Subsection3
Sierra
……今日は久々にピアノもきちんと練習できた。
一日中ピアノの練習をしていた気がする。
気がつくと、もう日は暮れていてうっすらと夕暮れの明かりが部屋に入ってきていた。
(――だいぶ時間たっちゃった……)
いつものことだけど、ピアノに限らず何かに熱中しているといつのまにこんな時間になってしまう。
もっと回りに気が使えるようにならないと……駄目だよね。
と、そんなことを考えているとマリエルが私を呼ぶ声が聞こえた。
「お嬢様、モデラスト様がお呼びです」
――お父様が?
なんだろう、いつもそんなに話す時間も話す機会もなかったからちょっと嬉しいけど。
私も何か伝えることあったかな……
「……ありがとうマリエル、今から行くね」
そう言って私はピアノ部屋を出てお父様のお部屋に向かった。
「……シエラ、伝えたいことがあるんだちょっとこっちに来なさい」
お父様の部屋に入るとすぐに、私は椅子にかけるように言われる。
こういう話をあまりしたことがないのでなんだか緊張してしまう。
「ええと、なんですか?」
「今日は周辺諸国について動きがあった、それを覚えておいてほしくてな」
周辺諸国、というとシュヴァルツとかブロンシェルとかのことかな?
この前アルフォンスと話したことを思い出しながらお父様の話を聞く。
「今回動きがあったのはシュヴァルツだ、シュヴァルツはミネラドロワに侵攻しようとしている」
……ミネラドロワといえば。
そういえば確か……ミネラドロワは資源が豊富な国でシュヴァルツが動いてるみたいなことをアルフォンスも言ってたよね。
お父様は話を続ける。
「ミネラドロワと戦争になればシュヴァルツは我々アルジェントに同盟を求めてくるはずだ、私の憶測が正しければだが……」
同盟?
確かアルジェントとシュヴァルツは仲が悪いんだよね……
「でも、アルジェントとシュヴァルツはあんまり仲がよくないんじゃ?」
私は頭の中で疑問に思ってたことを口にする。
「……そうだ、しかしディクタベルトは必ずアルジェントに同盟を求めてくる、その時はシュヴァルツと同盟を結ぶべきなのだ」
「なんで仲の悪い国と同盟を結ぶんですか?」
わざわざ仲の悪い国と同盟する必要はないと思う。
ブロンシェルと仲良くしてきたんだからブロンシェルと結ぶべきなんじゃないのかな?
……なんだか複雑でよく分からなくなってくる。
でも、そんなごちゃごちゃしてきたものがお父様の一言でよく分かった。
「――ブロンシェルはかつての戦争で大きく疲弊してしまったからだ」
かつての戦争、というと50年前の戦争のことだ。
その時アルジェントはブロンシェルと同盟して負けたっていう話はこの前アルフォンスから聞いた。
「ブロンシェルは50年前ほど強くないのだ、いまやアルジェントの国力よりも劣っているとの情報が先日入った」
「……どういうことですか?」
「国を立て直すあまり、歴代君主は芸術や文芸に国力を割きすぎた、そのせいで今のブロンシェルには大きな力がない」
――そうだったんだ。
なんとなく、いろんな状況が読み込めてきた。
「お父様、つまりはシュヴァルツに味方するしかない、ってことですよね」
「……そうだ、その時にブロンシェルと組んだり中立を保つなどすれば、ミネラドロワより先に真っ先にアルジェントに侵攻されるだろう」
避けようがない、ってことなんだよね。
ブロンシェルにつけば、戦争をして負けるのは目に見えている。
そして中立を保てば、真っ先にアルジェントがやられる。
でも、シュヴァルツにつけばひとまずはいろいろと考える余裕が出来る。
国を守るためにはきっと――そういう判断が任されるんだと思う。
私にはそんな判断は下せないな、とつくづく思うけど。
……そんなお父様のことを私は純粋に凄いと思った。
その後は他愛もない話をしながら、久々にいいひと時をすごすことが出来たのだった――




