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星を埋めた少女  作者: 神木ジュン
王都編2
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92話 調べ事はこっそりと2

 ゆらゆら揺れる灯りに照らされた刃が、鈍く光る。自室に籠もったレティシアは、ペーパーナイフ片手に考え耽っていた。


『輝星石(きせいせき)はただの鉱石ではない。その昔は奇跡の力を宿すといわれた特別なもの。奇跡の力が結晶化したものという説もあったな。輝星石で鍛えた剣はそれはもう美しく、古(いにしえ)の戦いで活躍したという』


 変人職人爺が語っていたあの話。あれを聞いた直後からずっと引っ掛かっていた。これがその剣かどうかではなく、かつて輝星石に力があったということに。


(その力が奇跡の力ではなくて、古(いにしえ)の力だとしたら……)


 常識では考えられない現象を引き起こす、第五区に漂う力。あれは昔から存在していたものであり、自然が作り出した輝星石(鉱物)ならばその時代には既にあったはず。だから門(アトロプ)を作る鍵のように、輝星石に力が宿っていたとしても不思議はない。


(古の戦いで古の一族(まじょ)を倒したのは、初代国王の奇跡の力じゃなくて古の力だったんじゃないのか?)


 古の力と古の一族の力は近しいものだと聞いたことがある。その古の力の存在を初代国王は知り、それをあたかも自分の力のように振る舞い、古の一族を滅ぼした。


(こっちの方がよほど現実的な話だ)


 レティシアは嘲るように口元を歪めた。とはいえ、今の輝星石に力はない。力があれば今も王家が独占しているはずで、宝石として国内外に流通させないはずだ。


(輝星石の力がなくなったのは、表(こっち)から古の力が失われたのが原因か)


 だとすると、まだ力が残っている第五区に輝星石を持って行けば、力が蘇るのではないか。そう考えて、けれどすぐに否定した。


(そのくらいで力が使えるようだったら、凶賊たちは国中の輝星石をかき集めて、特殊道具として利用していたはず。それに)


 レティシアはペーパーナイフを使おうと試した幼い頃のことを思い出す。ヴァッセにこっぴどく叱られただけで終わった、あの日のことを。


 あの時なにも起こらなかった理由は『災厄』が起こっていなかったから。ただ肝心の条件である災厄が何なのかわからない。考えられる第五区での災厄といえば、むかし大変なことになったという第五区(とち)が目覚めたということになるのだが。

 問題はいつ土地が起きるのかは誰にもわからないし、例え今起きたとしてもレティシアにはあちらに行く術がないので、確かめようもない。


(だいたい土地が目覚めた時にこんなちっぽけなナイフで何をしろってのよ)


 いいところ、物資を巡る争いが起きた時の護衛用の武器として使うのだろうか。


(うーん、他にヒントになりそうな輝星石の力に纏わる伝え話はないのか?)


 例えば炭の代わりになったとか、投石に使うと威力倍増したとか。


「……。そんなんじゃ伝説にはならないわ」


 自分で考えておきながら、想像力のなさにため息を零す。建国神話以外に何か伝説らしい伝説を知らないか、唸りながら頭を巡らせ、ふわふわ系令嬢が言っていた港町の女神の伝説を思い出した。いかにもクラリスが好きそうな作り話を。


「ん……? 義姉(ねえ)様が好きそうな話……?」


 なんかあった気がしたレティシアは、記憶を手繰り、はっとした。


(あったじゃない)


 まさしく輝星石の伝説、いや、謳い文句が。


 あの店の場所はなんとなく覚えてるから、いつでも行ける。問題は、レティシアがそういうものに興味関心がないと知っているリベルトをどう欺くかだ。何か店に行く理由を作らなければ。


(義姉様はもう結婚してしまったからな)


 前のように言い訳に悪用することはできない。


(急いでるわけじゃないから、義姉様とお茶の約束でも取り付けて、その準備のためってことにするか……)


 友人がいないために、頭を悩ますレティシアだったが、その悩みは突如翌日に解決する。

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