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僕の可愛い娘たち  作者: 881374
第四章、父と娘(タブー・ラブ)。
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第四章、その一

  四、父と娘(タブー・ラブ)



「もうっ。あのボンボンってば、むかつくう! さっそくおじいちゃん──お母さんのお父さんに、私たちのことを告げ口したりして。お陰で散々お説教されたりお父さんのことを根掘り葉掘り聞かれたりして、大変だったんだから!」

 とてもお嬢様にあるまじきエキサイティングした御様子で言葉を紡いでいく、深紅の唇。

 先日以来二度目の『おやデート』においても、相変わらず絶好調の会長殿であった。


 今日はよりによって地元も地元、昼食後の腹ごなしにしょの中を連れ立って散策しているのであるが、当然のようにうちの学園の体育会系クラブの部員たちがランニングしていたりして、すれ違いざまにまじまじと見つめてくる目が非常に痛かったりするお年頃であった。

「へ? ということはあのおぼっちゃんて、会長のお父上と知り合いだったわけ?」

「──うぐっ。あ、いや。特に知り合いというわけでもなくて、極普通の上流社会のコネといった感じなの」

 何だかごまかされたようでもあるが、上流社会と言われれば反論のしようのない一般庶民の少年であった。

「……それで、会長のお父上は、何と?」

「ふんっ。あの手合いの言うことなんて、いつだって同じよ! 家柄がどうの身分がどうの庶民がどうのって、ほんとワンパターンなんだから。だから言ってやったの。お父さんが名門進学校である我がいまがわ学園でも並ぶ者なきエリートで、入学以来ずっと首席を独占していて誰よりも将来有望だって。それにどうせ我が家は一人娘の私が継ぐんだから別に旦那になる人には地位や財力なんか必要なく、むしろ個人的資質のほうが重要なわけなのであって、そういう意味からもお父さんのような人こそが格好の婿養子候補じゃないかって!」

 な、何を勝手に僕の学園における個人情報を、部外者に言いふらしているんだよ⁉ しかも人のことを断わりもなく、自分の父親に売り込むんじゃない!

「娘からそんなことを面と向かって言われて、お父上はさぞかし御立腹なされたのではないのか?」

「それが意外にもしばらく沈思黙考したあとで急に態度を一変して、『いや、まさかおまえがそんなにしっかりした考えを持っていたとはな。そういうことなら話は別だ。その方とも存分にえにしを結びなさい』なんて言い出すものだからびっくり仰天。案外話せばわかるオヤジだったのねえ」

 こらこら。自分の父親(彼女の邪気眼設定上では祖父)に対して、オヤジはないだろオヤジは⁉ つうかお父上のほうも、娘の口車なんかに簡単に乗るんじゃねえ!

「うふふふふ。つまりこれで晴れて私たちの仲は、父親公認になったわけよね♡」

 そんな意味深なことを言いながら、いきなりしなだれかかってくる上級生。

「お、おいっ。こんなところでじゃれつくんじゃない! もう少し他人の目を気にしろよ⁉」

「こんなデートのメッカで少々いちゃついたって、誰も気にしないわよ。まさか知り合いに出くわしたりもしないだろうし」

 未来から来られたあなたはそうでしょうが、こっちは地元なんだよ!


「──あれ? そこにいるのは、赤坂あかさか君ではないか」


 そのとき唐突に後方から聞こえてくる、耳馴染みの少女の声。

 ……ほら見ろ。いらんフラグを立てたとたんにこれだ。噂をすれば何とやらじゃないけれど、こういった場合『出くわさない』と言ったら『出くわしてしまう』ことになっているんだよ! 未来ではノベルゲームやギャルゲは流行っていないのか?

