Section1
Lucerna
――なんかつまらない。
私はいつもそんなことを考えていた。
ちゃんと勉強してちゃんと大学へ行ってやりたいことを学ぶ……
……極めて真面目な大学生。
とても良い事ではあると思うけど……つまらない!
「……ルーシェ、何してるの」
「え??」
後ろから声をかけられたので振り向くとクレアが怪訝そうな顔をして立っていた。
いきなり話しかけられたから驚いた……
「黄昏てたんだよー、そういうクレアはなんでそんなとこに立ってるの?」
「黄昏てたって……もう講義終わったからルーシェと一緒に帰ろうかなーって思って来たんだけど……」
いつの間に講義終わってた……
なんというか、一日って過ぎるのが早いなぁ。
「なんか一日って経つの早いよね」
思ってた事をそのまま口にする。
「……ルーシェが真面目すぎるんだよ、ちょっと息抜きとかしてみたら?」
と言われもなぁ。
――息抜きねぇ、何すればいいんだろう。
確かにもうすぐ夏休み。
たまにはどこかに旅行とか遊びに行ったりとかしてみたいっていうのは思うけど。
「何して遊べばいいのかわかんない……」
……とまあこれが本音。
やっぱりなにかしらの目的とかきっかけとかがないと結局何もできないで終わることが多いよね。
「うーん、なんでもいいと思うけど気分転換できることとか?」
……クレアさん、今それを聞いているんです。
クレアはしっかりしてるけどたまにちょっと天然で面白い。
まあ気分転換も何も、クレアやほかの友達と話してるだけでも楽しいんだけどね!
と思ったけど、とりあえず寮に帰るのが先……かな。
「とりあえず帰ろっか、帰ってから勉強しないといけないし」
「ん、そうね」
結局、話をあわせてクレアと一緒に帰ることにした。
だいぶ前からそうだけど、クレアとは話がよく合う。
初めて会ったときも、ものの数分でいろんなことを話す仲になったし。
……私はあんまりいろんな人と話すのが得意じゃないからその点ちょっと助かっている。
「そういえばルーシェ、また駅前に新しいお店ができたんだって!」
「え?何のお店?」
「お菓子屋さんだよ、ちょっとのぞいてみたけどすごくおいしそうだった」
お菓子やさんかぁ、たまにはいいかもしれない。
クレアはこういうお菓子とかパフェとかにほんとに目がないんだよね。
……でもまあ、確かに目を子供のようにきらきらさせて話すから楽しい。
こっちまで気分がわくわくする感じ!
私たちがそんなことを話していると、ちょうどキャンパスを出るあたりで突然後ろから声をかけられた。
「ええと、ええと……あの!」
「え?」
……振り向くと同い年くらいの女の子が立っていた。
いきなり話しかけられてびっくりしてしまう。
「……あの、このまま帰るんですかー?」
「うん、そうだけど……」
私が答えるより先に、クレアが答えていた。
……というよりこの子はなんで呼び止めたんだろう?
初対面の人にいきなり話しかけてきた割にはいかにも普通過ぎる問いかけだけど。
それに話しかけたのはいいけどオドオドしてるし……
もしかして、一緒に帰ろうとか言うのかな?
「ええと、それじゃあ歴史研究会に入ってください!」
――え?
歴史研究会、って何……
私とクレアは戸惑いながらその子の話を聞き続ける。
「絶対楽しいです!毎日本とか読んで、歴史研究します!!私はしてないけど!」
……してないんだ。
この子は、一体何なんだろう……
――歴史研究会、っていう名前からして楽しくなさそうと思うのは私だけ……?
絶対退屈だよね、そうだよね!?
