第三話 「閻魔大王様とご対面」
少々遅くなりました。
どうぞ
夜宵は侍である龍ノ介と一通り話し終えると閻魔王の下へと案内して貰っていた。
「あれでござる。あの宮殿に我が殿が鎮座なされる」
「へぇ、地獄にしては中々豪華だな」
龍ノ介が指差す先にはこの地獄の世界には全く似合わない宮殿が聳え立っていた。黒が象徴の地獄の世界にはどうしても目立ってしまう程の白の宮殿だったからだ。夜宵は興味深そうにその宮殿を見据えていた。
「そう言えば龍ノ介、閻魔大王サマってどんな奴だ?」
「うむ、多少趣味の悪い癖がお有りだが素晴らしいお方でござる。罪を負った亡者達でもそれに見合った罰を与えたりと過度の罰は与えたる事は滅多に無い。それに罪が軽いものならすぐに黄泉送りにさせる程に心が広いお方でござる故、夜宵殿も身構える必要は無いかと」
「ハハ、そりゃ中々面白そうだ」
龍ノ介は自覚はしていないだろうが自慢とも言えるその発言に夜宵はどの様な姿なのか興味を持つ。ただ多少趣味の悪い癖があるのが気になるが。
宮殿の門の前にまでやって来た二人は足を止める。龍ノ介が閻魔王に知らせる為だ。
「殿! 兵士長龍ノ介、殿に合わせたい客人を連れ申した!」
報告を終える龍ノ介、すると宮殿の門がギギィ、と音がしながらゆっくり開門していく。入っても良いという事だろう。
「では、宮殿の中にご案内いたそう」
完全に開いた門に龍ノ介が言いながら入って行く。夜宵もそれに続き中に入って行く。
宮殿の中を見た時の夜宵の第一印象は「何だこれ」だった。
「どういう事だコレ? 外装が白で煌びやかなのに内部が暗くて地味なんだが……」
「う、うむ。実を言うと拙者も最初この場所に来た時夜宵殿と同じ事を思ったのでござる……」
「……これじゃあ何の為に外装を白で煌びやかにしたのかが分からなくなるんだが……」
外装が白なのに内部がそれを台無しにする空間になっているとかセンスの無さにも程が有る。成る程、龍ノ介の言う通り閻魔王が趣味の悪い癖を持っているのも強ち嘘では無い様だ。
そのまま暗く地味な空間の奥を歩いて行くと大広間へと辿り着いた。ここに閻魔王が居るらしい。
「殿、客人を連れて参りました」
龍ノ介がそう言うと辺りの松明に火が灯る。この大広間の隅々とまではいかないがそれでも視界がはっきりする程には充分だった。
夜宵は大広間の奥にある長机に一人用のソファと恐らく仕事場なのだろう、そのソファに女性らしき人物が鎮座しているのを確認した。
「龍ノ介から話は聞いた。私は亡者の罪に判決を下す地獄の王、閻魔。改めて地獄へようこそ、三日月夜宵君」
「おお、あの時のワンピースロリとはまた違う魅力があって良いな」
誰が何処から如何見ても美人である容姿、服越しからでもはっきり分かる大きな双丘、全体のボディーラインは素晴らしくそれが全体的に魅惑を引き立てていた。まさに大人のお姉さんというべきだろう。
「ワハハハ、こりゃあ良いな。俺の知っている閻魔大王サマのイメージとは正反対だ」
「ほう、それだと私が鬼の様な形相をしているイメージが有ったのだな?」
「まあな、こっちの世界じゃあ想像図がそれだったからな。」
ワハハ、と苦笑する夜宵。少なからず女性だと思っていなかったのだから人の想像だけで判断する事はよそうと心に誓うのだった。
「しかし驚いたな。まさかとはいえ地獄の世界を崩壊寸前にしてしまうとは、私の宮殿の結界にもかなりの亀裂が入ったものだ」
「そいつは悪かった。まぁすぐに再構築させたから問題無いと思うけどな」