 恐る恐る振り返れば、そこにいたのは予想通りに「──って。部長⁉」

 まさしくこれぞ、『予想は裏切るが期待は裏切らない』といったところか。声を聞いたとたん確信した通り今僕の視線の先におられるのは間違いなく我が敬愛なる文芸部部長であるたつエリカ嬢なのであったが、それは彼女であってもいつもの彼女ではなかったのだ。

 ざっくばらんな性格や言葉遣いゆえにどこか男っぽさすら感じさせる普段の制服姿とは一変して、メリハリのきいた長身の上半身にはいかにもフェミニンな短めのサーモンピンクのキャミソールをまとい、ほっそりと長いおみ足を包み込むのはローライズのジーンズというダブルコンボによって、見事に『へそ出しルック♡』を決めておられたのでした。

 うわあ。ただでさえ地が特上品なんだから、こんな格好をしたら更に破壊力が半端じゃないよな。いつもは大人びた雰囲気さえも感じさせる肩口で切りそろえられた黒髪や彫りの深く整った小顔に深遠に煌めく黒檀の瞳さえも、こうして見るとむしろ女性ならではの可憐さこそが強調されてくるから不思議なものである。

「……そんなにまじまじと見つめないでくれないか。こういったプライベートな格好をしているのを知り合いの男性に見られるのは、かなり気恥ずかしいものがあるのだよ。──特に相手が女性連れのときなんかはね」

 心持ち頬を朱に染めながら僕の視線を遮るようにして、おへそを右手で隠してしまう、フェミニン部長さん。

 いわゆるギャップ萌えの極みではあるが、ぼけっと見とれている場合ではない。彼女の言葉通りに僕の腕の中には依然として、突然の超絶美少女の登場にすっかり硬直したまますがりつき続けている会長がいたのだ。

 我に返るや己の『娘』を突き飛ばすようにして身を離す、まるで浮気の現場を本妻に見つかってしまったダメ亭主のような平部員。

「──きゃっ! ちょっと、お父さん⁉」

「ぶ、部長! これはあくまでも、ちょっとしたアクシデントでして。何せ突然空から隕石が落下してきたもので、慌てて避けようとして抱き合う形になってしまい──」

「ほう。彼女が噂の赤坂君の娘殿かい? ふむ。確かに外見は生徒会長殿ではあるけれど、中身のほうはどうやらまったく違うようだね。あくまでも私の判断基準にのっとれば、いっそ別人と言っても差し支えないほどにね」

 部長の意味深極まりない言葉に、再び身を強張らす御所デート中の二人。

「それって、どういう……」

「私の基本的ポリシーとしては、その人個人を決め得るのは外見ではなくあくまでも中身のほうだと思っているのだよ。君だってこんな普段ではけしてあり得ない格好をしているというのに、一目見るだけでちゃんと私だと認識してくれただろう?」

「……ええ、それはそうですが」

 かなり度胆を抜かれはしたがな。

「しかし彼女は以前の会長と外面的には少しも変わってはおらず着ている服も彼女らしいものであるのにかかわらず、君に対する態度や醸し出している雰囲気がまったく別人になったかのように思われるわけなのだよ」

 うっ。鋭い。やはり物の本質を見極めることのできる人って、着目する点が他の人とは違うんだなあ。

「いや、気分を損ねたのなら謝るよ。けして君の話を信用していなかったわけではなく、やはり何事も自分の目で確かめてみなければ納得できなくてね。まあこれも私の悪い癖と思って堪忍してくれたまえ。──おっと、いけない。いつまでもデートの邪魔をしていたんじゃ、そろそろ馬に蹴られてしまいかねないな。それじゃ私はこの辺で失礼させていただくことにするよ。では、良い一日を♡」

 そのように言いたいだけ言い終えるや、あっさりと踵を返して立ち去っていく部長殿。

 そしてあとに残ったのは、メガトン級に重苦しい空気のみであった。

「……お父さん」

「は、はひっ⁉」

「今の方は、いったいどなた様かしら?」

「へ? どなた様って。僕の所属クラブの、文芸部の辰巳部長だけど……」

 あれ? 自分と同学年だというのに、これまで一度も面識がなかったのか? しかも生徒会長ともあろう者が、文芸部の部長を知らないなんて。

 ……まあ、あまり接点のなさそうな二人ではあるが。

「ふうん。あの人が部長さんだったわけねえ。──あんな()()がねえ」

「は? び、美人て」

 思わぬ指摘に面食らう僕のほうへとつかつかと歩み寄ってきて、唐突に耳を引っ張るお嬢様。

「──痛い痛い痛い痛い! それに顔が怖いよ! 何だよその、黒々とした邪悪なオーラは⁉」

「私や生徒会の仕事をほっぽってやけに熱心に部活に精を出していると思ったら、あんな美人と会っていたなんて。この浮気者! 密室の中で二人っきりになって、いったい何をやっていたのよ⁉」