そんな疑問をクレアは代弁してくれた。
「ちょっと話が支離滅裂でよくわからないんだけど……」
「ええと、その……ええと!」
今度は逆にその子がなんかすごく戸惑ってじたばたしていた。
そんな様子を見てなのか、もう一人男子がやってきてその子に話し始めた。
「ティアナ……いきなりどこかへいったと思ったらこんなところにいたのか……」
「あ、ジル!ちょうどいいところに!」
ジル?この人がジルでこの子がティアナって言うんだ。
「ちょうどいいところにじゃないよ、見ず知らずの人に話しかけて何やってるの……」
「……う」
「あんまり変なことしないでよ……」
「変なことじゃないよ、この二人が歴史研究会にもうすぐ入ってくれるからがんばってるの!」
……なんか私たち入ることになってるし。
この状況を打開すべく、心の中でクレアになんとかしてと頼んでみる。
「ええと、ちょっとどういうことになってるのか分からないんだけど……」
通じた!とか馬鹿なこと思いつつ話の成り行きを見守る。
すると、それに気づいたジルがあわてて謝り始めた。
「君たちごめんね、なんかティアナが迷惑かけちゃったみたいで……」
「あ、大丈夫!ちょっと驚いただけだから」
ずっと黙ったままだったので、私もとりあえず一言くらい話しておく。
とにかく、この二人は歴史研究会のメンバーで、この女の子……ティアナが私たちを誘いに来たということだった。
「僕は歴史研究会の部長のジル、こっちはティアナ。歴史研究の旅行に行くことにしたんだけど二人だとつまらないだろうからって一緒にいける人を探してた
んだ」
あ、そういうことだったのね。
あれ……でも。
「二人のほうがいいんじゃないの??」
気づいたら答えていた。
「え?どうして?」
「だって……二人は恋人同士でしょ?それなら二人のほうがいろいろと都合がいい気がするけど……」
「……」
……なんかしらけた。
クレアも無言だしどうしよう……
「あはははは、恋人同士ね。それは面白いや」
(――あ……誰もそんな話してない……)
大恥をかいてから気づく私。
すごく恥ずかしい、めちゃくちゃ恥ずかしい!
「僕とティアナは幼馴染というか、ずっと前からこんな感じで、別に恋人とかじゃないよ」
「勘違いしてた、ごめん!」
「ルーシェは恋に飢えてる乙女だもんねー、毎日退屈だもんね」
耳元でクレアが囁いてくる、追い討ちやめて……
それがなぜか聞こえてたのか、ティアナが私に聞いてきた。
「ルーシェって言うんだ!なんかかわいい名前」
「あ、ルーシェはあだ名で、本名はルシェルナだよ」
「ルシェルナって言うんだー!」
一人だけ自己紹介が遅れたのを気にしてか、私に続いてクレアも自己紹介をし始める。
「私はクレア、幼馴染ではないけどルーシェの友達ね」
「ルーシェちゃんとクレアちゃん、よろしくねー」
なんだかティアナのテンションに押されてしまう。
この元気さはどこから来るんだろう……
「迷惑かけちゃってからで何だけど、学校終わった後とかよかったら歴史研究会に遊びに来てくれないかな?」
「いつもティアナと二人だし、たまには他の人たちと話すのも楽しそうだしね」
ジルがそういったところで、クレアが私にまた耳打ちしてきた。
「……ルーシェ、たまには息抜きする分にはいいんじゃない?最近勉強ばっかりだし、単位とかもちゃんと取れてるんでしょ?」
「うん、まあそうだけど……」
「だったら私はこういうのもいいと思うよ」
クレアが言うことも確かにわかるけど、歴史研究会ってなんかグダグダしそうなイメージだ。
まあグダグダしながら話したりとかも悪くはないけど、ちょっと気が進まないかなぁ。
そんな微妙そうな私たちの様子を見てジルは付け加えた。
「……あー、そんなに重く考えることないよ、もちろん旅行とかは付き合ってもらわなくても大丈夫だし、ちょっと休憩とか息抜きとかで話し相手になってく
