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Entwined complexity  作者: emiru
現在編(第一章)
5/109

Section3

Lucerna

私たちが歴史研究会に入ってから一週間、ジルからいろいろなことを聞いた。

まず、歴史の話。

ジルとティアナが調べてるのは200年前の戦争、アネクシオン戦争の話で、その中でもアルジェントについての話がよくわかっていなくてそれを調べるという


ことだった。

私は歴史の話は結構好きな方だったからジルの話もすごく興味深かった。

歴史研究会というのは名ばかりじゃなくて、ティアナはともかくジルはまともに細かいことも念入りに詳しく調べている。

既に学会などにも発表できるような資料とかも集めてるとか……

ジルは本当に歴史が好きらしく、それにかける情熱は素直に感心するほどだった。

その点話もすごくわかりやすくて、久しぶりに興味を持つことができたのかもしれない。

……で、次。

例の旅行の話。

夏休みの最初の方に行くらしくて、私とクレアもなんだかんだで行くことになった。

確かにちょっと不安ではある、まだ知り合ったばかりの人達と行くわけだし……

だけど、クレアも一緒だし、みんな悪い人ではなさそう。

(――まあなんかあったらクレアに助けてもらえば……大丈夫だよね)

クレアは頼りがいあるし、しっかりしてるし。

予定としては私たちの住んでいるティリンから旧ミネラドロワのクラクス、旧ブロンシェルのクォンツィア、旧アルジェントのラトフィアの順に回るらしい。

それぞれの街では今でも異なる文化があるらしいので、それを見るためとジルは言っていた。

結構ハードなスケジュールになりそうだけど……

……でもクォンツィアは昔から芸術や文芸の都市として有名だし、一度行ってみたいというのはある。

なんとなくなんだけど、何故か昔から行きたいと思っていた。

たぶん、芸術などの文化が発達していてティリンとは違うからだと思う。

でも逆に考えてみれば……自分の住んでる場所と違う場所に惹かれるのは当たり前なのかもしれない。

――そして、目的のラトフィアが旧アルジェントの首都だった街だ。

そこへ行って最後にティリンに戻ってくる。

これをたった1週間で回るというから驚きだった。

まあ、観光が目的なわけじゃないし、ジルのことだからちゃんと資料とかを調べるんだと思う。

「――ねぇ」

……自分でもジルの話を聞いていろいろ調べたいと思ったし、もちろん真面目に調べるつもりだ。

クレアに関しては私の付き添いみたいな感じだけど、付き合ってくれることには感謝しきれないくらい。

仲いい友達いるといいな、って改めて思ってしまう。

……とまあそんな感じで楽しみなことがひとつ出来た。

もう夏休みに入っているから旅行まではたった一週間くらい。

それまでに色々とジルから話聞いたり準備したりしないといけない。

「――ねぇってば」

……あれ?

「ちょっと、ルーシェ!」

「うわぁ!」

気づいたらクレアが目の前にいた。

いつから居たんだろう……

「うわぁじゃない!呼んでも返事しないし何やってるのもう」

「……ごめん、考え事してた」

「そんなんじゃ旅行行った時はぐれたらすぐお持ち帰りされちゃうからね!」

……それは嫌。

お持ち帰りは困ります。

……うん、くれぐれも考え事してぼーっとしないようにしないとね。

「そういえば今日も研究会のところ行くんだよね?」

話を変えてクレアは私に聞いてくる。

「うん、そうだけど。クレアなんか予定あった?」

「あ、大丈夫、確認で聞いただけだから」

それ聞く意味あったの?なんて言えない。

クレアには本当に感謝してるからね。

私の興味持ちそうなこととかをいつも後押ししてくれるのはクレアだし、困ったことがあると相談にも乗ってくれる。

クレアは私の大事なお友達。

そんなことを考えながら、私たちは歴史研究会の部屋へ向かう。

ここ一週間だけど、もうだいぶあの場所にも馴染めてきた。

最初はラルフとか話しづらい感じだったけど、話してみると意外に面白くてあっちからも話してくれるようになった。

ジルはもう言うまでもなくあんな感じだし、ティアナはなんかいつも可愛いし、私でも仲良くやれそうな気がする。

と、そんなことを考えながら部屋に入る。

「ルーシェちゃんだー!!」

「うわぁ!」

ドアを開けた瞬間これだ。

最近……というかここ一週間毎日こんな感じ。

……ティアナはこんな感じで可愛いんだけどちょっと苦笑いしてしまう。

「ティアナはルーシェがお気に入りみたいだね」

ジルは何を言っているんだろう。

「ルーシェちゃん大好きー!」

「あ、あのティアナ、ちょっと……」

……どこ触ってるんですかどこに!!

手があらぬ方向にいってますティアナさん!

ど、ど、どうすれば……

「ルーシェ……」

クレアさんも哀れみの目をむけてないで何とかしてください。

……本当に。

ティアナはきっとなんにも知らないんだろうな、とか思いつつも相変わらず抱きついたままだった――


「――で、そういうわけなんだ」

しばらくして、私達歴史研究会のメンバーはジルから旅行についての軽いミーティングを受けていた。

こんな感じのミーティングは最近一週間、毎日のようにしている。

ジルは今までも結構旅行に行ったことがあるらしく、ミーティングなども細かくてテキパキと進めてくれた。

さすがはしっかりもの、ティアナの面倒を見てるだけあると思う。

「……何か質問とかあるかな?あったら遠慮なく言って」

「はーい!」

真っ先に手を挙げたのはティアナだった。

「はいティアナ、何を聞きたい?」

「……ええと、ええと、泊まるとき部屋とかどうするんですかー」

――あ。

それ聞いてなかった。

「……部屋はルーシェ、ティアナ、クレアの三人と僕とラルフの二人に決まってるでしょ」

ジルは苦笑しながらティアナに答える。

……うん、まあそうだよね、当たり前だよね。

少しだけ予想外のこと言われるんじゃないかとびっくりしたけど、そこはジルだしね。

私も何か聞くことあったかな……?

