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エデンオブ・オーディール  作者: 斑鳩恭


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初戦(デビュー戦)

「おぇっ……きもちわるっ……」


 ヒナタは異次元ゲートを潜り終え、舞台のある次元へと辿り着く。

 「異次元酔いなんかしない」と豪語していたが、めちゃくちゃ酔っていた。

 潜った瞬間、身体がぐにゃりと歪み、自分が今どこに立っているのかもわからない。

 まっすぐ歩けているのか。左右に傾いてないか。そもそも実態を保てているのか。

 異次元ゲートの中では、そんなことしか考えられなかった。


 ヒナタはゲート側に置いてある液体を飲み干すと、舞台上まで再び歩き始める。

 液体はハルナが言っていた酔い止めの薬だ。即効性があり、すぐに酔いも治まる。


「さて、俺の対戦相手は……」


 反対側のゲートから出てくる人影。

 見た感じだと、俺とそう年齢は変わらない。思い描いていた新人って感じだ。


「あ、えと……よろしくお願いします」


 俺と目が合うなり、丁寧に会釈をする。

 礼儀正しい子だ。こういう子が将来強くなるんだろうな。

 

「……はい!それでは選手両名揃いましたので、始めさせていただきますっ!!」


 頭上のモニターにハルナと会場の様子が映る。

 向こうのモニターには俺らの様子が映っている。こうすることで、向こうに被害を出すことなく試合を進められるってわけだ。


「えっと……まず赤ゲート側! 齢12にして真名(ふたつな)を与えられた期待の新人!

 『原子(アトミック)操作(オペレーター)』ハウメト・モーナリアっ!!」


 ハルナの紹介に会場が湧く。

 モニターのスピーカーから出る音が割れている。


「続きまして青ゲート側! 違う部分は髪の色だけっ!それ以外はかの有名な剣姫様!

 ヒナタ・イツキっ!!」


「ヒナタさーんっ!がんばれー!!」


 こちらの紹介でも会場が湧く。

 その中でひときわ目立って聞こえたのがリニアの声援だった。


「では、両者開始位置に立ってくださいっ!」


 ハウメトとヒナタは同時に開始位置に着く。

 こちら側も会場側も、静寂が流れる。

 そして。


「開始ッ!!」


 ハルナの合図とともに、両者一斉に後ろに下がり、上空へ跳ぶ。

 お互い先制を牽制し、守りへと回る。

 ハウメトは空気を高密度に圧縮し、空壁を張る。

 ヒナタは――

 

「――ッ!?」


 瞬間、ハウメトの目の前に剣を構えたヒナタが現れる。

 さっきまで対の位置にいた彼が、一瞬にして目の前に現れた。

 ハウメトは思考をフル稼働させる。


―――速っ!? 空間移動(テレポート)!?それとも、座標移動(ムーブシフト)!?

   な、なんにせよ、ただ速いだけのスキルだ。それなら僕にだってできるっ!!


 ハウメトは足元の空気分子をつま先に集中させ、局所的な高圧領域を発生させる。

 その空気を下方向へ押し出し、上方へと加速する。


「……へっ、逃げたって無駄だぜ」


 ヒナタもすかさずハウメトを追う。

 もはや鬼ごっこ状態だ。逃げるハウメトを追うヒナタ。


―――な、なんで!? なんで追いついてこられるの!?

   こうなったら……


 ハウメトが手を広げる。

 その瞬間、彼の周辺がバチバチと音を立て始める。


「『雷禍』!!」


 彼が手を叩いた瞬間、プラズマが発生する。

 彼の能力で空気を電離させ、プラズマを発生させたのだ。

 だが、ヒナタは構わず突っ込んでくる。


「な、何で効かないのっ!? ま、まさか速すぎて――」


「んなわけ、ねぇーだろっ!!」


 ヒナタの一振りが、ハウメトを一刀両断する。

 大して強くもないただの木刀だ。だが、ヒナタが握るとどんなモノも一瞬にして一刀両断できてしまう剣に変わってしまう。ただ、モノをそう言う性質に変えたわけじゃない。

 ただ、攻撃力を自在に掛け算しただけだ。それだけでこのような威力となる。

 それが1つ目のスキル『真化(バフ)』。

 プラズマに突っ込んでも無傷だったのは2つ目のスキル『守護者(ガーディアン)』のおかげだ。

 これも真化とほぼ一緒だ。防御力を自在に掛け算する。それだけで、剣で刺されても逆に剣が折れてしまう身体の出来上がりだ。

 そして最後3つ目『加速(アクセラレート)』。文字通り加速するスキルだ。

 だが、ただ加速するだけじゃない。これも掛け算だ。掛ける数字を少しいじるだけで、車の法定速度ぐらいにもなるし、超音速にもなる。


 つまり、最強ってことだ。


「勝者、ヒナタ・イツキ選手―っ!!」


 ハルナの勝利コールと共に歓声が湧き上がる。

 試合時間は47秒。この大会始まって以来の最速記録だ。


「ちょっとはしゃぎすぎたか。次はもう少し抑えよう」


 俺はそう反省し、ギルドへと戻るのであった。

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