れるだけでも嬉しいしね」
「ルーシェにぴったりじゃない?」
なんか今日のクレアはやたらといろいろ突っ込んでくる。
(――クレアに後押しされるとなんか言い返せないんだよね……)
「……わかった、じゃあ明日からちょくちょく遊びにいくね」
「ルシェルナ、ありがとう」
「あ、ルーシェでいいよ。そっちのほうが慣れちゃってるし、ルシェルナだと逆によそよそしく感じちゃうかも」
……結局その後も四人で話し続けて私はクレアと帰ることになった。
確かにあんまり気は進まなかったけど、友達ができるのは嬉しい。
たぶんだけど……クレアも私のこと考えて押してくれたんだと思うし。
なんだか、いろいろじたばたな一日だった。
寮に帰宅すると、もう晩御飯の時間だった。
いつもどおり、クレアと一緒に晩御飯を作る。
私もクレアも同じ寮でルームメイト、大学に入った時、初めは人付き合いが苦手だった私だったけど、クレアと友達になってからだいぶ楽になった。
一人でも友達がいると、気分も気持ちも変わるのかなぁ。
それにやっぱりクレアとは気が合うしね。
「……ルーシェ、そこの胡椒とって」
「はい、今日のシチューおいしそうに出来たね!」
「いつも、といってくれると嬉しいんだけど……」
基本的に、メインディッシュはクレアが作ってくれる、というのも私はあんまり料理が得意じゃないから。
私はサラダとかスープとかどちらかというと小物を任されている感じだ。
クレアの料理はとにかくおいしい、懐かしいような味だけど家庭的って感じじゃなくて華やかさがある気がする。
しばらくして、ご飯が出来たので私たちは一緒のテーブルで食べ始めた。
「今日のティアナって子面白かったよね」
「そうだね、なんかルーシェはあのテンションにかなり戸惑ってた様に見えたけど」
それはあなたもでしょ……
と突っ込みいれたいのを抑えてちょっと話を変えてみる。
「そういえば歴史研究会って本当に何するんだろうね。まじめに活動してればしてるほどつまらなさそう」
「それは私も考えてた。……でも旅行とかも面白そうじゃない?」
「ちゃんと資料とか調べてるんだろうから現地調査みたいなことするのかな?」
「たぶんそうだと思うよ、まああの二人だから何してるのか分からないけどね」
そんなことを言いながら、楽しそうにクレアは話す。
でもティアナとか見てると……なんか息抜きとかするのもいいかなって思えてくる。
「……そうだね、旅行とかもいいかもしれない」
「――え?」
……あ、気持ちが口から出てた。
まあクレアも旅行とか息抜きとかしたいならいいかもしれない、だいぶ私のことでいろいろとつき合わせちゃってるし。
「確かに息抜きとかもいいかなって今思った、私大学入ってからまともにどこかに旅行したりとかしてなかったし」
「あぁ、うん。そうだよね、ルーシェがそういってくれたほうが私も気が楽だよ」
……つまりは、やっぱり付き合わされていたことを認めるんですね!
自分でも分かってるよ、扱いにくい人間だって!
「まあとにかく、明日からちょっと歴史研究会のところに行ってみようよ、旅行とかの話もまずはそこからだし」
「……そうだよね、そうしよっか」
「じゃあ今日は勉強してとっとと寝ようかな」
「……ルーシェは真面目だよね、本当に」
「確かに、一応勉強とかはちゃんとやってるけどね」
それはそうなんだけど、逆に言えば勉強しかしてない。
どちらかといえば真面目というより、勉強しかすることがないから無気力?に近い気がする、もちろんやることは一応ちゃんとやってるけど!
「じゃあ私先にお風呂入ってくるねー」
私が相槌を打つと、クレアはお風呂に入ってしまった
……私もさっさとやることやってしまおう。
結局、自分でも言ったとおり私も勉強してお風呂入って、寝ることにしたのだった――