Section19
Lucerna
――日が暮れてきた。
だいぶこの戦場跡を歩いて、足も疲れてきたので、みんなで宿を探している。
かなり歩いてきて、小さな村に出たんだけど……
……なかなかその宿が見つからなくて少し不安になってきた。
「あ!あそことかどうかな?」
突然ティアナが指を指して言ったのは小さな民宿のような宿だった。
一応宿の看板がぶら下がっていたけど、遠目からだとかなり分かりにくい。
……その点ティアナはやっぱり変なところが鋭かった。
村自体は、そもそもあまり大きなものではないけれど、私たちは初めてくるような人間なので何かを探したりするのに何かと苦労している。
今回の宿もそうだけど、クラクスにいた時も泊まる宿の場所が分かりづらくて結構迷ってしまっていた。
「うん、いいと思う!なんか雰囲気が良い感じだよね」
クレアはいつもより何故かテンションが高いみたいでティアナが見つけた宿に泊まりたいらしい。
他に見つからなかったこともあって、程なくしてその宿に泊まる事に私たちは決めたのだった。
――宿を切り盛りしている民宿のおばあさんは、私たちを歓迎してくれた。
あまり観光を目当てにこの村に来る人はいないようで、観光客としては珍しいみたい。
「君達は……この戦場跡を見に来たのかい?」
私たちへ向けてお婆さんは問いかける。
その問いかけに答えたのは、やっぱりこの旅行の企画者のジルだった。
「はい、そうです。僕は200年前の戦争の事についていろいろと調べているんです、ここに来たのもその一つで――」
なにやら親しそうにおばあさんと話すジル。
そんなジルを置いて、私たちは部屋に向かおうとする。
向かおうとした――その時だった。
「――嘘……でしょ」
クレアが小さく何かを言っているのに私は気が付いた。
目の前にある暖炉を見つめながら蹲っている。
――どうも、様子がおかしい。
「……こんなの……ありえない!!どうして……っ!……どうして……」
……突然発された大声が、あたりに響き渡る。
みんなが一様にクレアのほうに視線を向けてその場を見守る中、私は心配に思って声をかけた。
「……クレア、どうしたの……?大丈夫?」
「……ぅっ……ルーシェ……っ」
「クレア、どうしたの?何かあったなら教えて……?」
私は優しく声をかけ続ける。
――でも、それとは裏腹にクレアは何故か必死に謝ってきた。
「……ルーシェ……本当に……ごめんなさい……っ」
必死に私に謝ってくるクレア。
私、何か悪い事されたかな……
――自分の中で思い出してみても、見に覚えがまったくないけど、今はクレアを落ち着かせるのが先だ。
「大丈夫、大丈夫だから……何かあったなら言って?」
「……ぅ……ぅう……」
何があったのかは分からないけれど、クレアはずっと泣いていた。
……クレアが泣く事なんてめったにないばかりか、見た事すらない。
それくらい、私から見ても今の光景は普通じゃないことは明らかだった。
――しばらくして、私は他のみんなに部屋に戻ってもらうよう頼んだ。
なぜかと言えば、クレアは今回の旅行で私の付添い人だし、私が何かあったときに助けなきゃいけないと思ったからだった。
そういう約束でこの旅行に着たんだから。
それに何より、クレアは大事な友達だもんね。
――と、そんな事を考えていると、クレアが私に言う。
「……ルーシェ、さっきはごめんね。本当にちょっと昔のこと思い出しちゃって気が動転してた」
「そうだったんだ……。私もちょっとびっくりしたけど……今は大丈夫?」
「うん、だいぶ落ち着いた。ごめんね、本当に」
「大丈夫、大丈夫!あ、それと、みんなもクレアの事心配そうにしてたよ」
……みんなクレアの事を心配してくれていた。
民宿のおばあさんも突然の事に驚いていたけど、心配そうにしてくれて暖かい紅茶を持ってきてくれた。
「はぁ、みんなに心配かけちゃったよね」
クレアはため息をつきながら言う。
「……心配してくれるからいいんだよ、みんなクレアの事大事に思ってるから心配してくれるんだと思うよ」
「……そんなこと言われると、また泣きたくなるじゃない……っ」
「泣いてもいいと思う、泣きたいときに泣けばいいんだよきっと」
と、私は言ったけど、結局クレアは泣かなかった。
――やっぱりクレアは強いと思う。
私だったら、つらい事とか悲しい事とかあったらずっと泣いちゃうと思うし。
そんな風に思いながら、私はその日を過ごしたのだった――




