別れと新たなる出会い
それからの人生はあっという間だった。
十五で隣国へ旅立ち、目的のダンジョンで稼いだ。イコは、たくさん薬草や鉱物を採れたとしても、一番下のランクの子らからは外れないように数を調節して提出していた。
薬草採取は、森へは行かず、ダンジョンでのみ。
余った時間は、宿の中で魔道具製作の実験だ。自動掃除機のために、小さい木箱を動かしてみても、角は見事に掃除してくれなくて、二人して大笑いをしたり。
ダンジョンはここにだけあるわけじゃない。イコの薬草ストックが多くなってくると、別のダンジョンに向かうために移動したり。
出した食材で、料理をしまくった。
広めるわけには行かないので、コッソリと。
ただし一回だけ『肉じゃが』がバレかけた。街の婦人会で大盛り上がり。できたのが『クリームシチュー』。『カレーじゃないんかい!』と突っ込みたかったが、引きつりつつ笑った。
『カレー』じゃなかったのは、多分に手に入るスパイスのためだと思われる。
それがなんで、小麦粉と牛乳とバターに変わったかまでは分からないが。
二十代前半ごろ、リシュカに想い人ができて、誓いを継続したままその街では冒険者と薬師に分かれた。二人の関係はそのままに。
独学でポーションを作ったり、魔道具を作ったり。商売に忙しくなっていた。
そんな中、ふと【鑑定】の中の【人物鑑定】で、リシュカの出自が『某国第三王女の非摘出児』だったと判明したり。
見なかった、知らなかった。と、誓いの魔法を上書きしたり。
何だか二人して泣いて笑った。
そんな中、リシュカは双子の男女を産んだ。
子ができたことを泣くほど喜んだリシュカに、イコは「子育てのセンパイとして、何でも聞いて」と請け負ったり。
リシュカの子どもを抱かせてもらったとき、イコは前の世界に置いてきた『自分の子』のことを思い浮かべて懐かしんだ。
結果として、その後もリシュカはあと二人ほど産んだ。
定住するには前の世界に近い、民主主義に似た国に来た。王政の国は肌に合わなかった。
一番初めに来た国のことも、調べられる限りは調べたが、『聖女召喚』の文様はあらゆる国に出回っている、『古代語』の文様らしい。
もう帰ることは考えていないが、あとに続くヒトをなくしたいと考えていた。
こちらの世界の『後始末のため』だけに喚ばれる地球人。意識改革だけじゃダメなんだろうなあと思う。
散らばっているとは言え、『聖女召喚』のは二、三個ほど。『勇者召喚』『賢者召喚』を含めても、十個に満たない。ほかに何かあるだろうか。
こちらの国は、間々を樹海で阻まれていて、大きさ程度はどの国も日本の県ほどの大きさ。
アメリカの大きさを見せてあげたい。
【飛翔】で飛んで、全ての【魔法陣破壊】は出来ないだろうか。
三十代での人生の目的になった。
【消去】で消せる魔法陣だということは、似たような古代語の魔法陣で試した。【感知】ができれば良いのだ。
リシュカの旦那や冒険者の知り合いにも協力してもらって、どこに、どのような『召喚魔法陣』があるのかも突き止めた。
二人で、もしかしたら与えられた使命ってこのことなのでは?『無属性』が与えられたのは、コレが目的では? と語り合ったが、有耶無耶すぎる、イコたちが思い当たらなかった場合のことも考えて、なかったことにした。
綿密に練った計画は、結果的には成功したが、『召喚できない』と分かるのは、各国の偉い人たちが『召喚する』と決めたあとでないと分からなかった。
わたしたちは、手の届く範囲でしか人は助けられない。
織り込み済みだった。
リシュカの旦那が走り込んできて叫ぶ。『神託が途絶えたと騒ぐ国もあった』これは大成功ではないか?
四十代になったころ、イコは体を壊した。
前の世界と合わせて、百歳近くになるのだ。身体は四十代でも、人間には限界がある。
「いやあね。なんて顔してんのよ」
イコがベッドで笑うと、リシュカの耐えていた涙が崩壊した。
「人なんて、みんな順当よ。先に生きてた人間が、天寿を全うしていくの。わたしなんて、二倍よ、二倍」
呼吸が荒れたまま、イコが笑う。
「やっと。やっとよ。旦那のもとに行けるわ」
「また、……また会えるわよね」
リシュカが枕元に跪き、イコの両手を包む。
「会えるわ。わたしたち、誓いの親友じゃない。……わたしは、一ノ瀬ハルカ。前の世界での名前よ」
「村瀬沙知子よ。探して。あたしも見つけるわ」
◇ ◇ ◇
日本の、とある都市、とある公園。
ママ友たちが集う集団の中で、一人の少女がこっそりと言う。
「……イコ?」
近くにいた少女が反応する。
「リシュカ?」
二人はニッコリと笑って手を取って駆ける。
友との再会を祝して。




