まさか!」
「そう、そのまさか。アルフォンス伯がモデラスト様の暗殺を企んだの」
「そんなこと……あるはずない!」
「アルフォンス伯はもともと気づいてた節はあった、そしてその復讐のためにモデラスト様の暗殺を企んだ」
私もあんな形で復讐するとは思わなかった、でもそれだけアルフォンス伯の気持ちが強かったってことなのかもしれない。
でももちろん、モデラスト様が亡くなられればシエラお嬢様が悲しむことくらいわかっていたはず。
……そしてそのシエラお嬢様はエルナお嬢様にとっても大事な友達だった。
なのに何故、アルフォンス伯はお嬢様を――




