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僕の可愛い娘たち  作者: 881374
第三章、夏休み(アヴァンチュール)。
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第三章、その二

「──ほう。君もなかなか『娘さん』の扱いに慣れてきたようではないか」

 僕の話を一通り聞き終えるや、その上級生はいかにも感服したかのようにそう言った。


 彫りの深く整った小顔の中で、黒檀の瞳を興味深げに煌めかせながら。


 全開の窓から注ぎ込むわずかなそよ風だけではとても太刀打ちできやしない夏の昼下がりの文芸部部室にて、最近やけに興味を持ち始めた部長のリクエストに応じて会長の近況をかいつまんで報告していくという、ほとんど日課のようなお役目を果たし終え、ほっと一息つく平部員の少年であった。

 まあSF小説家志望者としては、自称とはいえ未来から来たなぞと豪語している人物を調査分析したいと思うのも、至極当然なこととも言えるかもな。

 もっとも当事者にしてみれば、とても小説のネタにする気なんて起きないんだけどね。

「しかしそれはそれで、少々まずいかも知れないな……」

「へ?」

 突然こぼれ落ちてきた意味深な言葉に振り向けば、少女の表情が真剣極まりないものへと変わり果てていた。

 やばっ。これっていつもの蘊蓄長ゼリフをおっ始める前の、先触れみたいなものなんだよな。

「まずいって、何がですか?」

「もちろん君が現下の異常なる状況に、あまりにも適合し過ぎていることがだよ。いくら元々流されやすい性格とはいえ、自分が置かれている立場にもう少し疑問を持つべきではないのかい?」

「いや、疑問なら十分持っているつもりなんですけど……」

「どこがだね。だいたいが、あこがれのお嬢様生徒会長が突然自分の家に押しかけてくるなんてラブコメもどきのイベントが、現実にあり得っこないだろうが。いいかい、君がまず疑問に思うべきなのは、もしかしたらこの世界そのものが、SF小説やライトノベルであるかも知れないということなのだよ?」

 いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。

 それを言っちゃおしまいでしょうが⁉ たとえ非商業アマチュア作品であるW○b小説であろうが、安易なメタは御法度ですぞ!

「な、何を言い出すんですか? この現実世界がSF小説やライトノベルかも知れないなんて、そんなことあり得っこないではないですか⁉」

「やれやれ。君こそいったい何を聞いていたのかね? 前にも言っておいたではないか。我々がいるこの現実世界においては、けしてSF小説のようなことは起こり得ないと。そう。しょせんSF小説みたいなことは、SF小説やそれに類するラノベやゲームの中でしか起こりっこないのであって、つまり自ら『未来から来た』だの『あなたの娘なの』だのとまさしくSF小説もどきなことを言い続けている会長殿は、もはや虚構フィクションの存在になってしまったようなものなのであり、それに対して確固たる疑問も持たず迎合するばかりの君自身さえも、今やほとんどSF小説やラノベの登場人物になりかけていると言っても過言ではないのだよ」

「そんな、それはあまりにも極論すぎるでしょう。いくらSF小説的なことが起こったからって、それが現実のものであるかどうか検証する前に一足飛びに、そんな不可思議なことは現実には起こり得ないのだから、この世界そのものが小説やゲーム等の虚構フィクションであるに違いないと決めつけるなんて。それに未来人であるとか僕の娘であるとかいかにも電波的なことを言い張っているのは、この広い世界の中で今のところ会長一人だけじゃないですか⁉」

「それこそが問題なのだよ。彼女は未来から精神体だけでやって来たと言っているそうだけど、我々からしてみればそれが事実なのか虚偽なのか確かめようがないわけなのだ。つまりは彼女が本当に未来人の精神体である可能性も、けして否定できないということなのだよ」

 ──っ。そうだ、そうだった。僕だってそれは重々承知していたはずなのに、いつしか目の前の状況に流され続けて、すっかり忘れ果ててしまっていたんだ。

「君はもし彼女が本当に未来人だったとして、それをあくまでも現実のものとして受け容れることができるのかい?」

「そ、それは──」

 思わず言葉に詰まってしまう、哀れなる平部員。

 しかしそれを見た部長殿は、むしろいきなり表情を和ませた。

「うんうん。上出来だ。君のその反応こそが『正解』なのだよ。普通自分の目の前に未来人が現れたというのに、『はいそうですか』と受け容れるほうが間違っているのさ。未来人とか宇宙人とか異世界人とか超能力者などといった者たちはあくまでも虚構フィクションの存在なのであり、現実世界に現れることなどけしてないのだ。なのに小説の主人公という輩は、あまりにもそのような非現実的存在を易々と受け容れようとするから始末に負えないのだ。己自身それまで散々存在そのものを否定し続けてきたくせに、ちょっと不可思議な現象を目の前で見せられただけで手のひらを返すようにして認めだしたりして。現実に起こり得ないことを認めてしまうということはすなわち、自分自身すらもSF小説やライトノベルやゲームなどの虚構フィクションの世界の住人であることを認めるも同然なのにね」

 あー。つまりラノベの登場人物がいかにもラノベ的なイベントを現実のものだと言い張るのは、夢を見続けている者があくまでも夢の中で「これは現実だ」と言うようなものだということかな?

