Subsection2
Mariel
最初に話を聞いてしまったとき、私はただただ驚いていた。
きっかけはなんでもない、本当に通りがかったときに耳にしてしまったエルスリール家当主のモデラスト様が部下の人に話していたことだった。
「……ラインブルク家を討たねばならない、彼らは政敵になりかねん。シュヴァルツの暗殺者に手合わせをする準備をしてくれ――」
私は通りがかりではあったけれど、モデラスト候が話していた事はなぜか一言一句まで聞こえてしまった。
あまりにあっけない一言だったので、そのときは思わず耳を疑った。
最初は本当に何かの聞き間違いだと思っていたけれど、それは……ラインブルク家の暗殺によって全て裏付けられた。
まさか本当に起きてしまうなんて思いもしなかったのに。
この暗殺は大きな事件として、誰の仕業だったのかをアルジェントは必死になって探していたと思う。
だけど。
……でも、結局最後までシュヴァルツによる仕業ということしか分からなかったみたいだった。
私がお嬢様のお世話係になったのはそれからまもなくのこと。
……数のいるメイド達から私がお嬢様のお世話係に自ら願い出た。
ただ、お嬢様を巻き込みたくなかっただけ。
理由はそれだけだった。
シエラお嬢様とはお世話係になる前から一番親しかったし、当然のことではあるけれど私は選ばれた。
そして、もう一つ強いて理由を言うのなら、アルフォンス伯にはこの事が感ずかれていたというのもあった。
エルナお嬢様はまだ幼かったから覚えていなかったかも知れなかったけれど、単純に考えればすぐにわかることでもあったかもしれない。
アルフォンス伯は、覚えていたはず。
なぜなら……私が伝えたから。
あの時、アルフォンス伯はモデラスト候、シエラお嬢様のお父様に復讐することを決めたのだと思う。
私がアルフォンス伯に伝えたとき、私が言われたことは……残酷だった。
エルスリール家に勤める人間として、私の立場がなくなるほどの言い様で……
「僕はあなたを恨むつもりはない、だけどエルスリール家への恨みは忘れない」
それから数年経って、アルフォンス伯はモデラスト候と親しくなり、いろいろと話す機会が増えた。
それもおそらく、全部モデラスト候に近づき信頼を得るためのものだったのだと私は思う。