「ああ、それにも驚いたな。まさか破壊と創造の力が両立し合うとは初耳だ」
閻魔王がそう言うのも無理は無い。基本的に破壊と創造は表裏一体。それを両立させ我が物にする事など不可能だからだ。
例え二つの力を持ったとしても破壊の力は創造の力を破壊するし、創造の力は破壊の力を塗り潰して行く。つまり力関係が無茶苦茶になってしまうのだ。だが夜宵はそれを支配し両立させている。これは神の奇跡でも実現不可だろう。閻魔王は夜宵に新たな可能性が存在していると感じていた。
「さて、そろそろ本題に移らせてもらう前に……ちょっと失礼」
「!!!」
「ん? どうしたんだ……っておい龍ノ介? どうしてそんなに焦ってんだ?」
閻魔王がソファから立ち上がる。それと同時に何故か龍ノ介が震え出す。夜宵は何の事やらさっぱりだった。
すると閻魔王は突然服を脱ぎだそうとしてーーー
「殿おおオオォォォォォォォッッ!!! これ以上はお止め下さいイィィィィィィィィィッッ!!!」
素晴らしい速度で龍ノ介が閻魔王を止める。その努力のお陰で辛うじて下着が姿を現す事は無かった。
「む? また私の行為を止めるのか龍ノ介よ」
「止めるもこうも公共の場で突然服を脱ぐのは閻魔の王としてはしたない行為でござるっ!!!」
「公共の場って言われても現時点では私達三人しか居ないだろう?」
「それとこれとは全く話が別でござるっ!!!」
「だって暑いんだもん」
「いやそこは我慢して下さいよ!?」
「ヤダ」
「即否定!?」
どうやらこの閻魔王は相当な脱ぎ魔の様だ。これは日常茶飯事の様でいきなりツッコミ役のポジションになった龍ノ介はキャラが若干崩壊してしまっている。最早侍台無しである。
「違うな龍ノ介、そこは敢えてお前が脱がすべきだろ勿体無い」
「拙者に助平になれと申すのか!?」
「そうだが?」
「拙者のッ!! 武士道精神がッッ!!!」
まさかの追撃に出る夜宵。これには龍ノ介も突っ込み切れなかった様で頭を抱え床をのたうち回る。それを見た夜宵と閻魔王はお互いを見てサムズアップしていた。
龍ノ介がツッコミ役&弄られキャラに昇格した瞬間であった。
「さて、そこら辺で転がっている龍ノ介は置いといてと……本題に移ろうか」
「ああ」
龍ノ介が痛烈なダメージで床と乱闘している間に二人は話を本題に移す。哀れ龍ノ介。
「君はどうやってこの地獄にやってきたのだ? 普通生者はこの世界にはやって来れないのだが……」
「そうだな、簡単に言うとこっちに来る前に妙なワンピースロリに会ってな」
「ワンピースロリ?」
「ああ、幼女で茶髪のサイドテールをしていたな」
「……まさか」
夜宵の話に閻魔王が考え込む。その顔は彼女を見た事が有ると言っている様だ。
「夜宵君、彼女は思念体だったか?」
「思念体? ……ああ、そういやすっと消えたと思ったら扉の形をした闇を出現させたな。俺はそこを潜って此処にやって来た」
「……成る程、やはりそうか」
閻魔王は夜宵のこの発言でどうやら確証を持った様だ。どう言う事なのかは不明だが少なくとも異世界の住人である閻魔王の方が知っている事が多い。夜宵はそこには突っ込まない様にした。
「何か分かったのか?」
「ああ、君の話からして間違い無いだろう。推測も必要無い」
「なら改めて質問するか。そのワンピースロリの正体は何だ?」
「魔神だ」
「何っ?」
魔神、という言葉を聞いた夜宵は反応せざるを得なかった。同時にこれは面白いと興味を抱いた。
「何だよそのビックリ仰天ニュースは!? ハハッとんでもねぇもん聞いたぞオイ♪」
