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異世界に超越者が招かれました  作者: 井戸の岩
第一章『超越者と魔神』
2/10

一話 「行き着いた場所がなんと地獄でした」

第一話です。どうぞ。

 冥界ーーーその世界は神界に住む神々ですら恐れ慄く化物が集結する世界。


 神々が恐れ慄くのは理由がある。かつて遥か太古の時代、冥界が神界に対し戦争を仕掛けた事があった。神々は最初、我々に戦争を仕掛ける事自体、神を冒涜する行為だと憤慨し、徹底的に叩き潰し完全に服従させるつもりで売られた喧嘩を買った。


 のだが、


 冥界軍は予想以上に神界軍に対し善戦していたのだ。寧ろ神界軍を圧倒していた。この不利な戦況に当初は憤慨していた神々も焦りを隠す事が出来なかった。何故冥界軍が彼処まで強大な力を付けている原因は何なのか、神仙である千里眼に探らせた。すると千里眼は驚愕の表情で周りに告げた。


 ーーー冥界軍を率いている総大将が冥王ではなく魔神だと。


 この意外な報告に神々は更に驚かされた。千里眼が見た限りではあるが幼い少女の前に身長二m以上もある屈強な体格をした冥王が跪き、少女から下される命令を素直に受け取り、即座に行動を開始する姿を捉えたと言うのだ。ここからは千里眼の個人的な話になるが、更に命令を下した少女は千里眼の視線に顔を向け、殺気を振りまいたのだ。少女の殺気に当てられた千里眼は即座に能力を解除しその場を飛び退いた。それと同時に千里眼は本能で感じ取ったのだろう。彼女の正体は魔神である事に。

 何故魔界を治める魔王を支配する魔神がこの場に居るのかが分からない。まず第一に魔神は単体で神々を屠る事が出来る圧倒的な力を持ち群れる事を嫌う。

 この魔神が冥界軍を率いて神界に侵略する事など全くもって例外中の例外中だった。

 こうなると神々はいよいよ覚悟を決めた。全戦力を持って総力戦に臨む事にしたのだ。勿論神々はただ闇雲に総力戦を臨む訳では無い。この乱戦中の中で残った全ての神々で魔神に決闘を挑み、最低限無力化する事が本命だ。そうすれば冥界軍は自然と戦意を失う筈。その希望を信じて総力戦に臨んだ。


 結果から言えば神々は全滅の危機に見舞われながらも一瞬の隙を突いて魔神を無力化し生け捕る事に成功し、冥界軍は神々の狙い通り戦意を自然と失っていった。



 こうして歴史に名を残す『神魔大戦』の幕が降りた。



 神々は無力化した魔神を神界の管轄下である『地獄』より更に深淵にある牢獄に幽閉した。

 この戦争による代償は余りにも大きく被害も甚大であった。魔神を捉え、冥界軍の戦意を失わせる事に成功したものの、神界軍の戦力はもう限界でありこれ以上の戦闘はお互いに無益だと神界側から交渉を持ちかけ、終戦協定を結ぶ事によってようやく神界に平和が訪れた。これ以降、神々は冥界を恐れる様になり我々神々の力が絶対では無いと脳裏に焼き付け、それまで取っていた傲慢な態度を改め、神聖な行為を行おうと改心したのだった。

 そして魔神と呼ばれる少女が幽閉された地獄の深淵に存在する牢獄。




 ーーーその名を『無間地獄』と呼ばれる。




 =====




「……何だ此処?」


 少年、三日月夜宵(みかづきやよい)は呆然としていた。

 異世界というファンタジー物なら最初の展開は目を覚ましたら森の中とか勇者として召喚されるか若しくは勇者召喚の際に巻き込まれるのが相場だと決まっている。

 だがこれは何だろうか。本当に異世界なのか、と夜宵は顔を顰めるがすぐに表情を元に戻す。


「辺りは真っ暗闇、日の光を寄せ付けない場所、所々に松明が設置され、そして牢獄が建てられている……か」


 まずは自分がどの様な立場に居るのかを知る為、状況を冷静に分析していく夜宵。まさかあの少女に騙されたのではないのかと一瞬頭を過るが即座に忘れる。あの少女は嘘を吐く様な目をしていないと夜宵は理解していた。そうなると彼女は何らかの事情で自分をこの世界に招き入れたに違いないと推測していた。だが夜宵の脳内はそれよりも此処が本当に異世界なのかという疑問の方に最優先されていた。

 しかしその疑問もすぐに消える。此方側に来る前の世界では絶対に感じ取る事の出来ない重圧を感じ取ったのだ。それも一つだけでは無く二つ、三つと次々に増えて行く。


「……へぇ、大歓迎という事か」



 ーーー否、大きな重圧を先頭に重圧達が自身を包囲していた。



 姿が見えない、という事は不可視の能力の類だろうと判断する。だがこれで理解した。此処は異世界なのだと。


「……クッ、ククッ、」


 思わず笑い声が漏れる。何せ夜宵の目の前で非常識といえる異能を使用されているのだから無理も無い。

 夜宵は自身に宿る荒唐無稽の力を思う存分振るえる場所が今迄無く、増して周りは非常識の力を持たない非力な人間ばかり。それ故に振るう理由も無くただ虚しい日々を過ごして来た。だが今、こうして異世界に招かれ力を振るえる場所と理由を得る事ができ、それだけでは無く今迄非常識な力を持たなかった非力な人間達とは違い、人間では無い『ナニカ』が目の前で非常識な力を使用している。彼からしたら一石二鳥、願ったり叶ったりだろう。

 少年、三日月夜宵は再び歓喜に打ち震え大いに笑う。



「クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」



 夜宵の笑い声が闇に響く。そして第二の疑問も晴れた。この不可視の力は主に亡霊などの亡者が使用する異能だ。だとしたら此処は亡者が集まる場所、『地獄』ではないかと。ならば話は早い。

 大雑把な説明になるが世界は基本的に『天国』・『現世』・『地獄』の三つに分けられる。つまりそれぞれの世界に壁が存在するという事だ。さて、此処まで言えば夜宵が何をしようとしているのか分かる者はいるかもしれない。

 夜宵の笑い声が静まる。そして笑い声の主は拳を握り締め、全力を出すにはまだ早いと判断した彼はある程度の力を拳を一点に集中させる。


 そして彼は左足を一歩大きく踏み出す。


 次に力を一点に集中させた右手の拳を大きく振りかぶる。


 更に腰を回転させる事によって遠心力を作り、拳の一撃の威力を増大させる。


 最後の作業はごく単純。力を込めに込めた拳を振るうだけ。



「オラアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」



 拳が空間に迫る。だが夜宵や彼を取り囲んでいる正体不明の亡者達は知らなかった。その一撃がどれほど絶大な威力を誇るのかも知らずに。

 そして拳が空間に直撃した。それと同時に空間全体に大きな亀裂を入れ、




 ーーー世界を破壊した(・・・・・・・)

誤字脱字、違和感を感じたらご指摘お願いします。

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