Section45
Erna
――午前のピアノの練習を終えて、私は休憩のために自分の部屋でくつろいでいる。
窓から見えるクォンツィアの街並みは1ヶ月前に戦争が終わったまま、変わっていない。
そんな光景を見ているとつい……数ヶ月前まで楽しく過ごしていた日々を思い出してしまう。
(――あれは……一時の夢、だったのかもしれない……)
夢だった、そう言われてみればそんな気がする程に、私は最近の毎日を過ごしている。
よく言えばのんびり、悪く言えば……退屈で単調。
事実戦争は終わったし、のんびり過ごしていてももう誰かに悪口を言われたり戦争の被害を被ることもない。
私はただ、毎日ピアノを弾いているだけ。
……そんな日常だからこそ、まだこんなことを考える暇があるのかもしれない。
「エルナお嬢様、よろしいでしょうか」
ふとそんなことを考えている途中に、アルフォンスが来たみたいだった。
「大丈夫よ、鍵は開いてるから」
「それでは、失礼致します」
私の部屋に入ってきたアルフォンスは、あまり良い表情ではなかった。
何か、考えていることを言いたくなさそうな雰囲気を感じる。
でも私は退屈だったので、あえて自分から聞いてみることにした。
「……アルフォンス、どうしたの?」
「それが……つい先日、シュヴァルツがアルジェントに攻め込み、首都を落としたそうです」
「えっ……」
シュヴァルツはアルジェントと同盟していたんじゃ……
――ということはシュヴァルツがアルジェントを、裏切ったの?
「ヴァイスハルト伯が街の人々の多くを街の外に逃がすことに成功したそうですが、その戦乱のさなかにシエラ嬢が……お亡くなりになられたそうです」
――シエラちゃんが……亡くなった。
アルフォンスは確かにそう伝えていた。
……私の心の中でいろんな感情が回っていく。
何を思っているのか自分でも分からなくなるような感じだ。
アルフォンスから聞いたことが突然すぎてあっけない。
どういう風に事実を受け止めればいいのかが、頭の中でこんがらがる。
――そして最終的に口に出た言葉は。
「……そう、なんだ――」
あまりにも味気なくて、あまりにも淡白だったその言葉は……私の本心だったのかどうかは分からなかった。




