尾張との同盟
この戦での織田家の被害は甚大であった。
死者はおよそ五千人。
さらに信秀の弟の織田信康、三奉行と呼ばれていた織田達広、信長付き家老の青山与左衛門、熱田大宮司家の千秋紀伊守李光、毛利十郎、家老であった寺沢又八、毛利藤九郎、岩越喜三郎をはじめとする五十人あまりの将が討ち死にした。
一方でこちらの損害は千人に届かない程だったので大勝といえよう。
だが美濃の城下町が灰塵に帰したのは例えようのないほどに悲しいことだった。
家を失った町人達は一体どうなるのか?復興の目処はまだたっていない……
元通りに戻すにも時間が沢山の時間が必要なのである。
稲葉山城内へと足を踏み入れた信秀はたいそう機嫌が悪かった。
「何故こうなってしまったのか……」
万全を期して挑んだはずなのにどうして負けたのか。
また、何故ここまでの惨敗を喫したのか分からない……
こちらにも有利な条件で和睦ができれば良いがこちらが負けているから多くは望めぬ。
どんな結果でも甘んじ受けて早急に尾張に戻り今川の対策をせねば!
「ようこそおいで下さった。尾張の虎、織田信秀よ」
と表面的にはにこやかだが、道三様の口調には皮肉が込められていた。
「蝮が……それで和睦を結びたいと聞いたが一体何ですかな?」
苦々しい口調で上から目線で話していた。
立場が分かっていないのか?はたまたわざと煽っているのか?
「儂ら美濃とお主の尾張、同盟を結ばぬか?」
信秀は混乱した様子だった。
敗戦した側の将が同盟を組んで欲しいと頼まれることなどそうそうある事ではない。
「なぜですかな?」
もっともな疑問である。
味方である自分自身も分かっていないのである。
やはり信秀の立場からすれば裏があるのではと考えるのは当たり前だ。
「お主の息子の信長といったかの?世間ではうつけ者と呼ばれとるらしいが儂は大器の持ち主と見た」
会ったことがないので何とも言えないがうつけ者ということはここらでは知れ渡っている。
「こちらには夫が亡くなって独り身の濃という娘がおっての……信長と婚約させたいのじゃがどうかな?」
「そんな……」
つい言葉を発してしまった。
夫と死別したばかりの濃姫殿を本人の合意もなく勝手に婚約を結ばせようとするなんて……(自分が殺してしまったのではあるが……)
「何だ?十兵衛」
道三様に、睨まれている。
「申し訳ございません……」
自分にはどうすることもできないのか。
「こちらからすれば願ってもない名案です!」
と信秀は嬉しそうにしていた。
強力な後ろ盾が付いたのだからそれはそうだろう。
話はまとまり濃姫殿が信長に嫁ぐことで合意し、同盟を結ぶこととなった。
だが自分はこの結果に納得できていなかった……




