Section18
Gilles
ホテルに付いた後、僕たちはみんなで夕食をとっていた。
ルシェルナはお腹が減ってたらしく、黙々と食べている。
ここに来てなんとなく分かったけど、クレアはとにかく大食いらしい。
……その割には太ってる感じとかしないけど、隠れて運動でもしているんだろうか。
「……ジル、えびあげる」
ティアナは僕に嫌いなものを食べてほしいみたいだ。
……というか、それ自分で取ってきたものでしょ。
食べ放題なんだし。
「しょうがないなぁ……食べれないものは今度から取ってこないでよ?」
「……う。だってサラダについて来るんだもん」
まあ、それはしょうがないと思うんだけどさ……
別のサラダにすれば良い話だよね。
とりあえず、ティアナが嫌いなエビを取って、食べてあげた。
……昔からティアナはこんな感じだ。
小学校の頃からこんな感じの関係で変わっていない。
でも昔は、いつも僕に泣きついてくるような感じで、どこか寂しそうというか悲しそうだった。
あの時はティアナも僕もあまり人付き合いがうまくなくて、今のようにはしゃぎまわる子じゃなかったと思う。
いつも寂しがりやでとにかく甘えてた気がする。
……甘えているのは今も課も知れないけど。
でも、次第にみんなと打ち解けるようになって、いつからか自分から話すようになっていた。
ちょっとお転婆でドジなところを抜けば、僕がいなくてもぜんぜんやっていけるような気はする。
……ただまあ、今まで幼馴染として仲良くしてきたのはあるし、なんだかんだでこれからも一緒にいるんじゃないかと思うけど。
「ルーシェちゃん、これどこにあったの!おいしい!」
「このキッシュはあそこに置いてあったよ。隠れててちょっと見えにくかったかも!」
「私もこれ食べる!!」
……今はこれ以上にないくらいみんなと上手くやれてるし。
正直なところは、僕もティアナを見守っていたいと言うのもある。
もちろん幼馴染として、だけど。
「ジル、明日はホテルじゃないんだっけ?」
と、そんなことを考えていたらクレアに質問された。
「そうだね、明日は200年前のアレクシオン戦争の戦場跡とかを回るんだけど、クォンツィアから少しはなれちゃうからそっちの民宿で泊まろうと思ってる」
「あれ?じゃあまだ決めてないの?」
「うん、行ってから決めようと思ってる」
戦場跡が遠いと言うのもあるし、クォンツィアに戻るのに時間がかかるのも考えると、向こうで泊まったほうがいろいろ立ち回りやすいと考えたからだ。
もっとも、次の日には旧アルジェントの首都だったラトフィアに向かうけどね。
そんな会話を挟みながら僕たちは夕食を楽しく食べていた――
――そして4日目。
流石に4日目にもなると慣れてくるもので、みんなもスムーズに起きてきて朝食を取ることができた。
(――早いものだけど、もう半分旅行の半分が終わってしまったんだな……)
こんなに楽しくわいわいと旅行ができるとは思わなかった。
……このまま何もなく、無事に旅行が終われるように責任者として頑張りたいと思う。
「ジル、古戦場ってここなの?」
ルーシェが僕に聞いてきた。
今はクォンツィアからバスに乗って200年前にブロンシェルとアルジェントが戦った戦場跡に来ている。
ここはプレーヴェというところで、旧ブロンシェルと旧ミネラドロワの国境付近にある街だ。
「そうだね、ここは200年前にブロンシェルとアルジェントが戦った場所なんだ」
「そうなんだ、その割にはずいぶんと落ち着いた場所だよね」
確かに今は落ち着いた場所になっている。
近くには僕たちが泊まる予定の村まであるし、とてもこの場所で激しい戦闘があったとは思えなかった。
史実によると何万人の人々がここで戦ったみたいだ。
……ティアナはというと、なんだか楽しそうにルーシェやティアナと話している。
「ルーシェちゃん、昔はここで戦争があったの?」
「……ジルの話ではそうみたい。にわかには信じられない話だよね」
「うん、なんか私ハイキング気分だよー」
ティアナの言うとおり、何も知らない人がここに着たら、ハイキングがしたくなるような場所だと思う。
周りには自然が広がっていて、遠くには山が連なっているし、近くの村の周りには麦畑が延々と広がっている。
ここに来て楽しむのは不謹慎とか、そういうことを考える必要は……ないのかもしれない。
もちろん、目的は戦場跡を散策することなので、あまり変わらないとは思うけど。
「ねえジル、ここでの戦争について知ってること教えてくれない?」
そんなことを考えていると、クレアが僕に話しかけてきた。
……クレアが歴史の事を聞いてくるなんて珍しい。
僕としては嬉しいんだけどね。
「いいよクレア、何が聞きたい?」
「その、どんな感じの戦いだったのかなって思って」
「ええと、規模としてはかなり大きなものだったみたいだけど、あんまり長くは続かなかったらしいよ。アルジェントがシュヴァルツと一緒に同盟したのは結構遅くから
だったからね」
アルジェントは、シュヴァルツがブロンシェルとミネラドロワに宣戦布告した後に参戦した。
だから、当時はシュヴァルツがブロンシェルやミネラドロワに侵攻していたので追い討ちと言う事になる。
それだけにブロンシェル、ミネラドロワ側は混乱して、アルジェント参戦後に一気に崩されてしまったらしい。
そして崩された中で一度体制を立て直して、もう一度対峙したのがこの場所だった。
結果的にはブロンシェルは負けてしまい、ここはアルジェントに占領されることになる。
……さらにその後、シュヴァルツがアルジェントを裏切った際にも、逃げてきたアルジェント側の民間人や兵士たちが多くここに留まったとされているようだ。
僕が説明し終えるとクレアはお礼をいってくれた。
「……説明ありがとう、なんだかこの風景って懐かしさを感じるのよね」
「懐かしさか、確かにこんな綺麗な風景を見てるとそういう気分になるかもしれないね」
たまに吹いてくる風が、いっそう心地良い。
まるで子供の頃、無邪気に風を切って遊んでいたのを思い出すかのようだ。
……そういう意味では懐かしさを感じるのも不思議ではないと思った。
そして、しばらく僕たちはまた歩き続けるのだった――