「な、何って、もちろんそれは文芸部としての部活であって……ちょっと、グーで手加減なしに連打してくるんじゃない!」

「きーっ、くやしい! あれだけ散々モーションをかけているのに全然お母さんになびかないと思っていたら、あんな美人の本命がいたのね⁉ うかつだったわ。デフォルトで幼なじみとかクラス委員とかの並み居る美少女たちを周りに侍らせていたからあの子たちさえ牽制ガードしていれば大丈夫かと思っていたのに、まさかあんな隠し玉を温存していたなんて!」

「──ちょっ。僕は別にアズサや委員長を侍らせたりなんかしていないし、部長とは部室で普通にSF談義等をやっているだけであって、別にやましいことなんて何一つないからな⁉」

「ふん。嘘おっしゃい。幼なじみの親友と隠れてキスをしているような男の言うことなんか、信用できるものですか!」

 うっ。それを言われると、返す言葉もありません。

「こうなったら私だって、もう手加減なんかしないから! 絶対にお父さんをお母さんだけのものにして見せるわ! ──こうしちゃおれない。今すぐ準備にとりかからなくっちゃ!」

 そう言うや僕のことを置き去りにして、ダッシュで走り去っていく会長殿。

 あとに残るは事態の急変についていけずただ呆然と立ちつくすばかりの、哀れな男一人きりであった。

 このたびは『時間SF=ギャルゲ⁉』をキャッチフレーズとする、これぞタイムトラベル物の革命作にしてアンチSF小説の急先鋒、『僕の可愛い娘たち』第四章第一話をお読みいただき、誠にありがとうございます。

 この作品は『第六回ネット小説大賞』応募記念新作長編三シリーズ日替わり連続投稿企画の第二弾作品でありますゆえに、次話投稿の前に他の二シリーズ──第一弾の『ツンデレお嬢様とヤンデレ巫女様と犬の僕』と第三弾の『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』のそれぞれの最新話の投稿が間に挟まれることになるので、次回第四章第二話の投稿は三日後の2月22日20時ということになります。

 少々間は空きますが、お待ちになられてけしてご損はさせませんので、どうぞご期待ください。

 なお、ご閲覧をお忘れにならないように、ブックマーク等の設定をお勧めいたします。

 もしくは皆様のご要望が多ければ、この作品単独での『毎日投稿』も考慮いたしますので、そのようなご意見やご感想等がおありでしたら、ふるってお寄せください。

 次話の内容のほうにちらっと触れておきますと、「ついに夜這いをかけてくる『未来の娘』を名乗る美少女生徒会長だったが、それによって主人公の思わぬ本心が明らかなってしまって⁉」──てな感じで、いよいよ主人公とヒロインの関係性が激変する、本編最大のターニングポイントを迎えようとしております!

 ちなみに明日2月20日20時にはもはやおなじみの、量子論と集合的無意識論とで『後期クイーン問題』を解き明かす、まったく新しいSF的ミステリィ小説『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』の第二章第六話を投稿する予定でおりますが、これまた具体的な内容に少々触れておきますと、「今回は何と大河ドラマそのままの、華麗なる戦国絵巻が繰り広げられて⁉──と思わせておいて、いつしか作中作の中に本編のほうが取り込まれていってしまうといった、トリッキーな様相を見せ始めて⁉」──てな感じとなっております。

 ……何となく881374お得意のメタ路線を匂わせておりますが、大丈夫です! 次回は間違いなく、作者にしては珍しく全編的に『感動路線』ですから (※あくまでも当社比)

 もちろん何よりも肝心な『面白さ』に関しても、本作『僕の可愛い娘たち』に勝るとも劣らないと自負しておりますので、こちらのほうもどうぞよろしくお願いいたします!

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