もう大体のことはこの一週間で聞いたし、お持ち帰りされないように気をつけておく位だと思うんだけど……

自分で言うのもなんだけど、私もおっちょこちょいなとこあるからなぁ……気を付けないと。

まあ、また何か気がついたことがあったら聞けばいいかな。

……ジルのミーティングが終わると、みんな部屋の中でそれぞれしたいことをし始めた。

私はティアナやクレアとおしゃべりして、ジルは相変わらず調べものに熱心な様子。

ラルフは……なんか窓を見ながらぶつぶつしゃべっているみたい……

「ねえ、クレアちゃんはルーシェちゃんとどうして仲良くなったの?」

「だからちゃん付けしないで……」

クレアはティアナから質問攻めにあっていた。

「クレアと私は一緒の寮のルームメイトで、大学に入ったときにそれで知り合ったんだよ」

なんだかクレアは大変そうなので私が答えてみる。

「あ、そうなんだー。じゃあまだそんなに付き合い長くないの??」

「うん、そうかな。2年くらいだと思う」

確かにまだ2年くらいなんだよね。

それなのにいつも一緒にいるせいか、もうずっと長くいる気がする。

「ティアナとジルも幼馴染って言ってたっけ?」

今度はクレアがティアナに質問。

「うん、そうだよ。ジルとは昔から家が近くてしょっちゅう遊びに行ってた!」

「そうなんだー」

二人とも幼馴染だけあって、なんかお互いのことよく知ってそう。

喧嘩とかしてもジルのことだから丸く収めちゃうんだろうなぁ。

……その点私とクレアはたまに喧嘩するとルームメイトだからすごく気まずい。

まあ実際、めったに喧嘩とかはしないけどね。

「私とルーシェもしょっちゅう遊んでるよね」

「というか、クレアがお菓子とか大好きだからでしょ……」

「まあ、そうだけど……」

「クレアちゃんスイーツ好きなの?」

「……うん、まあ。というかちゃん付けしないで」

「えへへ、クレアちゃん大好きー!」

……なんかティアナの目つきが変わった!

これは――さっきの私と同じだ。

私と同じあの苦しみを味わうといいよクレア。

「……ティアナ、ちょっとどこ触って……」

「クレアちゃん、私もスイーツ大好きだよー!」

「それはわかったから、ちょっと離れて……」

……見てて和むなぁ、この光景。

「クレア……」

私も哀れみの思いをこめてクレアの名前を一言。

……でも本当に面白い毎日になってきた。

旅行も楽しみだし、歴史研究会のメンバーも個性豊かだし。

あ、そういえばジルに回る都市のこととか聞いてみようかな。

スケジュールは聞いてるけど、どんな都市に回るのかは聞いてなかったしね。

……私はクレアを見殺しにしてジルに話しかけることにした!

「ねえジル、ちょっといいかな?」

「ルシェルナか、何か質問?」

「うん、旅行で回る都市について詳しく聞きたいんだけど……教えて!」

私がそういうとジルは頷いて話し始めてくれた。

「最初に回るクラクスは昔から産業に秀でてる都市で、産業革命が起きたときの中心だったんだ」

「そうなんだ。じゃあ今でも結構製造業とかの中心なの?」

「そうだね、今でも割とクラクスの周りには工場が多いよ、一時期は環境汚染の問題が深刻化したらしいけど今は厳しい規制があってだいぶよくなってる」

ジルは話を続ける。

「クラクスは旧ミネラドロワの首都なんだけど、あの辺りは鉄や金銀といった資源が昔から豊富なんだ。だから産業革命のときも主に工業で飛躍的に発展した


んだよ」

いつも通りわかりやすい説明で助かる!

でもそういえば……

「ミネラドロワって金って言う意味なんだっけ?」

「よく知ってるね、そうだよ。元々は北側にあったグリスっていう国の領土だったんだけど、独立したんだ」

「でも、今回旧グリスの首都だったグラシュとかには行かないんだよね?」

……そういえばそれも疑問だったんだけど聞き忘れていた。

本来の順でティリンからすべて回るならグラシュ、クラクス、クォンツィア、ラトフィアのはず。

だけどすぐにジルはその理由を簡潔に答えてくれた。

「グリスはのアネクシオン戦争とはあんまり関係ないんだ、当時は政局が不安定で外に口を出す暇もなかったらしいよ。それに、そのあとすぐにシュヴァルツ


に併合されちゃったしね」

「……そうなんだ、だから4都市しか回らないのね」

「うん。それに今は統一されて少しはよくなったみたいだけど、昔から相変わらず貧困な地域で治安も悪いんだ。流石にティアナも連れて行けない」

……ティアナのこともちゃんと考えてあげてるんだ、ジルってやっぱりしっかりしてるよね。

その後もジルからいろいろな話が聞けて旅行についての細かい注意とかも教えてもらった。

クレアもティアナと楽しそうにスイーツ話で盛り上がっていてすごく楽しい一日だった――

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