 確かに我々からすればラノベや夢の中で起こっていることはとても現実のものとは思えないけど、現にその世界にいる者にとってはそれこそが『現実』なのであって、よほどのことがない限り夢の中でそれが夢だと気がつくことができないように、どんな不思議な出来事が起きようとも、ラノベの登場人物が自分がラノベの登場人物であることに気づくことはあり得ないというわけか。

 まあ、未来人や宇宙人や異世界人や超能力者が目の前に現れたとたんに自分がラノベの登場人物であることに気づいたりすれば、そこで話が終わってしまうからな。

「以上のことを踏まえて改めて聞くけど、君はあまたのSF小説やラノベの主人公同様に、このまま状況に流されていって会長のことを本当に未来人だと認めてしまうことで、自分自身をも虚構フィクションの存在にしてしまうつもりなのかい?」

「いや。正直に言って、確かに僕はこのところだんだんと会長が本当に未来人でも構わないんじゃないかと思い始めてはいますが、だからといって自分のいるこの世界の現実性まで否定するつもりなんてないんですけど……」

「うむ。よく言った。ある意味この一連の異常事態における『主人公』的立場(ポジション)にいる君がそういう考えならば、まだまだこの世界は大丈夫だ。ふふふ。安心したまえ。現状の異常性をある程度認めながらも、ここが現実世界であることを護り続ける方策ならちゃんとあるのだから。──そう。結局のところ会長ただ一人だけが、いわゆるSF小説的な邪気眼妄想に取り憑かれているということにすれば、すべての異常事態にきちんと説明がつき、我々の世界の現実性を完全に護りきることも可能となるのだよ」

 ──あ。

「つまりは元々SF小説やライトノベルの登場人物はすべて、邪気眼を患っているようなものなのさ。何せタイムトラベルとか学園異能バトルとかハーレムラブコメとかいったものは、あくまでも我々現実世界の人間の視点から見れば、まさしく邪気眼妄想そのものでしかないのだからね」

 そ、そうか。さっきの例で言えば会長は自分が未来人であるという夢を見続けていて、僕はその中に取り込まれかけていたっていうわけなのか。

「ということはやはり部長は、すべては会長自身の妄想にすぎないと思ってらっしゃるわけなのですね?」

「だからもはや私の考えがどうしたとかいう話ではなく、彼女が邪気眼なのかこの世界自体が虚構フィクションにすぎないのかの二択でしかないわけなのだよ。──もっともそれを決めるのは、案外君自身なのかも知れないがね」

「へ? どうして僕が……」

 ここに来ていきなりの思わぬ言葉に面食らう平部員に対して、部長殿は厳かに宣った。


「言っただろう? 君こそがこの一連の事態イベントにおける、まさしく主人公的立場(ポジション)にあるって」

 このたびは『時間SF=ギャルゲ⁉』をキャッチフレーズとする、これぞタイムトラベル物の革命作にしてアンチSF小説の急先鋒、『僕の可愛い娘たち』第三章第二話をお読みいただき、誠にありがとうございます。

 この作品は『第六回ネット小説大賞』応募記念新作長編三シリーズ日替わり連続投稿企画の第二弾作品でありますゆえに、次話投稿の前に他の二シリーズ──第一弾の『ツンデレお嬢様とヤンデレ巫女様と犬の僕』と第三弾の『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』のそれぞれの最新話の投稿が間に挟まれることになるので、次回第三章第三話の投稿は三日後の2月16日20時ということになります。

 少々間は空きますが、お待ちになられてけしてご損はさせませんので、どうぞご期待ください。

 なお、ご閲覧をお忘れにならないように、ブックマーク等の設定をお勧めいたします。

 もしくは皆様のご要望が多ければ、この作品単独での『毎日投稿』も考慮いたしますので、そのようなご意見やご感想等がおありでしたら、ふるってお寄せください。

 次話の内容のほうにちらっと触れておきますと、「もはや完全に自分の『未来の娘』になりきってしまっている、絶賛邪気眼妄想中の美少女生徒会長と『父娘デート』をしているうちに、いつしか主人公の胸中に去来したえも言われぬ『特別な感情』とは? そしてそんな彼に前に突然現れた、驚くべき新登場人物とは!?」──てな感じで、名実共に重大なるターニングポイントを迎えております!

 ちなみに明日2月14日20時にはもはやおなじみの、量子論と集合的無意識論とで『後期クイーン問題』を解き明かす、まったく新しいSF的ミステリィ小説『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』の第二章第四話を投稿する予定でおりますが、これまた具体的な内容に少々触れておきますと、「またしてもやりたい放題の881374、作中作とはいえいきなり途中でロリロリのJSヒロインが、一応美少女だが正反対の大人の魅力のクールなJKなどという、まったく別タイプのキャラに変わってしまうのはいかがなものか? ちゃんと読者様のニーズというものを考えているのか? しかも相変わらずどこかメタっぽいし……」──てな感じとなっております。

 ……作者自身、「本当にこんないい加減な内容でいいのだろうか?」と、思わずうなり声を上げそうになっておりますが……大丈夫です! これはこれで『ラノベの皮を被った超本格的量子論SF的ミステリィ小説』としては間違っておらず、絶対に期待は裏切りませんから!

 もちろん何よりも肝心な『面白さ』に関しても、本作『僕の可愛い娘たち』に勝るとも劣らないと自負しておりますので、こちらのほうもどうぞよろしくお願いいたします!

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