「恐らくその思念体は無力化された魔神が太古の時代から現代という永い年月を経て無意識に形成されたものだろう。それが本人の意思とは関係無く君の前に現れたに違いない」
「へぇ、本人の意思とは関係無い、と言う事は本人は知らない事になるな」
「そういう事になるな」
思念体である彼女が夜宵の目の前に現れた経緯は知る由もないがな、と閻魔王は付け加える。夜宵はその魔神と対面してみたいと思い閻魔王に提案する。
「なぁ閻魔大王サマ、今すぐにとは言わねぇがその魔神サマとやらに会わせる事は出来ねぇのか?」
「ふむ、その事なのだが丁度神界で話し合われていてな」
「どういう事だ?」
「その魔神だが彼女は魔族では無く元は人間だったのだ」
「人間、だと?」
次から次へと驚きの事実が露わになる。少なからず夜宵は驚きを隠せなかった。
「ああ、どの様な原因で魔界に堕ちたのかは不明だ。だがそこで彼女は魔神としての力を付けていったのだろう」
「ワハハハ、正に努力で頂点に登り詰めたというべきだな」
「違いない」
努力は天才を凌駕する、とはこの事だ。きっと死に物狂いでやって来たのだろう。少なくとも夜宵には分からなくも無かった。
「それでその魔神サマがどうして今頃神サマの間で話し合われてんだ?」
「そうだな、現在彼女は『無間地獄』に幽閉されている」
「『無間地獄』?」
「元々この地獄は『無間地獄』を管理する為だけの世界なのだがそれは別としてだ。彼女は元は人間、まぁ要するに人間だった彼女を太古の時代から幽閉したのは些か過度な罰だったのでは、という話が今更上がって来たのさ」
「ふーん、神サマも随分甘いもんだな」
「そうとも限らない。太古の時代にその魔神が仕掛けた戦争が有ってね。最終的に彼女の力を封印して無力化する神具を付けられて終わったが、その時点で不老不死なだけの非力な少女に成り下がっていたのにも関わらず」
「そいつを恐れた神々はそいつが元は人間だと言う事を知らずに幽閉してしまったと」
「そう言う事だ。実際に彼女も気が滅入る程参ってるのさ。人間としての理性を保っていたから性格が幼児退行してしまったぐらいだからね」
「うわ、俺なら絶対発狂するわ」
遥か太古の時代から幽閉されたら誰だって気が狂うだろう。それは魔神である少女だって耐えられない筈だ。だが精神が死んでいないだけ良く耐えたものだ。
「それに、神々がそういう話し合いになる時期は此方にも書類が山ほど来るのが嫌なのだ」
「ワハハハ、とんだとばっちりだな」
「本当だ。釈放するのかしないのかさっさと決めてもらいたいものだ」
どうやら神々の会議とやらは周りにも火の粉が飛ぶらしい。毎日山ほどの書類が来るものだから勘弁して欲しいと閻魔王はご立腹の様だ。
そこで夜宵は悪戯心が湧き上がったのかニヤリと笑うと閻魔王にある提案をした。
「そうだな閻魔大王サマ。その山積み書類の問題を解決する方法が一つだけあるぜ」
「何っ? 本当か!」
「ああ有るぜ。俺が居て初めて出来る方法だ」
「どれ、早速教えてくれ」
「ククク……それはだな……」
閻魔王に耳打ちする夜宵。提案を聞いた閻魔王は悪戯心が湧き上がった夜宵と同じ様にニヤリと笑みを浮かべた。
「成る程、後始末の方も山積みの書類より簡単だな。それで行こう」
「よし、善は急げって言うし早速始めようぜ」
お互いにやる事が決まり、早速準備に取り掛かる二人であった。
因みに龍ノ介はまだ床をのたうち回っていた。頑張れ龍ノ介。
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