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星を埋めた少女  作者: 神木ジュン
第五区編
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80話 モンテアーノ家1

 複数の凶賊に不審な動きが見られたのは半年以上前。けれどその尻尾すら掴めなかった。金や武器が流れているのなら、怪しい影くらいあるはずだというのに。


「だからもしかしたらとボスは言ってたんだが……こないだの襲撃で確信した。街を破壊したのは戦争兵器の類いじゃァねェ。魔女の呪いだ」


 (アトロプ)を潜った直後、一瞬だが建物という建物が一斉に四方に砕け散るのを見た。


「いや砕けたというよりも、破裂したという表現が合ってるだろう。そんな芸当ができる武器なんざ、オレは知らねェ」

「確かに現状の武器では無理な話だな」


(黒幕が魔女、か……。あり得るな)


 ヴィンセントは冷静に考える。魔女は国家の敵であり、貴族や凶賊を操って国家転覆を狙っていても不思議ではない。それにもし魔女の仕業ならば、レティシアが誘拐された際のあまりにも不可解な状況に説明がつく。しかし現時点では推測の域を出ない。


「その攻撃が魔女の仕業だという確信はあるのか?」

「ある。土地が動きはじめたのがあの破壊が起きた直後だった」

「その『土地が動く』とは、どういうことなんだ? 道が変わるという現象のことか?」


 確信の理由がわからず、ヴィンセントが尋ねれば、カイはそれも影響の一つだと答える。


「なんというか……この土地には力が宿っている。(いにしえ)の時代には表にもあった力だ」


 しかし古の時代が終わるとともに、この地の力は眠りについた。ただしなくなったわけではないから、微量の古の力が漂いつづけていた。その力を利用したものが(アトロプ)だという。


「最後に土地が起きたのが百年くらい前だったか。ここの長老の話によると、そのときに土地が目覚めて今の地形になったらしいんだが、目覚め方が悪かった。無理やり叩き起こしたようなものんだったから、機嫌が悪くなったらしい。それから一日の長さや道がしょっちゅう変化するようになったと聞いてる」


 つまりそれまでは普通の土地だったということだろう。そんなことを思っていれば、カイは赤茶色の瞳を向けてきた。


「そして土地が目覚めた理由は、生まれた魔女の力に呼応したからだ」


 ヴィンセントは息を飲む。およそ百年前の出来事なら、かつて処刑された魔女の母親だろうか。


「魔女と土地の力はどのような関係があるんだ? 今の口ぶりでは、まるで二つが連動しているように思えるが」

「連動も何も、魔女の力も土地に眠る古の力も同じ力だ」

「!」


 ヴィンセントは瞠目した。ただの人間が特別な道具で記号を書くだけで、不可思議な力を利用できると知った時点で疑念はあったが、まさか全く同じ力だとは思わなかった。これは想像していた以上の脅威になるかもしれない。


「門の他に古の力を使ったものはないのか?」

「さァな」


 知っているが教える気はないという返答がきた。カイを問い詰めて聞くこともできなくはないだろうが、それで協力を拒まれた方が困るので、ヴィンセントは別の質問をした。


「では長老とやらに会うことはできないだろうか?」

「無理だな。あのジジイは神出鬼没。こっちから連絡は取れねェし、この分じゃ探しようもねェ」

「そうか」


 せめて魔女が生存している証拠があれば、黒幕に魔女がいるという話が真実味を帯びると思ったのだが。そう思ってふと思い出した。


「……ところで、ここは古の時代の建物か?」

「だろうな。オレも詳しいことは知らねェ。ボスが見つけて、避難場所にしたとは聞いた」

「では私たちと遭遇した、星堂(せいどう)のような場所もお前たちの避難場所か?」

「いや、偶然繋がっていただけの場所だ。だいたいこんな地下に来ることはほぼねェからな」

「ならば過去にあの場所に行って、模様を書いたこともないのだな?」

「ない」


 ということはモンテアーノ家以外の人間があの場所で、あの黒い紋様を描いたということ。そしておよそ百年前に生まれた魔女。ならばあの黒い模様は、この地で生まれた魔女が書いた呪陣の可能性が高いだろう。

 ヴィンセントは呼吸を整えると、カイを見据えた。


「改めて言わせてもらう。我々と手を組まないか? 軍の方は私が話を付ける。話が通れば私がそのまま窓口になるだろうから、援助に関しても多少は融通できるだろう」

「だからさっきも言っただろうが。オレたちは」

「そうすれば、レティシア嬢をこの件にも、お前たち一家にも関与させないと約束する」


 カイが言い終わらぬうちにヴィンセントは切り札を出した。モンテアーノ家のボスはレティシアを一家から遠ざけようとしていたし、最初に取引きを持ち掛けた時よりも、カイは揺らいでいるように見えた。ならばここは畳みかけた方がいい。

 カイは眉を顰めてしばらく黙っていたが、


「……よくやるなァ。まさか軍人が令嬢アイツを人質にするとはな」


 大きなため息を吐きながら、事実上の降参宣言をした。ボスが死んだとわかっても、彼の出した命令を守るつもりのようだ。


「誉め言葉として受け取っておこう」

「……ただテメェは一つ勘違いをしてる。ボスはアイツを助けたんじゃねェ。自分の不始末の責任を取っただけだ」


 カイは苦い顔をした。

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